食品の傷み始めを「光って」知らせる包装フィルム 九州大が開発、色と蛍光の2つで鮮度を表示 牛乳のたんぱく質と黒大豆の色素から
九州大学の研究グループは、食品の鮮度を、色の変化と、紫外線を当てたときの光(蛍光)の2つで知らせる包装フィルムを開発した。食品が傷むと出るアンモニアなどに反応する。冷蔵した羊肉で試すと、蛍光では保存6日目ごろからはっきり光った。材料は牛乳のたんぱく質と黒大豆の皮の色素などで、土や海水の中で分解しやすいという。
サイエンス- ●九州大学が、食品の鮮度を「色の変化」と「蛍光」の2つで知らせる包装フィルムを開発した
- ●食品が傷むと出るアンモニアなどに反応する。冷蔵した羊肉の試験では、蛍光で保存6日目ごろからはっきり光り、傷み始めを見つけやすかった
- ●材料は牛乳のたんぱく質と黒大豆の皮の色素など。菌を抑える働きもあり、土や海水の中で分解しやすい
冷蔵庫の肉や魚が「まだ食べられるか」を、においや見た目で迷った経験がある人は多いだろう。こうしたフィルムが実用化されれば、包装を見るだけで鮮度の目安が分かるようになるかもしれない。ただ、今回は研究の段階で、すぐに店で見かけるわけではない。今は、消費期限や保存の方法を守ることが大切だ。
研究グループは、将来はスマートフォンやAIと組み合わせた食品の品質の管理への応用も期待している。今回の試験は羊肉で行ったもので、ほかの食品でどこまで使えるかや、量産や値段の面は、これから確かめる段階だ(TECHNOVAの見方)。
九州大学大学院農学研究院の田中史彦教授、田中良奈准教授らの研究グループは2026年10月22日、食品の鮮度を「色の変化」と「光」の2つで知らせる包装フィルムを開発したと発表した。成果は、化学工学の国際的な学術誌「Chemical Engineering Journal」に、8月29日付で載った。
包装が「食品の状態を知らせる」
食品のロスを減らし、食べ物の安全を高めるため、食品の鮮度をその場で知らせる「スマート包装」の開発が、世界で進んでいる。ただ、これまでの鮮度を表すフィルムの多くは、色の変化だけに頼っていた。そのため、傷み始めの早い段階を見つけにくく、暗い場所では見えにくいという課題があった。
色と蛍光の「二重のしるし」
研究グループが作ったフィルムは、次のような材料でできている。
- 土台: 牛乳に含まれるたんぱく質「カゼイン」
- 色が変わる成分: 黒大豆の皮からとった色素「アントシアニン」。酸性かアルカリ性かで色が変わる性質がある
- 補う材料: コバルトと有機物でできた、細かな穴の多い材料「ZIF-67」。菌を抑える働きがある
肉や魚が傷むと、アンモニアなどのにおいの成分が出る。フィルムはこれに反応し、ふだんの明かりの下では色が変わり、紫外線を当てると光る(蛍光)。色と光という2つの情報を合わせることで、色だけのものより見分けやすく、信頼できる鮮度の確認ができるという。
羊肉で試すと、6日目ごろから光った
冷蔵した羊肉で試すと、傷みが進むにつれて、フィルムの色と光り方が変わった。特に蛍光では、保存6日目ごろから、はっきりした光が見えた。九州大学は、傷み始めの段階から、蛍光で感度よく鮮度を見分けられるとしている。
フィルムには、菌を抑える働きや、食品が酸化するのを抑える働きもあり、食品の品質を保つのにも役立つことが分かった。さらに、土や海水の中でよく分解されるので、環境への負担も減らせると期待されるという。
田中教授は、食品の包装は「包む」だけでなく、「食品の状態を知らせる」役割を担う時代になりつつあるとコメントしている。
かんたんに言うと
リトマス紙が酸性かアルカリ性かで色を変えるように、このフィルムは、肉が傷むと出るにおいの成分で色を変える。さらに、ブラックライトのような紫外線を当てると光るので、色の違いが分かりにくい暗い場所でも気づきやすい。包装そのものが、冷蔵庫の中の「鮮度の見張り番」になるイメージだ(TECHNOVAの見方)。
日本ではどうなるのか
今回は研究の段階で、商品化の時期や、日本の店で使われる見通しは示されていない。日本では、消費期限や賞味期限は、まだ食べられる食品が捨てられる「食品ロス」の一因とも言われる。包装を見て鮮度の目安が分かるようになれば、買う人や店が、食べられるかどうかを判断しやすくなるかもしれない(TECHNOVAの見方)。
まとめ
九州大学は、食品の鮮度を色の変化と蛍光の2つで知らせる包装フィルムを開発した。冷蔵した羊肉の試験では、蛍光で保存6日目ごろからはっきり光り、傷み始めを見つけやすかった。牛乳のたんぱく質や黒大豆の皮の色素など、自然由来の材料を使い、環境にやさしい点も特徴だ。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。