名古屋大学とJSR株式会社、鉄ナノ粒子と光を使う新たながん治療基盤を開発
名古屋大学とJSR株式会社が、鉄ナノ粒子を使うがん治療基盤「NIR-PICT3」を開発した。研究グループは、光による複数の治療作用と、MRIによる腫瘍の画像化を組み合わせられるとしている。
サイエンス- ●名古屋大学とJSR株式会社が新たながん治療基盤を開発
- ●研究グループは、光と熱などの治療作用を組み合わせたとする
- ●研究グループは、標的ではない腫瘍細胞にも熱が効くと報告
がん治療の研究に関心がある人にとって、治療と画像検査を組み合わせる新たな研究成果だ。
研究グループは、抗体を変えることで、さまざまながん種への応用が可能と考えている。
科学技術振興機構(JST)は、名古屋大学とJSR株式会社による新たながん治療基盤の開発を公表した。成果は2026年10月21日(現地時間)、科学誌「Journal of Nanobiotechnology」に掲載された。
何が発表されたのか
開発した治療基盤の名称は「NIR-PICT3」だ。抗体と光感受性物質に、極小の酸化鉄ナノ粒子を結合する。抗体はがん細胞の標的に結び付く役割を持ち、光感受性物質は光に反応する物質だ。
もとになる近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)は、がん細胞を標的に光を当てて治療する方法である。従来のNIR-PITは、2020年に世界に先駆けて日本で条件付き承認された。
ただし、腫瘍に薬剤が届いたかを正確に評価することや、標的がないがん細胞への効きづらさに課題があった。
かんたんに言うと
同じ腫瘍でも、細胞によって標的となる抗原の現れ方が異なる。これを「腫瘍内不均一性」と呼ぶ。目印を頼りに相手を探しても、目印がない相手は見つけにくい、というたとえで考えると分かりやすい。
研究グループによると、新手法は従来法に光熱療法と化学動力学的療法を組み合わせた。光による熱や化学反応を利用する治療で、相乗効果を組み込んだとしている。
690nmの近赤外光で、複数の治療作用を同時に引き起こすという。さらに、標的ではない腫瘍細胞にも、熱による治療効果が及ぶことを発見したとする。この「光温熱バイスタンダー作用」の仕組みも解明したという。
画像で捉える機能と、繰り返し照射の効果
研究グループによると、NIR-PICT3ではMRIで標的腫瘍を画像化できる。MRIは、磁気を利用して体内を画像にする検査だ。
また、光照射を繰り返すたびに発熱効率が上がる「光温熱増強効果」も発見したとしている。
鉄ナノ粒子は、肝臓がんや肝転移腫瘍のMRI画像検査で、既に臨床使用が認可されている。ただし、既存の検査用途と、今回開発した治療基盤は分けて捉える必要がある。研究はJSTの創発的研究支援事業による支援を受けた。
まとめ
今回の成果は、光による治療に熱などの作用を加え、腫瘍の画像化も組み合わせる研究だ。研究グループは、治療とMRIによる追跡の両立が可能と考えている。
また、鉄ナノ粒子に既存の臨床用途があるため、人への臨床応用は容易と考えている。抗体を変えることで、さまざまながん種への応用も可能とする。いずれも研究グループの見通しであり、既に認可された治療としての発表ではない。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。