OpenAIなど、1,946のAIエージェントでマウスの脳の実験データを32分で解析
OpenAIと米PerturbAI、米スクリプス研究所のチームは、1,946のAIエージェントを同時に動かし、マウスの脳の大規模な遺伝子実験のデータを32分で解析した。人なら数か月から1年という比べは、チームの試算だ。
AI- ●OpenAIなどが1,946のAIエージェントで、マウスの脳の実験データを解析
- ●かかった時間は32分。人なら数か月〜1年というのはチームの試算
- ●専門家は75%の判定で、遺伝子ごとに分担した方式の報告を選んだ
病気にかかわる遺伝子の研究で、次に調べる候補をAIが絞り込んだ例だ。研究者は、公開されたコードとデータで解析をやり直せる。
PerturbAIとOpenAIは、この仕組みを新しい薬の狙い目(標的)探しに使うと発表した。AIが示した手がかりは、実験で確かめる必要がある。
米OpenAIと、米国のバイオ企業PerturbAI、米国の研究機関スクリプス研究所(Scripps Research)のチームは、1,946のAIエージェント(自分で手順を考えて作業を進めるAI)を同時に動かし、マウスの脳の大規模な実験データを32分で解析した。論文は2026年10月16日に論文の公開サイト「bioRxiv」に載り、PerturbAIが10月21日(米国時間)に発表した。OpenAIも公式ブログで紹介した。
何をしたのか
元になったのは、PerturbAIが2026年3月に公開したマウスの脳のデータだ。病気にかかわる約2,000の遺伝子を1つずつ働かなくして、脳の細胞で遺伝子の働き方がどう変わるかを調べた。データには7,720,300個の細胞核の記録がある。
チームは、遺伝子1つにつき1つのエージェントを割り当てた。AIのモデルは、OpenAIの生命科学向けの「GPT-Rosalind-5.5」だ。各エージェントは、そこから求めた細胞の種類ごとの変化の表を調べ、論文を探し、根拠や次に試す実験を報告にまとめた。最後に報告をつなぎ、遺伝子・細胞の変化・論文・考えられる仕組みを結ぶ「推論の地図」を作った。
かんたんに言うと
約2,000冊の実験ノートを、約2,000人の助手が1冊ずつ同時に読み、結果を持ち寄るようなものだ。論文では、1つのエージェントに893の遺伝子をまとめて任せると、引用した論文は11本だった。分担した方式は、その711倍の論文を残した。
「32分」と「数か月から1年」の中身
補足の資料によると、1つの遺伝子を受け持つ作業の時間を別に24回測ると、平均32.8分だった。全部を同時に動かすので、約32分を全体の時間とした。
人が同じ解析と論文調べを順に進めると、数か月から1年かかるという。ただし、これはチームの試算だ。遺伝子1つに15分、論文1本に10分と仮定した計算で、人の作業を測ったものではないと論文は断っている。
結果をどう確かめたのか
チームは、元の研究の論文をAIに見せずに解析させた。モデルの知識は2025年12月までで、元の論文の公開(2026年3月)より前だ。元の論文がデータだけから導いた55の結論のうち、48はAIも同じか、より詳しく見つけた。
博士号などを持つ30人の研究者も、元の研究やAIが付けた順位を伏せて報告を評価した。生成AIの利用は禁じた。分担した方式と1つのエージェントの方式の報告を比べた20組では、60の判定のうち45(75%)が分担した方を選んだ。1つのエージェントの方は10(16.7%)、引き分けは5(8.3%)だった。
見つかった手がかりと、限界
たとえば小脳の神経細胞の一種では、遺伝子Tsc2を働かなくすると83の遺伝子の働きが変わったが、Tsc1ではゼロだった。2つは一緒に働くことで知られる遺伝子だ。AIは、関連する論文が見つからなかった点として印を付けた。
論文は、AIが示した仕組みは仮説で、実験で確かめる必要があるとする。論文は学術誌に載る前のプレプリントで、著者にはOpenAIとPerturbAIの社員が含まれる。
日本ではどうなるのか
日本での提供や、日本の研究機関とのかかわりは発表されていない。解析のコードはGitHubで、元のデータはHugging Faceで公開されている。
まとめ
1,946のAIエージェントが大規模なデータを分担して読み解き、次に調べる候補に順位を付けた。人との時間の比べは試算で、示された手がかりは実験で確かめる段階にある。PerturbAIとOpenAIは、この仕組みを新しい薬の標的探しに使うとしている。
- bioRxiv「Distributed AI agents enable comprehensive discovery of biological insights at scale」(Sunほか・2026年10月16日)
- bioRxiv 同論文の補足資料(Supplementary Materials)
- PerturbAI「PerturbAI and OpenAI Unveil First-of-Its-Kind AI Reasoning Agents to Scale Biomedical Discovery」(2026年10月21日)
- GitHub「jinlabneurogenomics/distributed_agent」(論文の解析のコード)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月24日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。