Appleに他社のアプリストアを認めるよう命令 豪州の裁判所、2027年3月から Epicの訴えで、Appleは上訴へ
豪州の連邦裁判所は2026年10月22日、Appleに、iPhoneで他社のアプリストアやウェブサイトからのアプリの入手、App Store以外の支払いを認めるよう命じた。2027年3月1日からで、Apple Accountの国や地域が豪州の利用者が対象だ。Epic Gamesの訴えを受けたもので、Appleは上訴する方針だ。
IT- ●豪州の連邦裁判所がAppleに、他社のアプリストアやウェブサイトからのアプリの入手と、App Store以外の支払いを認めるよう命じた。2027年3月1日から、Apple Accountの地域が豪州の利用者が対象
- ●App Storeの外で配るアプリでは、ほかの支払いやウェブでの購入に手数料を取れない。外から入れるアプリの自動の検査と公証は残る
- ●Epic Gamesの訴えを受けた命令で、Appleは命令の一時停止を求めて上訴する方針。EpicのFortniteは、2027年を待たずに豪州のApp Storeへ戻れる
日本のiPhoneの使い方が、今回の命令で変わるわけではない。対象は、Apple Accountの国や地域が豪州の人だ。日本では2025年12月から、スマホ新法にもとづき、Appleが認めた他社のアプリストアを使える。アプリを売る会社や個人は、豪州と日本で手数料の条件が分かれていく点を押さえておきたい。
Appleは命令の一時停止を求めて上訴する方針で、始まる時期や中身が変わる可能性がある。命令どおりでも、Appleは2027年2月前半に申し立てれば、5月3日まで延ばせる場合がある。
豪州の連邦裁判所は2026年10月22日、Appleに対し、iPhoneで他社のアプリストアや、ウェブサイトからのアプリの直接の入手、App Store以外の支払いの仕組みを認めるよう命じた。米国のApple専門のニュースサイトMacRumorsと、中国のIT之家が伝えた。IT之家によると、判決は235ページある。
命令は2027年3月1日の正午(メルボルン時間、日本時間では午前10時)から効力を持つ。対象は、Apple Accountの国や地域が豪州の利用者だ。アプリを作る側は、豪州の会社に限らず、世界中のApple Developer Programの開発者が加われる。
なぜ命令が出たのか
もとは、ゲーム会社のEpic Gamesが起こした裁判だ。IT之家によると、裁判所は2025年、Appleがアプリの配り方と支払いの方法を縛ったことは、豪州の競争の法律(2010年競争・消費者法の46条)に反すると判断していた。強い市場の力を持つ会社が、競争を大きく弱めるふるまいをすることを禁じる条文だ。
ビーチ判事は、Appleが2020年に、Epicの人気ゲーム「Fortnite」をApp Storeから外し、Epicの開発者アカウントを止めたことを、縛りを守らせるための「典型的な例」と見たという。今回の命令は、その判断を受けて、何を直すかを決めたものだ。
何ができるようになるのか
MacRumorsとIT之家が伝えた命令の主な中身は、次のとおりだ。
| 項目 | 命令の中身 |
|---|---|
| アプリの入手 | 他社のアプリストアやウェブサイトから、アプリを探し、入れ、更新できる。Appleは、そのための料金を取ったり、使うのを妨げたりできない |
| 最初から入れる | 他社のアプリやアプリストアを、iPhoneに最初から入れておくことを禁じられない。ただ、Appleは他社のアプリストアをApp Storeで配る必要はない |
| 開発の道具 | App Storeで配るときとほぼ同じ条件で、開発者に必要な道具を渡す。他社のストアや支払いを使った開発者を、不利に扱えない |
| 支払い | App Storeのアプリの中でも、ほかの支払いの方法や、外の支払いへのリンクを使える。外の支払いで、安い値段を付けてもよい |
| Appleの支払いを並べる | ほかの支払いを使うときに、Appleのアプリ内購入も並べて出すよう求められない。外での取引をAppleに報告させたり、Appleが調べたりもできない |
手数料はどうなるのか
App Storeの外で配るアプリでは、ほかの支払いやウェブサイトでの購入に、Appleは手数料を取れない。App Storeのアプリでも、ほかの支払いでの購入にかけられる料金には上限が付く。モノや現実のサービスの支払いにかかる料金と同じ水準に、デジタルの購入で実際にかかる、正当で妥当な費用を足した額までだ。
