カラスの判断、人やサルの約2倍の速さ 2羽が動く点の向きを平均235ミリ秒で見分けた
ドイツのテュービンゲン大学の研究チームが、ハシボソガラス2羽は画面の点が動く向きを平均約235ミリ秒で見分けたとScience誌に発表した。人やサルで観察されてきた速さの約2倍だが、同じ実験で並べて測ったわけではない。
サイエンス- ●ハシボソガラス2羽が、点の動く向きを平均約235ミリ秒で見分けた
- ●人やサルでこれまで観察された速さの約2倍で、正確さも落ちなかった
- ●神経細胞の信号は、点が動き出して約70ミリ秒で向きごとに分かれた
ハシボソガラスは、日本の市街地にもいる身近なカラスだ。くちばしと鳴き声の見分け方を知っていれば、研究と同じ種を街で探せる。
なぜここまで速いのかは、まだ分かっていない。ニーダー教授は、速さを生む仕組みを突き止めるには、さらに研究が要ると話す。
鳥の脳には、人やサルのような層状の大脳皮質がない。それでもハシボソガラスは、画面の点が右と左のどちらへ動いているかを、平均約235ミリ秒(0.235秒)で見分けて答えた。人やサルでこれまで観察されてきた速さの、約2倍にあたる。ドイツのテュービンゲン大学の研究チームが、2026年10月22日に科学誌「Science」で発表した。
白い点は右へ動いたか、左へ動いたか
研究チームが調べたのは、ハシボソガラス(学名 Corvus corone)2羽だ。タッチスクリーンの黒い画面に白い点が散らばり、そのうちの一部がそろって右か左へ動く。カラスはその向きを見分け、点の群れの左右にある丸い的をくちばしでつついて答える。正解すると報酬がもらえる。視覚による意思決定の研究で、定番の課題だ。
成績は良かった。研究チームのフィリップ・シュミットバウアー氏によると、動きが見分けにくいときでも当てずっぽうより正答が多く、動きがはっきりしているとほぼ100%正解した。速く答えても、正確さは落ちなかった。
答えは、くちばしが動く前に決まり始めていた
研究チームは、答えるまでの脳の中の動きも調べた。記録したのは、NCL(nidopallium caudolaterale)と呼ばれる部位の神経細胞の活動だ。NCLは鳥の脳でさまざまな情報をまとめる重要な部位で、働きは人の前頭前野に近い。前頭前野は額の裏側にあり、計画や判断を担う部位だ。
| 点が動き出してから | 脳とカラスに起きていたこと |
|---|---|
| 約70ミリ秒 | 神経細胞の信号が、点の動く向きごとに分かれ始める |
| その後 | 判断がかたまるにつれて、信号がしだいに強まる |
| 平均約235ミリ秒 | 信号が一定の水準に達し、カラスが的をつつく |
論文の要旨によると、これから選ぶ向きが信号に表れたのは、答える約170ミリ秒前だった。信号の強まり方には、点の動きの分かりやすさと、選んだ向きの両方が表れていた。
脳のつくりは違っても、決め方は似ている
アンドレアス・ニーダー教授は、今回見えた神経細胞の活動の移り変わりが、人やサルの意思決定を説明してきたモデルと合うと述べた。大学によると、つくりの違う鳥の脳でも、判断の基本的な仕組みは人やサルと似ているようだ。そのうえで、速さは霊長類の約2倍だという。
速さの理由として、教授は鳥の暮らしを挙げる。鳥は飛びながら目で見て素早く正確に向きを変え、えさを探すときはくちばしを物へ向ける。こうした素早い目と体の連携が進化の中で求められ、速さにつながった可能性があるという。どの仕組みがこの速さを生むのかは、さらに調べる必要があるとしている。
「2倍」は、別々の研究どうしの比較
「人やサルの約2倍」という比較は、読み方に注意が要る。今回の研究で測ったのはカラスだけだ。人やサルの値は、要旨によると、これまでの研究で観察されてきたもので、同じ装置と条件で並べて測ったわけではない。カラスも2羽だけで、結果は実験室の画面の前での判断にとどまる。
くちばしと声で見分ける、街の2種類のカラス
研究はテュービンゲン大学の2人によるもので、日本の研究機関は加わっていない。論文は英語で、大学はドイツ語と英語で発表した。
ただ、ハシボソガラスは日本でも身近な鳥だ。札幌市の解説によると、市街地に来る身近なカラスはハシブトガラスとハシボソガラスの2種類で、生ごみをあさるのは主にハシブトガラスのほうだという。くちばしが太く額が出っ張り、「カァカァ」と澄んだ声で鳴くのがハシブトガラス。「ガァガァ」と濁った声で鳴くのがハシボソガラスだ。
- University of Tübingen「Crows make decisions twice as fast as humans and monkeys」(2026年10月22日)
- Universität Tübingen「Krähen entscheiden doppelt so schnell wie Menschen und Affen」(2026年10月22日)
- Schmidbauer P., Nieder A.「Ultrarapid decision-making in an avian brain」(Science 394巻6822号・2026年10月22日・要旨)
- 札幌市「カラスをよく知ろう」
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月26日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。