緑内障の治療薬候補「ER-100」、初の人での試験で3人の初期データを公表
米Life Biosciencesは、視神経の病気に向けて開発中のER-100について、第1相試験の初期データを公表した。緑内障の患者3人で56日目まで重い有害事象の報告はなく、2人で視野検査に改善の兆しが見られたという。
サイエンス- ●米Life Biosciencesが、緑内障の患者3人の初期データを公表
- ●56日目まで重い有害事象の報告はなく、2人で視野検査に改善の兆し
- ●安全性を見る第1相試験の途中で、効き目が確かめられたわけではない
緑内障の人や家族に関わる研究だが、米国で続く少人数の試験の途中経過で、治療として受けられる段階ではない。日本での治験は発表されていない。
独立した委員会の勧告を受け、緑内障の患者で2段階目の量に進む。その後、別の視神経の病気NAIONの患者でも試す計画だ。
米国のバイオ企業Life Biosciencesは2026年10月8日、開発中の治療薬候補「ER-100」の初期データを発表した。人で初めての臨床試験で、開放隅角緑内障の患者3人の投与から56日目までの結果だ。
何が発表されたのか
発表の場は、米ニューオーリンズで同日開かれた「Eyecelerator @ AAO 2026」だ。AAOは米国眼科学会のことで、同社の最高科学責任者が口頭で発表した。
試験は、安全性を確かめる第1相試験(NCT07290244)だ。3人は1段階目の量(2×10の11乗 vg。vgは薬の量の単位)を、片方の目の中に1回注射で受けた。あわせて抗菌薬のドキシサイクリンを56日間、毎日飲んだ。
同社によると、3人とも56日目まで忍容性(体が治療に耐えられるか)は良好だった。重い有害事象や、量を増やせなくなるほどの副作用の報告はなかった。報告された有害事象は、注射の手技やステロイド薬、もとからの病気に関わるもので、ER-100とは直接関係しないとしている。
視野の検査では、3人のうち2人に「改善の初期の兆し」が見られた。視野のたくさんの点で光が見えるかを調べ、デシベル(dB)で点数を付ける検査だ。2人とも、視野の点の28%以上で4dBを超える改善があったという。
ER-100とは
狙いは、目と脳をつなぐ神経細胞「網膜神経節細胞」の働きを取り戻すことだ。同社によると、この細胞は自然には再生せず、傷つくと視力の障害が残る。
仕組みは、同社が「部分的なエピゲノムのリプログラミング」と呼ぶ方法だ。DNAの並びは変えずに、どの遺伝子を働かせるかを決める目印を、若い細胞の状態に近づける。DNAを料理の本とすると、目印は「このページを使う」という付箋に当たる。
運び役は、病気を起こさないよう改変したウイルス(AAV)だ。OCT4・SOX2・KLF4の3つのたんぱく質(OSK)を作る指示を載せて目に入れる。「山中因子」と呼ばれる4つの因子のうちの3つだ。OSKは、ドキシサイクリンを飲むことで作られ始める。同社は、こうした取り組みを「細胞の若返り」と呼んでいる。
効き目はまだ確かめられていない
同社も、この試験は安全性と忍容性を評価するためのものだとしている。視野の結果も「初期の兆し」という位置づけだ。登録によると、偽の薬と比べる群はなく、投与前の検査の値と比べる。結果は学会と発表文で示されたもので、論文の発表は書かれていない。
この先の予定
独立した安全性の監視委員会は、緑内障の患者で2段階目の量(6×10の11乗 vg)に進むよう勧告した。試験は続いている。
登録では、参加者は最大18人(緑内障12人・NAION 6人)で、最長5年経過を見る。緑内障で量を決めたあと、NAIONの患者で試す。NAIONは、目の奥の血の流れが足りず突然視力を失う病気で、同社によると承認された治療はない。
日本ではどうなるのか
登録にある試験の施設は、米国の4か所だ。同社の発表に日本の話はなく、日本での治験は発表されていない。ER-100は開発中の治療薬候補で、一般の治療として受けられるものではない。
まとめ
ER-100の初期データでは、緑内障の患者3人で56日目まで重い有害事象の報告はなく、2人で視野検査に改善の兆しが見られた。第1相試験の途中の結果で、同社は次の量に進めて試験を続ける。
- Life Biosciences「Life Biosciences Announces First-in-Human Data from Ongoing Phase 1 Trial Evaluating ER-100 in Optic Neuropathies」
- Life Biosciences「Life Biosciences to Present First-in-Human Data from Ongoing Phase 1 Trial Evaluating ER-100 in Optic Neuropathies at Eyecelerator 2026」
- Life Biosciences「Life Biosciences Announces FDA Clearance of IND Application for ER-100 in Optic Neuropathies」
- ClinicalTrials.gov「NCT07290244」(ER-100の第1相試験の登録)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。