洪水の危険、動画と地図で脳の反応が違う 京都大学など、動画は「実感」、ハザードマップは「理解」に
京都大学などの研究グループは、洪水の危険を、街が水につかる様子のCG動画で見たときと、ハザードマップで見たときで、脳の反応が違うことを確かめた。動画では怖さや危険を感じる部分が、地図では記号や位置を読み解く部分が強く働いた。2つを組み合わせると、危険をよりよく伝えられる可能性がある。
サイエンス- ●洪水の危険を動画と地図で見たときの脳の反応を、MRIでくらべた
- ●動画は怖さを感じる部分、地図は情報を読み解く部分が強く働いた
- ●研究グループは、2つを組み合わせて伝えることが大切だとしている
自分の住む地域のハザードマップを見ても、実感がわきにくい人は多い。浸水の様子を映した動画とあわせて見ると、危険を自分のこととして考えやすくなるかもしれない。
今回測ったのは、脳の反応と怖さの感じ方だけで、実際に避難するかどうかは調べていない。研究グループは、動画と地図の組み合わせ方を、これから確かめるとしている。
京都大学防災研究所などの研究グループは2026年10月14日、洪水の危険を伝えるとき、街が水につかる様子のCG動画で見せた場合と、ハザードマップで見せた場合で、脳の反応が違うことを確かめたと発表した。動画では怖さを感じる部分が、地図では情報を読み解く部分が、より強く働いたという。
どんな実験をしたのか
研究グループは、大阪市に住む大人45人に、2種類の情報を見てもらった。
- CG動画: 自分が街の中に立っているような目線で、水につかっていく街の様子を描いた動画。実際の洪水の映像を参考に作り、気象や水などの専門家7人が、科学的に正しいかを確かめた
- 地図など: 自治体や気象庁が出している、浸水が予想される場所の地図(ハザードマップ)や、大雨のときの危険度や警報の情報
参加者は、MRIという装置の中でそれぞれを16秒間見て、どのくらい怖いと感じたかを4段階で答えた。研究グループは、同じ場所のふだんの様子の動画や、洪水の情報を消した地図も見せて、洪水の情報を見たときに脳の反応がどれだけ変わるかをくらべた。
何が分かったのか
| CG動画 | 地図など | |
|---|---|---|
| 強く働いた脳の部分 | 目で見た情報や体の感覚に関わる部分、危険や感情に関わる「扁桃体」 | 記号の意味や位置の関係を読み解く、前頭葉や頭頂葉の部分 |
| 怖さ(4段階の平均) | 3.12 | 2.26 |
どちらも、ふだんの様子より怖いと感じたが、怖さが増えた幅は動画のほうが大きかった。
かんたんに言うと
動画は、危険を「自分の身に起こること」として感じさせる。地図は、危険がどこに、どのくらいあるのかを「頭で理解させる」。研究グループは、どちらかが優れているという意味ではなく、2つは役割が違い、補い合えるとしている。
fMRIは、脳が働いたときの血の流れの変化をMRIでとらえ、脳のどの部分が働いているかを調べる方法だ。
気をつけたい点
研究グループによると、今回測ったのは、脳の反応と怖さの感じ方だけだ。実際に避難しようと思うか、備えをするかは調べていない。動画と地図では、動きや見せ方も違い、水の深さなどの条件もそろえていない。
研究グループは、怖さを強めること自体を目的にするのではなく、危険を実感できる情報と、危険の場所や程度、どう動けばよいかを伝える情報を組み合わせることが大切だとしている。
日本ではどうなるのか
ハザードマップは、日本の多くの自治体が作って公開している。最近は、CG動画やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)で、浸水の様子を自分の目線で体験できる取り組みも広がっている。今回の研究は、こうした取り組みと、これまでのハザードマップの使い分けを考える手がかりになる。
研究で使った動画と地図のデータは、研究の公開の場「Open Science Framework」で公開されている。成果は、脳科学の国際的な学術誌「NeuroImage」に載った(オンラインで2026年9月23日)。
まとめ
洪水の危険を伝えるとき、動画は「実感」を、ハザードマップは「理解」を生む。どちらか一方ではなく、組み合わせて伝えることが、備えや避難につながる情報づくりの鍵になりそうだ。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月15日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。