外国語の発音が上達しやすい人は、脳の使い方が違う? 「耳の良い」学習者は外国語の音を、まず「音」として聞く 早稲田大など
早稲田大学などの国際共同研究チームは、外国語の発音を学ぶのが得意な「耳の良い」学習者が、外国語の音を聞くときに、脳をどう使っているかを調べた。耳の良い人は、外国語の音をすぐには「言葉」として処理せず、まず「音」そのものとして捉えている可能性が分かった。研究チームは、耳そのものを鍛える新しい外国語の学び方の開発を目指す。
サイエンス- ●早稲田大学などの国際共同研究チームが、日本人の英語学習者67人の脳の動きを調べ、細かな音の違いを聞き分ける「耳の良さ」で、外国語の音の処理のしかたが違うことを示した
- ●耳の良い人は、外国語の音を、まず人工的な「音」に近い形で分析していた。耳の良くない人ほど、口を動かすことに関わる脳の部分を強く使っていた
- ●研究チームは、音の細かな違いを捉える力を直接鍛える「言語・聴覚トレーニング」を開発し、効果を確かめる計画だ
英語の発音や聞き取りがなかなか上達しないと感じている人には、練習の量だけでなく、聞き方にも鍵がありそうだという研究だ。耳の良い人は、新しい音を、すでに知っている日本語の音に当てはめずに聞いている可能性がある。今すぐ使える練習法が示されたわけではないが、知らない音を「日本語のどの音か」と考えずに、そのまま聞いてみる意識は試せそうだ(TECHNOVAの見方)。
研究チームは、音の高さなどの細かな違いを捉える力を直接鍛えるトレーニングを作り、外国語の力や基礎的な聞く力、脳の働きがどう変わるかを調べる計画だ。たくさん練習することだけを前提にした外国語教育から、一人ひとりの耳と脳の特性に合わせた教育を目指すという。
外国語の発音がすぐに上達する人と、なかなか上達しない人は、脳の使い方が違うのかもしれない。早稲田大学による国際共同研究チームが、2026年10月16日に発表した。研究には、東北大学や英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者が加わった。成果は米国の心理学の学術誌「Journal of Experimental Psychology: General」に載った。
上達の速さの差は、どこから来るのか
同じような年齢で学び始め、同じように練習しても、外国語の発音の上達の速さには大きな個人差がある。これまでの研究では、留学の経験や外国語を使う頻度など、「学ぶ経験」が注目されてきた。
研究チームは、その背景に、細かな音の違いを聞き分ける「耳の良さ」があるのではないかと考えた。では、耳の良い人の脳は、外国語を聞いているときに何をしているのか。それは、これまで十分には分かっていなかった。
67人の脳の動きを調べた
研究チームは、日本語を母語とする英語学習者(日本人の大学生)を対象に、次の順で調べた。
- 耳の良さを測る: 言葉ではない人工的な音を使い、細かな音の違いをどこまで聞き分けられるかを測った。英語の力ではなく、より基礎的な「聞く力」を見るためだ
- 脳の動きを見る: 67人の日本人の英語学習者で、脳の血の流れの変化から、脳のどの部分が働いているかを調べる装置(fMRI)を使った。日本語にない英語の2つの母音(catの「æ」とcutの「ʌ」)を聞き分ける課題と、同じ音の特徴を持つ人工的な音を聞き分ける課題をしてもらった
耳の良い人は、まず「音」として聞いていた
結果は次のとおりだ。
- 耳の良い人: 外国語の音を聞くとき、人工的な音を聞くときに近い脳の動きをしていた。新しい外国語の音を、すぐには「言葉」として処理せず、まず音そのものとして細かく分析している可能性がある
- 耳の良くない人: 外国語の音を聞くとき、口や舌を動かして発音することに関わる、脳の左側の部分(感覚運動ネットワーク)をより強く使っていた。新しい音を、すでに身につけている日本語の発音に当てはめて聞いている可能性があるという
研究チームは、外国語の学習がうまくいく鍵は、どれだけ多く外国語に触れるかだけでなく、1回1回の機会に、脳が音をどう処理しているかにもあると説明している。
かんたんに言うと
知らない曲を聞いたとき、すぐに「あの曲に似ている」と知っている曲に当てはめてしまう人と、まずメロディーをそのまま覚えようとする人がいる。外国語の音でいえば、耳の良い人は後者に近く、新しい音を、日本語の「ア」や「ウ」に当てはめる前に、そのままの音として受け止めているのかもしれない(TECHNOVAの見方)。
日本ではどうなるのか
今回の研究は、日本人の英語学習者を対象にしている。日本語にない母音の聞き分けは、多くの日本人が苦労するところだ。
研究チームは今後、音の高さなどの細かな違いを捉える力を直接鍛える「言語・聴覚トレーニング」を作る。それによって、外国語の力、基礎的な聞く力、脳の働きがどう変わるかを調べる計画だ。単語を覚える、聞く、発音をくり返すといった、言語そのものを練習するこれまでのやり方に加え、「学べる耳」そのものを育てる教育を目指すとしている。
まとめ
早稲田大学などの国際共同研究チームは、外国語の発音を学ぶのが得意な「耳の良い」人は、外国語の音を、まず音そのものとして分析している可能性を示した。耳の良くない人ほど、日本語の発音の仕組みに頼って聞いているとみられる。研究チームは、耳そのものを鍛える新しい学び方の開発を進める。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。