名古屋大学、ALSの進行の違いに手がかり アルツハイマー病関連の変化を研究
名古屋大学などは、ALS患者の脳脊髄液に含まれるタンパク質を調べた。約14%にアミロイドβの異常な蓄積を示唆する所見があり、神経損傷の指標と進行の関係に違いが見られたという。複数の指標による診断補助も検討した。
サイエンス- ●名古屋大学などがALSの進行の個人差を探る研究
- ●ALS患者の約14%にタンパク質の異常な蓄積を示唆する所見
- ●複数の指標を組み合わせ、診断を補助する方法も検討
ALSの患者や家族にとって、診断や病気の進み方を見通す難しさに関わる研究だ。
患者ごとの病気の状態に応じた診断や進行予測、治療法を調べる臨床試験への応用につながる可能性がある。
名古屋大学などは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行の違いを探る共同研究を発表した。成果は2026年10月21日、医学誌『eBioMedicine』に掲載された。
何が分かったのか
ALSは筋肉を動かす運動神経が徐々に失われる病気だ。手足や会話、飲み込み、呼吸に支障が出る。早期診断が難しく、進行速度の個人差も大きいため、経過の予測が課題となっている。
研究には名古屋大学、愛知医科大学、ルンド大学、ボローニャ大学が参加した。対象は日本のALS患者264人と、他の神経疾患の患者164人だ。
調べたのは、脳と脊髄を囲んで守る「脳脊髄液」の成分だ。アルツハイマー病に関連するタンパク質などに着目した。
名古屋大学によると、ALS患者の約14%に、アミロイドβ病理を示唆する所見があった。これは脳内にタンパク質が異常に蓄積する変化を指す。認知症の症状が出る前にも存在し得る。
かんたんに言うと、複数の手がかりを照らし合わせる
脳脊髄液の成分は、神経の状態を知る手がかりになる。車の点検で複数の計器を見るように、異なる指標を照らし合わせる考え方だ。
アミロイドβは通常も脳内で作られるタンパク質だ。アルツハイマー病では、集まって蓄積する。研究では、アミロイドβ42と40の比率から病理の存在を推定した。
もう一つの指標が、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)だ。神経細胞を支えるタンパク質で、神経が損傷すると増える。
名古屋大学によると、所見のある患者では、NfL高値と速い機能低下との関連が強かった。短い生存期間との関連も強かったという。イタリアのALS患者153人でも、生存期間について同様の傾向があったとしている。
診断を助ける方法も検討
NfLはALS以外でも増えるため、単独ではALSと診断できない。症状や他の検査を合わせた判断が必要だ。
研究では、測定値のパターンをコンピューターが学ぶ「機械学習」を用いた。アミロイドβ関連の指標などを組み合わせたという。名古屋大学によると、NfL単独よりALSと他疾患を見分けやすくなった。
さらに、最初にNfLで評価し、中間的な値の患者に追加の指標を使う二段階の評価も検討した。
まとめ
今回の成果は、一つの指標だけでなく、患者ごとの病気の状態を捉える手がかりとなる研究だ。名古屋大学は、二段階評価がNfLだけでは判断の難しい患者の診断を補助する可能性があるとしている。
同大学は、診断や進行予測への応用を期待している。患者の特性を考慮した臨床試験の設計・評価にもつながる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。