グリーンランドと南極の氷床、45年で11.3兆トン減 8割超は氷河の「流れ出し」
英ノーサンブリア大学などのチームが、衛星の観測を半世紀分つなげ、グリーンランドと南極の氷床が1979〜2023年に約11.3兆トン減ったとまとめた。海面は31.4ミリ上がった。減った分の84%は、氷河の流れが速まり氷が海へ出たためだという。
サイエンス- ●グリーンランドと南極の氷床が、1979〜2023年に約11.3兆トン減った
- ●世界の海面は31.4ミリ上昇。いまの海面上昇の約4分の1を占める
- ●減った分の84%は、氷河の流れが速まって氷が海へ出たため
海辺に住む人や、沿岸の防災に携わる人に関係する話だ。日本の沿岸でも海面は上がっており、気象庁によると2004〜2025年に1年あたり3.5ミリ上昇した。
研究チームは、氷床がこの先の数十年でさらに多くの氷を失うとみる。ESAは、新しい衛星「CRISTAL」などが今後の観測に欠かせないとしている。
英国のノーサンブリア大学などの国際研究チーム「IMBIE」は2026年9月16日、グリーンランドと南極の氷床(陸の上を広く厚く覆う氷)が、1979〜2023年に約11.3兆トン減ったと発表した。論文は科学誌「Scientific Data」に載った。研究は欧州宇宙機関(ESA)と米航空宇宙局(NASA)が支えている。
何が分かったのか
チームは、27の人工衛星の観測による42件の見積もりを突き合わせ、1つの記録にまとめた。期間はグリーンランドが1972年から、南極が1979年から、どちらも2023年までだ。古い時代は、1972年からある地球観測衛星「ランドサット」の画像で、氷河の流れる速さを測った。
2つの氷床で減った氷は、論文の数字で11,309ギガトン(1ギガトンは10億トン)、誤差は±565ギガトンだ。これで世界の平均の海面は31.4ミリ上がった。ESAによると、グリーンランドの分が1.81センチ、南極の分が1.33センチだ。いまの世界の海面上昇の約4分の1は、この2つの氷床による。
減り方は1990年代から急になった。グリーンランドは1970年代にはほぼ釣り合っていたが、1年に減る量は1980年代の約600億トンから、2010年代には2,640億トンに増えた。南極も約480億トンから2,020億トンに増えた。
かんたんに言うと
氷床は、雪が積もって増え、表面がとけたり、氷河が海へ氷を押し出したりして減る。家計にたとえると、雪が収入、とける分と流れ出す分が支出だ。衛星は、氷の表面の高さ、重さによる重力のわずかな違い、氷河の流れる速さを測り、この収支を出す。論文の換算では、360ギガトンの氷が減ると、世界の海面が1ミリ上がる。
今回、減った分の84%は氷河が海へ押し出した分で、表面がとけた分は16%だった。研究を率いたイネス・オトサカ博士は「長い目で見た傾向を動かしているのは、暖まる海に対する氷床の動きの反応だ」と話す。
2020〜2023年は、減り方がいったんゆるやかになった。東南極で2022年と2023年に記録的な大雪が降り、南極全体の減り方は2010年代の3分の1未満になった。ただ同じ時期、西南極で海へ押し出された氷は38%増えた。チームは、これは短い間の揺れで、減る流れが逆になったわけではないとしている。
分かっていないこと
数えたのは、海面を上げる分の氷床の変化だけだ。海に浮かぶ氷の板(棚氷)が薄くなったり縮んだりした分は入っていない。東南極では、測り方によって、氷が増えたか減ったかの向きさえ食い違う。氷の厚さを測ったデータが少ない地域もあるという。
日本ではどうなるのか
論文の著者の所属に、日本の研究機関は含まれていない。日本の沿岸でも海面は上がっている。気象庁によると、地盤の上下の動きを補正した13地点の平均で、2004〜2025年に1年あたり3.5ミリ上がった。
日本の南極地域観測隊は、東南極のトッテン氷河の近くで、暖かい海水が氷の下へ流れ込む様子を調べてきた。北海道大学と国立極地研究所などの研究グループは2023年、ヘリコプターから67地点で観測し、その流れ込む道筋を特定したと発表している。
まとめ
衛星の記録を約半世紀分つなげたことで、氷床の減少は1990年代から速まり、主に氷河の流れ出しによることが分かった。チームを立ち上げたアンドリュー・シェパード教授は、3センチの海面上昇で、沿岸の浸水や浸食の危険にさらされる人がさらに600万〜900万人増えると話す。氷床が不安定になる危険まで含めると、2150年までの海面上昇の高めの見積もりは2.6倍になるという。
- Scientific Data「Mass balance of the Greenland and Antarctic ice sheets from the 1970s to 2023」(IMBIE Team・Otosakaほか・2026年9月16日)
- ノーサンブリア大学「Speeding glaciers drive half a century of polar ice loss」(2026年9月16日)
- 欧州宇宙機関(ESA)「Faster-flowing glaciers fuel decades of polar ice loss」(2026年9月16日)
- 気象庁「日本沿岸の海面水位の長期変化傾向」(2026年2月16日発表)
- 北海道大学「ヘリコプターを用いた東南極域の大規模海洋観測に初成功」(2023年9月12日)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。