ALSの原因とされる異常なタンパク質、細胞が取り除く新しい仕組みを発見 名古屋大学など
名古屋大学などの研究グループは、筋肉を動かす神経が少しずつ失われる難病ALSで、原因の1つとされる異常なタンパク質「TDP-43」を細胞が分解して取り除く、新しい仕組みを見つけた。この仕組みがうまく働かないことが、異常なタンパク質がたまる理由の1つかもしれないという。
サイエンス- ●ALSで神経の細胞にたまる異常なタンパク質を、取り除く新しい仕組みが見つかった
- ●TBK1というタンパク質が起点になり、免疫の物質IFNβを通じて分解の装置を呼ぶ
- ●この仕組みが新しい治療の標的になる可能性がある
ALSは、今も根本的な治療法が無い難病だ。今回の成果は治療法そのものではないが、病気の仕組みを解き明かし、新しい薬を探す手がかりになりうる。
研究グループは、この仕組みをもとにした新しい治療の考え方につながると期待している。実際の治療に使えるかどうかは、これからの研究しだいだ。
名古屋大学などの研究グループは、筋肉を動かす神経が少しずつ失われる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」で、原因の1つとされる異常なタンパク質を、細胞が分解して取り除く新しい仕組みを見つけた。この仕組みがうまく働かないことが、異常なタンパク質がたまる理由の1つかもしれないという。名古屋大学が2026年10月13日に発表した。
何が分かったのか
ALSは、筋肉の動きを指令する神経の細胞(運動神経細胞)が選んだように失われていく病気だ。重い運動の障害が出て、発症してから生きられる期間は、一般に3〜5年ほどとされる。根本的な治療法はまだ無い。
ALSの患者の多くでは、ふだんは細胞の核の中にある「TDP-43」というタンパク質が、核の外にたまって固まっている。これが神経が失われる中心の原因の1つと考えられているが、なぜ取り除かれずにたまるのかは、よく分かっていなかった。
研究グループが見つけた仕組みは、次のように進む。
- 固まりやすいTDP-43が増えると、「TBK1」というタンパク質がそれとくっついて、働き始める
- 働き始めたTBK1は、免疫に関わる物質「インターフェロンβ(IFNβ)」をつくらせる
- IFNβが、「免疫プロテアソーム」というタンパク質を分解する特別な装置を呼び出す
- この装置が、固まりやすいTDP-43を分解して取り除く
TBK1は、遺伝で起きるALSの原因の遺伝子の1つとして知られていた。これまでは、細胞の中のゴミを片付ける「オートファジー」との関わりが主に考えられてきた。今回、それとは別の取り除き方があることが分かった。
患者の細胞では何が起きていたか
ALSの患者から見つかったTBK1の変異では、IFNβをうまくつくれなかった。患者の脊髄の神経の細胞では、IFNβを受け取る部分(受容体)が減っていた。ALSのモデルのマウスで、TBK1の遺伝子を半分なくすと、分解の装置が呼ばれにくくなり、分解されずにたまったタンパク質が増えた。
研究グループは、神経の培養細胞、ヒトのiPS細胞からつくった運動神経細胞、ALSのモデルのマウス、患者の脊髄の組織などを使って調べた。こうした結果から、この取り除く仕組みがうまく働かないことが、ALSでTDP-43がたまる理由の一端かもしれない、としている。
かんたんに言うと
細胞の中には、壊れたタンパク質を片付ける掃除の係がいる。今回見つかったのは、「異常なタンパク質が増えた」と気づいた見張り役(TBK1)が、合図(IFNβ)を出して、特別な掃除の装置を呼ぶ流れだ。ALSでは、この見張り役や合図の受け取りがうまくいかず、掃除が追いつかないのかもしれない。
日本ではどうなるのか
名古屋大学の研究で、英国のキングス・カレッジ・ロンドンとの共同研究だ。成果は2026年10月5日付で、欧州分子生物学機構の科学誌「EMBO Reports」に載った。治療法として使えるかどうかは、これからの研究しだいだ。
まとめ
名古屋大学などは、ALSの原因とされる異常なタンパク質TDP-43を、細胞が取り除く新しい仕組みを見つけた。この仕組みの不調が、病気の一因かもしれない。根本的な治療法が無いALSで、新しい薬を探す手がかりになる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月14日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。