また、外で配ることを認める代わりに、外で買った中身をAppleの支払いでも売るよう求めることもできない。
安全の検査は残る
外から入れるアプリにも、安全の確認は残る。App Storeの外で配るアプリは、安全やプライバシーの自動の検査を受け、Appleか、条件を満たした別の会社の「公証」(問題が無いことの確認)を受ける必要がある。
ただし、入れる手間を必要以上に重くして、外での配布を妨げることはできない。ほかの支払いに求める追加の安全の条件も、必要で、釣り合った範囲に限られる。外から入れたアプリをAppleが消したり止めたりできるのは、有害な中身、本当の安全の危険、法律で求められる場合に限られる。
Fortniteは先に戻れる
IT之家によると、FortniteなどEpicのアプリは、Appleの決まりに沿っていれば、豪州のApp Storeに戻せる。この部分は2027年3月を待たず、Epicが書面で求めれば、Appleはすぐに応じなければならない。Epicは「Fortniteは明日、豪州のApp Storeに戻る」としている。
一方で、Appleの言い分が通った部分もある。IT之家によると、裁判所は、命令を世界中に広げるようにというEpicの求めを退けた。外で配るアプリの安全の検査と公証も、Appleが続けてよいとした。最初の裁判にかかったEpicの費用は、85%をAppleが払う。
Appleは上訴する方針
Appleは、ロイター通信に、命令の一時停止を求め、上訴するとの声明を出した。知的財産を尊び、利用者や開発者が期待するApp Storeの安全で信頼できる体験を守る判断を求めるとしている。
命令どおりに進む場合でも、Appleは2027年2月1日から15日までに、裏付けとなる証拠を添えて申し立てれば、裁判所の承認を得て、始まりを5月3日まで延ばせる。
日本の決まりとの違い
日本では、スマートフォンの基本ソフトやアプリストアの競争を促す「スマホソフトウェア競争促進法」(スマホ新法)が、2025年12月に全面的に施行された。Appleは、iOS 26.2から、Appleが認めた他社のアプリストアでの配布や、Appleのアプリ内購入以外の支払いを認めている。日本で使える例として、DMMはiPhone向けの新しいアプリを、App Storeではなく独自のストアから配っている。
違いが大きいのは手数料だ。Appleの日本の発表によると、日本では、App Storeの外で配るアプリも、デジタルの売上の5%をAppleに払う。App Storeのアプリから外のウェブサイトへ案内して買ってもらうと、原則15%(条件を満たす開発者などは10%)かかる。豪州の命令は、App Storeの外で配るアプリの、ほかの支払いやウェブでの購入に、手数料を取ることを認めていない。
IT之家によると、外での取引の報告と、Appleの支払いを並べて出すことの2つは、Appleが今、日本やブラジルで求めているやり方だ。豪州の命令は、この2つも禁じた。
かんたんに言うと、家主の取り分を決め直す命令
ショッピングモールに例えると、Appleは、iPhoneというモールの家主だ。これまでは、モールの中の店がよそのレジを使ったり、モールの外にお客さんを案内したりするのを、家主が細かく決めてきた。
今回の命令は、豪州では、モールの外に別の売り場を開いてよく、そこでの売り上げから家主は取り分を取れない、という形だ。ただ、警備の見回り(安全の検査)は、家主が続けてよい。
これから
アプリを豪州で売る会社や個人は、2027年3月の前に、外での配布や外の支払いに切り替えるかを考えることになる。ただ、Appleが上訴するので、すぐに準備を始めるより、上訴と一時停止の行方を見てからでも遅くない。
日本でアプリを売る人にとっては、同じAppleのiPhoneでも、国ごとに手数料や手続きの条件が違ってきている点が大事だ。日本の条件は、Appleの日本の発表や、公正取引委員会のスマホ新法のページで確かめられる。
まとめ
豪州の裁判所が、Appleに、他社のアプリストアやウェブからのアプリの入手、App Store以外の支払いを認めるよう命じた。2027年3月1日から、Apple Accountの地域が豪州の利用者が対象になる。App Storeの外で配るアプリの、ほかの支払いには手数料を取れず、日本の条件より踏み込んだ中身だ。Appleは上訴する方針で、始まる時期や中身が変わる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。