【解説】PayPayの本人確認、撮影の申請はなぜ終わるのか ICチップのしくみと、暗証番号を忘れたとき
PayPayは11月上旬までに、マイナンバーカードや運転免許証を撮影する本人確認の申請をやめ、ICチップの読み取りにそろえる。なぜ撮影をやめるのか、カードにかざして何を確かめるのか、暗証番号は何桁で、忘れたらどうするのかを整理する。
IT- ●撮影の申請は11月上旬までに廃止。運転経歴証明書は10月23日から使えない
- ●暗証番号はマイナンバーカードが6桁から16桁、運転免許証が4桁の数字二組
- ●すでに「本人確認済み」の人は、設定の作業はいらないと案内されている
これからPayPayで本人確認をする人は、NFCに対応したスマホと、マイナンバーカードか運転免許証、その暗証番号を用意したい。
撮影の申請は11月上旬までに廃止される。法令の改正は2027年4月1日に施行され、携帯電話の店頭の契約も同じ月からICチップの読み取りが原則必須になる。
PayPayは2026年10月23日、本人確認(eKYC)のやり方を変えると発表した。マイナンバーカード、運転免許証、運転経歴証明書を撮影して申請する方法を、2026年11月上旬までに廃止する。今後は、書類に入ったICチップを読み取る方法にそろえる。発表の中身はニュースの記事で伝えた。ここでは、なぜ撮影をやめるのか、スマホをカードにかざすと何を確かめているのか、利用者は何を用意すればよいのかを整理する。
なぜ撮影の申請をやめるのか
今の撮影の申請では、スマホで書類の表と裏を撮る。書類の厚みが分かるよう、スマホを書類に対して45度傾けても撮る。そのあと自分の顔を撮って送る。金融庁によると、この方法では、事業者は書類の厚みや本人の顔の写真などを確かめることになっている。
PayPayは理由を「昨今、サイバー攻撃によって運転免許証の画像情報を含む個人情報が漏洩する事案が発生するなど、本人確認書類の画像情報を悪用したなりすましなどのリスクが高まっています」と説明している。どの事案かは挙げていない。免許証などの画像が漏れた件は、TECHNOVAでもカーシェアの例を伝えている。
法令も変わる。マネー・ロンダリングを防ぐための犯罪収益移転防止法の施行規則を改める命令が2025年6月24日に公布され、2027年4月1日に施行される。警察庁の年次報告書によると、改正は「精巧に偽変造された本人確認書類が悪用されている実態があること等を踏まえ」たものだ。対面しない本人確認で、書類を撮影した画像を受け取る方法や、書類の写しを送ってもらう方法を、原則として廃止する。
報告書は、悪用の例として次の事件を挙げている。架空の人物の名前で運転免許証を偽造し、その画像を送って口座を申し込み、郵送されたキャッシュカードをだまし取った。
書類と顔を撮影した画像を送る方法は、金融庁の資料で、施行規則(6条1項)の「1号ホ」の方法とされている。いわゆる「ホ方式」だ。金融庁は10月9日、金融機関などに対し、施行日を待たずにできるだけ早く、ICチップの読み取りへ移るよう求めた(関連の記事)。
スマホをかざすと、何を読んでいるのか
ICチップは、カードの中に入った小さな部品だ。スマホのNFC(近づけるだけでデータをやりとりする無線の仕組み)を使って、中の情報を読み出す。Androidのスマホでは、裏の「NFC」か「FeliCa」のマークを、カードの中心に合わせる。iPhoneは、iOS 13.0以上が必要だ。
警視庁によると、運転免許証の表に書かれている内容は、ICチップにも記録されている。警察庁のQ&Aによると、免許証のICチップを使う方法では、事業者は氏名、住居、生年月日と写真の情報をICチップから受け取る必要がある。
画像と違うのは、中身が本物かどうかを確かめられる点だ。警察庁のQ&Aは、事業者に「ICチップ情報が真正なものであることの確認」を求める。方法の例は、秘密の鍵で暗号化された情報を受け取り、対になる公開の鍵で元に戻して確かめることだ。デジタル庁の説明では、この「公開鍵暗号方式」は、片方の鍵で暗号化したものを、対になるもう一方の鍵でしか元に戻せない。マイナンバーカードには、ICチップの情報を不正に読み出そうとすると自動で消すなどの対策もとられている。
暗証番号は、勝手に読まれないための鍵だ。警視庁によると、免許証のICチップの中身は、暗証番号を入れないと見られない。暗証番号を設定しなかった場合は、読み取り装置を持った人が約10センチメートルまで近づくと、個人情報を読み取られるおそれがあるという。
マイナンバーカードの「署名用」と「利用者証明用」
マイナンバーカードで迷いやすいのが暗証番号だ。マイナンバーカードの電子証明書を使ってオンラインで本人を確かめる公的な仕組みを、公的個人認証サービスという。この電子証明書には2種類あり、暗証番号も別々だ。
| 署名用電子証明書 | 利用者証明用電子証明書 | |
|---|---|---|
