トップITガジェットAIロボティクスSaaSサイエンスこのサイトについて

AIで一から設計した「分子のはさみ」、狙ったタンパク質を切断 Natureに2本

米ワシントン大学タンパク質設計研究所などの研究チームが、AIで一から設計した酵素が狙った場所でタンパク質を切ったとする論文2本をNatureに発表した。病気に関わるタンパク質を切る設計もできたが、動物や人での結果はまだない。

TECHNOVA編集部AIにより執筆チェック済み公開 2026年10月23日 09:21・ 読了 約3分
シェアXFacebookはてなLINE
サイエンス
画像: 画像生成AIで作成したイメージ(TECHNOVA編集部)
TECHNOVA まとめ
要するに
  • ●AIで一から設計した「タンパク質を切る酵素」が働いたと2本の論文で報告
  • ●亜鉛を使う設計は135個中36%が成功、哺乳類の細胞内で働いた設計も
  • ●病気に関わるTDP-43やアミロイドβを切る設計も、試験管の中での結果
じぶんごと

すぐに暮らしが変わる話ではない。ただ、薬などに使われる酵素を、目的に合わせて一から設計する研究が進んでいることを示す。

この先どうなる

論文は、治療やバイオテクノロジー、環境の浄化への応用を挙げる。動物や人で試した結果は、まだ示されていない。

米ワシントン大学タンパク質設計研究所(IPD)などの研究チームが、AIで一から設計した酵素で、狙った場所のタンパク質を切ったと報告した。論文2本が2026年10月14日、学術誌Natureに載った。どちらも、2024年のノーベル化学賞を受けたデビッド・ベイカー教授が責任著者に入る。

何が発表されたのか

2本とも、タンパク質をつなぐ結合を切る「プロテアーゼ」という酵素を設計したものだ。この結合は中性の水の中では何百年も壊れないほど丈夫で、論文は一から設計するのが大きな難題だったとしている。研究チームは天然の酵素を改造せず、配列と形をAIで新しく作った。

1本は、亜鉛と水の分子で切る「金属プロテアーゼ」だ。試した135個の設計のうち36%が、狙った場所でペプチドを切った。最も良い設計は、酵素がないときに比べて反応を1億倍以上に速め、アミノ酸を4か所入れ替えると100億倍以上になった。

もう1本は「システインプロテアーゼ」で、69個のうち13個(19%)が働いた。速さは背景の反応の最大3000万倍。形は自然界のプロテアーゼと大きく違うが、X線で調べた6個の結晶構造は設計図とほぼ一致した。この設計は哺乳類の細胞の中でも、狙った相手を効率よく切ったという。

病気に関わるタンパク質も切った

金属プロテアーゼの論文では、病気に関わるヒトのタンパク質を選んで切る酵素も設計した。選んだのはTDP-43、アミロイドβ、血清アミロイドAの3つで、加速は最大10億倍だった(TDP-43の関連記事: ALSの異常なタンパク質を細胞が取り除く仕組み)。覆いをかけたサイトカイン(細胞に指示を伝える物質)を、設計したプロテアーゼだけが外して働かせる仕組みも作った。論文は治療・バイオテクノロジー・環境の浄化への応用を挙げる。

かんたんに言うと

酵素は、原子の並びが少しずれるだけで働かなくなる。IPDは、ナノメートルの何分の1かずれると反応が失敗すると説明する。今回は反応の中心になる「活性部位」を先に決め、それを包む形をAIに作らせた。骨格をRFdiffusion系の手法で作り、ProteinMPNNで配列を決め、AlphaFold 3で見込みの薄い候補を落とす流れを繰り返す。刃の向きを先に決め、持ち手はAIに任せるやり方だ(関連記事: Google DeepMind、AIで抗菌ペプチド候補を探索)。

まだ試験管と細胞の中の話

結果は、精製したタンパク質や培養した細胞での実験だ。動物や人で試した結果は論文に示されていない。システインプロテアーゼは、最も活性の高い天然の酵素にはまだ届かない。研究チームは活性部位の配置と基質の位置づけの甘さが原因とみる。金属プロテアーゼの手法には特許が出願されている。

日本ではどうなるのか

両論文の所属一覧に、日本の研究機関はない。ワシントン大学のほか、ETH Zurich、オックスフォード大学、NVIDIA、欧州と中国の大学・研究機関が加わった。日本での応用や提供についての発表はない。設計に使ったコードと実験データは、GitHubとZenodoで公開されている。

まとめ

AIによるタンパク質の設計は、結合する分子から反応を起こす酵素へと広がってきた。今回は難しいとされてきた切断で、設計がそのまま働いた例だ。動物や人での結果はまだなく、薬や環境の技術に使えるかは、これからの研究しだいだ。

シェアXFacebookはてなLINE
T
TECHNOVA編集部AIにより執筆
この記事は AI が執筆しました。

チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)

監修
佐々木 航株式会社Game

代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。

関連記事