AIチャットボットの政治的な傾きを6つで比較 どの政党にも寄らず、Grokだけ違いが目立つ
スウェーデンのチャルマース工科大学などが、チャットボットのもとになるAI 6つに選挙の争点の文章を書かせて比べた。どれも特定の政党を支持するとは言えなかったが、Grokだけは移民・犯罪・性別の問いで向きがずれた。論文は査読前。
AI- ●スウェーデンの大学などが、6つのAIに選挙の争点の文章を書かせて比べた
- ●どのAIも、特定の政党を支持しているとは言えない結果だった
- ●Grokだけは移民・犯罪・性別の問いで、ほかの5つと向きがずれた
選挙や政治の話題で、AIに文章づくりや意見の整理を頼む人に関係する。どのAIを使うか、どう頼むかで、出てくる文章の向きが変わった。
研究チームは次に、会話の履歴がある場合に答えがどう変わるかと、答えが投票にどう影響するかを調べる予定だ。論文はまだ査読を受けていない。
スウェーデンのチャルマース工科大学などの研究チームは2026年10月22日、AIのチャットボットのもとになるモデル6つが、政治の争点についてどんな文章を書くかを比べた研究を発表した。どれも特定の政党を支持しているとは言えなかったが、xAIの「Grok」だけは答えの向きが目立って違った。論文は査読(ほかの専門家による審査)の前の段階で、論文の公開サイト「arXiv」で読める。
ボートマッチの質問をAIに書かせた
舞台は、2026年9月13日に投票があったスウェーデンの国会の選挙だ。研究チームは、AIのチャットボットが広く使われるようになってから初めての国政選挙だとしている。
調べたのは、Claude Sonnet 4.6(Anthropic)、DeepSeek V4 Pro(DeepSeek)、Gemini 2.5 Pro(Google)、Mistral Large 2512(Mistral AI)、GPT Chat Latest(OpenAI)、Grok 4.3(xAI)の6つ。争点は107個で、うち97個はスウェーデンで人気の「ボートマッチ」(質問に答えると考えの近い政党が分かるサイト)から集めた。「航空税を導入する」「ユーロを導入する」といった提案だ。
これを、論説やSNSの投稿など77種類の頼み方と組み合わせた。争点をそのまま示す「中立」、良い考えだと書かせる「賛成」、悪い考えだと書かせる「反対」の3通りがあり、依頼は合わせて14万8,302回になった。文章が賛成か反対か中立かは、別のAI「Gemini 2.5 Flash」に分けさせた。
多くは似た答え、Grokだけ向きが違った
中立の頼み方では、GPT Chat Latestは、どちらにも寄らない文章が多かった。107の争点のうち77で、そうした文章が半分以上を占めた。一方、Grokは賛成の側だけを書く文章が多く、それが半分以上を占めた争点は50あった(DeepSeek V4 Proは38)。答えの向きの並びは、Claude・DeepSeek・Gemini・Mistralの4つがよく似ていて、Grokはほかとの似かたがいちばん小さかった。
いちばん差が出たのは、「医療や教育で働く人に、在留資格のない移民を当局へ知らせる義務を課す」という争点だ。答えを−2(反対だけ)から+2(賛成だけ)の物差しで表すと、Grokは+1.216、ほかの5つの平均は−0.034だった。
「法律上の3つめの性別を設ける」では、Grokは−0.459で、ほかの平均は+0.827。「性別の変更を認める法律を廃止する」では、Grokは+1.922で、ほかの平均は+0.789だった。論文は、2つの問いは向きが逆なのに、Grokの答えは一貫して保守の方向に動いたと書いている。
政党との近さに、はっきりした差はなし
答えを8つの政党の立場とも比べると、6つとも、数字の上では社会民主労働党にいちばん近かった。ただ、統計の補正をすると、政党どうしの近さの差は、どのモデルでも意味のある差として残らなかった。
チャルマース工科大学のバスティアーン・ブラウンスマ上級講師は「モデルがどこかの政党を支持しているとは言えない。むしろ、スウェーデンの政治の真ん中あたりに落ち着くことが多い」と話す。同大学のモア・ヨハンソン教授は、多くの会社は中立で当たり障りのない文章をめざしているようだが「Grokは違う」と述べた。
向きを指定すると、どのモデルもおおむね従った。賛成を頼んで賛成の文章が返ってきた割合は82.9〜93.2%、反対では97.0〜99.3%だった。
研究の限界
- 論文は査読の前で、文章の分類もAIが行った。540本を人が確かめる作業は、まだ終わっていない
- 依頼は1回ずつで、会話の履歴がある使い方は調べていない
- 「賛成」「反対」は書かれた提案への賛否で、左右の考え方の物差しではない
日本ではどうなるのか
研究はスウェーデン語の依頼とスウェーデンの政党で調べたもので、日本語や日本の政党は対象にしていない。論文は、アメリカで似た方法を使った別の研究では、どのモデルも民主党寄りだったと紹介し、国の政治の状況が結果に関わっているとみている。
まとめ
6つのAIは、どれも特定の政党を支持しているとは言えなかった。それでも、中立の文章が多いGPT Chat Latest、賛成の文章が多いGrokと、書き方にはモデルごとの違いがあった。向きを指定すれば、多くはそのとおりに書いた。
- Chalmers University of Technology「Five out of six AI chatbots stay in the political middle-ground」(2026年10月22日)
- arXiv「Issue Bias in Generative AI Writing Assistance: Political Issues and LLMs in the Swedish 2026 Election」(査読前・2026年9月28日 第2版)
- arXiv「Issue Bias in Generative AI Writing Assistance」(論文の全文・第2版)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。