| 暗証番号 | 6桁から16桁の英数字 | 4桁の数字 |
| 間違えられる回数 | 5回でロック | 3回でロック |
| 主な使い道 | e-Taxなどの電子申請。文書を本人が作って送ったことを証明する | マイナポータルへのログイン、コンビニでの証明書の交付、健康保険証のオンライン資格確認 |
| 住所・氏名・生年月日・性別 | 入っている | 入っていない |
PayPayで暗証番号を使って申請するときは、署名用電子証明書の暗証番号、つまり6桁から16桁のほうを入れる。コンビニで証明書を受け取るときなどに使う4桁の暗証番号とは別のものだ。PayPayは、ICチップの署名用電子証明書の情報を使うことで本人確認が完了するとしている。
総務省によると、署名用電子証明書は、住所・氏名・性別が変わると無効になる。有効期間は原則として、発行の日から5回目の誕生日までだ。PayPayの案内では、カードの「電子証明書の有効期限」が切れているか空欄のときは、暗証番号を使わない方法に進む。
デジタル庁によると、公的個人認証サービスを使う民間事業者は1,431社(2026年9月30日時点)ある。銀行や証券の口座開設、ローンの契約などで使われている。
3つの申請方法と、暗証番号を忘れたとき
撮影の申請の廃止後も使えるとされたのは、次の3つだ(在留カードと特別永住者証明書は別の案内)。どれも、PayPayアプリのバージョン4.28.0以上と、ICチップを読めるNFC対応のスマホが要る。PayPayの案内では、ICチップ読み取りでの申請は、審査が最短当日だ。
| 方法 | 入れるもの | 間違えたとき・使う人 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード(暗証番号で申請) | 署名用電子証明書の暗証番号(6桁から16桁) | 5回間違えるとロック。市区町村の窓口か、コンビニのキオスク端末で手続きする |
| マイナンバーカード(カード表記の情報入力で申請) | 生年月日、有効期限の年、写真の下の4桁のセキュリティコード。ICチップを読んだあと顔を撮る | 署名用の暗証番号を忘れた人や、15歳未満の人はこちら |
| 運転免許証(ICチップ読み取りで申請) | 4桁の数字二組の暗証番号。ICチップを読んだあと顔を撮る | 3回間違えるとロック。警察署や運転免許センターで手続きする |
署名用電子証明書の暗証番号は、公的個人認証サービスのポータルサイトによると、スマホのアプリとコンビニのキオスク端末で初期化・再設定するか、市区町村の窓口で再設定できる。
運転免許証の暗証番号を忘れたとき、警視庁(東京都)は電話では答えない。本人が免許証を持って、運転免許試験場や運転免許更新センター、都内の警察署に行けば照会に応じる。今のPayPayの案内では、免許証の暗証番号が分からない人は撮影の申請に進む。撮影の申請がなくなれば、照会して確かめるか、マイナンバーカードの方法を使うことになる。
なお、PayPayの案内のページには「2026年10月23日より本人確認に運転経歴証明書はご利用できません」とある。
ICチップを読めないとき
PayPayのヘルプは、読み取れないときの注意として次を挙げる。
- スマホをカードの上に置き、読み終わるまで動かさない(1か所につき5秒以上)
- スマホやカードをケースから出し、充電やイヤホンのケーブルを外す
- 機内モードを解除し、周りの金属から離す
iPhoneは機種によって当てる位置が違い、ヘルプに機種ごとの位置が載っている。
困るのは、スマホが読み取りに対応していない場合だ。今のPayPayの案内では、対象外の機種の人は書類撮影での申請に進む。この撮影の申請は11月上旬までに廃止される。そのあと対応していないスマホの人がどう申請するかは、発表には書かれていない。
法令は、ICチップ付きの書類やNFC対応のスマホを持たない人のための方法も残した(警察庁のQ&A)。住民票の写しなど、偽造を防ぐ工夫がされた書類の原本を送ってもらう方法だ。ただ、PayPayの本人確認の案内のページには、書類を送る方法は載っていない。
すでに本人確認を済ませた人は
PayPayの案内では、アプリのアカウント画面で「本人確認済み」になっていれば、設定の作業はいらない。法令の面でも、警察庁のQ&Aは、施行前に撮影の方法で本人確認をした場合でも「施行後に別の方法により再度確認を行うことを求めるものではありません」と答えている。
ただし、引っ越しなどで本人確認の情報を更新するときは、新しく申請するときと同じように、書類と方法を選ぶ手順になっている。
PayPayによると、本人確認をすると、銀行口座の登録やPayPayマネーが使えるようになる。2026年6月2日からは、使い方に応じてポイントが戻る「PayPayステップ」の対象も、本人確認をした人に限られている。
銀行や携帯電話でも同じ流れ
