湖や海で終わる氷河は全体の3%、減った氷の半分超を占める 英チームが世界の氷河を分類
英国のバーミンガム大学などのチームが、世界の21万あまりの氷河を、先が陸・湖・海・棚氷のどこで終わるかで分けた。湖や海などで終わる氷河は数で3.2%なのに、2000〜2019年に減った氷の半分超を占めていた。
サイエンス- ●湖や海などで終わる氷河は、数では世界の3.2%しかない
- ●2000〜2019年に毎年1,340億トンを失い、減った氷の半分超
- ●面積あたりでは、湖で終わる氷河が陸の氷河より57%多く減った
海辺に住む人や、氷河の水に頼る地域に関係する。世界の氷河が2000〜2019年に失った氷は、観測された海面上昇の21%にあたる。
チームは、氷河の将来を予測するモデルに、湖や海で終わる氷河をきちんと入れる必要があるとする。分類のデータは無料で公開されている。
英国のバーミンガム大学とリーズ大学を中心に、スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)なども加わったチームが、世界の氷河を「先がどこで終わっているか」で分け、氷の減り方を比べた。湖や海などで終わる氷河は数では3.2%なのに、2000〜2019年に減った氷の半分あまりを占めていた。論文は2026年10月23日、科学誌「Nature Communications」に載った。
何を調べたのか
氷河の先(末端)には、陸で終わるもの、湖や海に流れ込むもの、海に浮かぶ厚い氷の板「棚氷」につながるものがある。チームは、グリーンランドと南極の氷床を除く216,502の氷河を、この4つに分けた。湖で終わる氷河は、1990〜2018年の衛星「ランドサット」の画像254,795枚から作られた氷河湖の地図で探した。氷の減り方は、別のチームが衛星の記録から出した2000〜2019年のデータを使った。
何が分かったのか
数では、陸で終わる氷河が96.8%で、湖は1.6%、海は1.5%、棚氷は0.1%だった。ところが面積では、湖・海・棚氷で終わる氷河が半分を超える。こうした氷河は大きいものが多い。
減った氷のうち、陸で終わる氷河の分は49.4%で、湖が24.0%、海が22.8%、棚氷が3.9%だった。発表によると、湖・海・棚氷で終わる氷河は毎年1,340億トンの氷を失っていた。アイスランドや南米アンデス山脈の南部、北極のスバールバル諸島などでは、減った氷の50%超が湖か海で終わる氷河の分だった。
湖で終わる氷河は、減り方が大きい
気候や大きさ、高さの違いを統計で差し引くと、湖で終わる氷河は陸で終わる氷河より平均で10%、海で終わる氷河は44%速く流れていた。面積あたりで減った氷は、湖で終わる氷河が陸で終わる氷河より57%多かった。
かんたんに言うと
氷河の「質量収支」は、雪が積もって増える分と、とけて減る分の差し引きだ。家計の収入と支出に似ている。湖や海に流れ込む氷河には、支出の口がもう1つある。先が崩れて氷山になる「カービング」と、水の中で氷がとける分だ。
なぜ大事なのか
今回使ったデータの元の研究では、世界の氷河は2000〜2019年に1年あたり267ギガトン(1ギガトンは10億トン)の氷を失った。観測された海面上昇の21%にあたる。論文は、多くの氷河の予測のモデルが、湖で終わる氷河の動きを入れていないと指摘する。今回の分類は、海面上昇や水資源、自然災害の危険の予測を良くする土台になるという。世界では氷河湖が増え、陸で終わっていた氷河が湖で終わるようになる例が出ている。
分かっていないこと
湖で終わる氷河がなぜ速く減るのかは、まだ分からない。筆頭著者のジョー・マラリュー(Joe Mallalieu)博士は「湖そのものかもしれないし、氷河の大きさや形かもしれない。その両方かもしれない」と話す。湖に少しだけ触れる氷河も湖の側に数えたため、湖と陸の差は小さめに出ている可能性があるという。
日本ではどうなるのか
論文の著者の所属に、日本の研究機関は含まれていない。論文は、陸で終わっていた氷河が湖で終わるようになった例の1つに、名古屋大学などのチームがブータンのヒマラヤで調べた研究を挙げている。そのトルトミ氷河では、2011年から湖の広がりが速まり、氷河が薄くなる速さが2倍になった。
まとめ
数では3.2%の氷河が、減った氷の半分あまりを占めていた。チームは、氷河の将来の予測に、湖や海で終わる氷河をきちんと入れる必要があるとしている。分類のデータは無料で公開されている。毎日の天気で計算し直した氷河の予測は氷河の予測の記事、グリーンランドと南極の氷床は氷床の記事、スイスの氷河の2026年の減少はスイスの氷河の記事で伝えている。
- Nature Communications「Global-scale variability of glacier velocity and mass loss across terminus environments」(Mallalieuほか・2026年10月23日)
- バーミンガム大学「Just 3% of the world’s glaciers account for over half of glacier ice loss」(2026年10月21日)
- Nature「Accelerated global glacier mass loss in the early twenty-first century」(Hugonnetほか・2021年)
- The Cryosphere「Land- to lake-terminating transition triggers dynamic thinning of a Bhutanese glacier」(Satoほか・2022年)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。