ICチップへの切り替えは、PayPayだけの話ではない。銀行や証券会社など、犯罪収益移転防止法の対象の事業者も同じだ。2027年4月1日からは、オンラインで書類の画像を受け取る本人確認が原則としてできなくなる。窓口などの対面でも、2026年3月6日に公布された別の改正で、書類を見せるのに加えてICチップを読み取ることが原則になる。施行は同じく2027年4月1日だ。
施行を待たずに切り替えた銀行もある。公式の発表で確かめられたのは次のとおりだ。
| 会社 | 対象 | 変更 |
|---|---|---|
| ドコモSMTBネット銀行 | 個人の口座開設 | 2026年9月28日以降、書類の撮影方式「スマホで本人確認」を廃止。「ICチップ読取」か「公的個人認証」で手続きする |
| ゆうちょ銀行 | ゆうちょダイレクトでの投資信託・NISA口座の申し込み | 10月20日、画像のアップロードに代えて、マイナンバーカードを使う方法(JPKI方式)を導入すると知らせた |
| あおぞら銀行 | 「あおぞら銀行BANK預金口座WEB開設サービス」 | 10月28日で撮影の方式を終え、10月29日から公的個人認証に変える。運転免許証や運転経歴証明書は使えない |
携帯電話の契約も変わる。総務省によると、オンラインの契約では、2026年4月1日からICチップの読み取りがすでに原則必須だ。2027年4月以降は、店頭などの対面の契約でも原則必須になり、データ通信だけのSIMの契約も本人確認の対象になる。
総務省は、こうした制度の変更に便乗して「手続きが必要です」「今すぐ情報を送ってください」と迫る詐欺にも注意を呼びかけている。届いたメールやSMSのリンクから開かず、自分で通信事業者のマイページなどを開くよう勧めている。
かんたんに言うと
これまでの撮影の申請は、書類のカラーコピーと自撮りを見せて「本人です」と伝えるやり方に近い。よくできた偽物のコピーは、見た目では見分けにくい。ICチップの読み取りは、カードの中にある、発行した側の「はんこ」付きの記録を、暗証番号などの鍵で開けて見せるやり方だ。はんこが合わなければ、偽物だと分かる。
まとめ
PayPayは2026年11月上旬までに、マイナンバーカードや運転免許証を撮影する本人確認の申請をやめ、ICチップの読み取りにそろえる。法令も、偽造された書類の悪用をふまえ、2027年4月1日から書類の画像を送る本人確認を原則として廃止する。これから申請する人は、NFCに対応したスマホと、暗証番号(マイナンバーカードは6桁から16桁、運転免許証は4桁の数字二組)を確かめておきたい。すでに「本人確認済み」の人は、設定の作業はいらない。
- PayPay株式会社「本人確認(eKYC)におけるマイナンバーカード、運転免許証または運転経歴証明書の撮影による申請の廃止、ICチップ読み取り方式への統一について」(2026年10月23日)
- PayPay「本人確認をする」
- PayPay「本人確認を更新する」
- PayPay ヘルプ「本人確認(eKYC)について」
- PayPay ヘルプ「本人確認(eKYC)ができない」
- PayPay 本人確認の案内ページ(本人確認でできること)
- 警察庁「犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和7年)」
- 警察庁「令和7年改正犯罪収益移転防止法施行規則(なりすまし等のリスクの高い本人特定事項の確認方法の廃止等)(令和7年6月24日公布)に関するQ&A」
- 金融庁「現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について」(2026年10月9日)
- 金融庁 参考資料「犯罪収益移転防止法におけるオンラインで完結可能な本人確認方法の概要」(令和9年3月31日まで)
- デジタル庁「公的個人認証サービス(JPKI)」
- 総務省「公的個人認証サービスによる電子証明書」
- 地方公共団体情報システム機構「公的個人認証サービス ポータルサイト」
- 警視庁「ICカード免許証」
- 総務省 特殊詐欺等対策サイト「携帯電話の本人確認ルール」
- ドコモSMTBネット銀行「【個人口座】本人確認書類の撮影方式による口座開設の廃止について」(2026年9月18日)
- ゆうちょ銀行「ゆうちょダイレクトによる投資信託・NISA口座開設申し込みサービスの本人確認方法の変更について」(2026年10月20日)
- あおぞら銀行「あおぞら銀行BANK預金口座WEB開設サービスの変更について」
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機能・料金の形・似たサービスは、姉妹サイト「サービス・システム大全」で比べられます。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。