「火のアメーバ」、63℃でも分裂 核を持つ細胞の生き物の耐熱記録を塗り替えたと報告
米シラキュース大学などの研究チームは、米国の国立公園の温泉の流れで見つけたアメーバが、63℃で分裂して増えると報告した。核を持つ細胞の生き物で、60℃を超えて増えると示された例はこれまで無かったという。論文は学術誌「Cell」に載った。
サイエンス- ●米国の温泉の流れで見つかったアメーバが、63℃で分裂して増えた
- ●核を持つ細胞の生き物で、60℃を超えて増えると示された例は無かった
- ●熱に耐える仕組みの手がかりも報告。ただし多くは予測で、確認はこれから
暮らしにすぐ関わる話ではない。ただ、生き物が耐えられる暑さの「常識」が変わる研究で、熱に強い酵素や素材づくりのヒントになるかもしれない。
論文は次の課題に、温度が上がると細胞の膜がどう変わるかの解明を挙げる。同じ仲間の、熱に強い別の種も見つかる可能性があるとしている。
米シラキュース大学などの研究チームは、カリフォルニア州の温泉の流れで見つけたアメーバが63℃で分裂して増えると報告した。真核生物(細胞の中に核を持つ生き物)で、60℃を超えて増えると示された例は、これまで無かったという。論文は2026年9月22日に学術誌「Cell」に載り、大学は10月1日に発表した。
何が報告されたのか
アメーバは、ラッセン火山国立公園を流れる「ホット・スプリングス・クリーク」の支流で見つかった。研究チームは2023〜2025年に20か所で試料を採り、14か所からこのアメーバを得た。
新しい属と種として「Incendiamoeba cascadensis」と名付けた。「火をつける」という意味のラテン語と、見つかったカスケード山脈から取った名前で、「火のアメーバ」と呼ぶ。
30〜64℃の17の温度で7日間育てると、増えたのは42〜63℃だった。最もよく増えたのは55〜57℃で、64℃では増えなかった。42℃と63℃では、増え方にばらつきがあった。63℃で細胞が2つに分かれる途中の様子も、顕微鏡でとらえたとしている。
動き回れたのは64℃までだった。70℃に5分置くと「シスト」(殻にこもって休む状態)になり、60℃に下げると元に戻った。80℃まで熱すると戻らなかったという。
かんたんに言うと
細菌やアーキア(古細菌)には、もっと熱い場所で増えるものがいる。論文によると、最高はアーキアの一種の122℃だ。ただ、これらは核を持たない、つくりの単純な細胞だ。
アメーバやカビ、植物、動物、人の細胞は核を持つ。中のつくりが複雑で、熱に弱いと考えられてきた。これまでの記録は、一部のカビや紅藻(赤い色の藻の仲間)の60℃とされる。細胞の中の膜がもたないとして、62℃を上限とみる説もあった。
熱に耐える仕組みの手がかり
研究チームは遺伝子も調べた。48℃と61℃で育てて比べた。61℃では、たんぱく質の形を保つ仕組みや、DNAの傷を直す仕組みに関わる遺伝子の働きが高まっていた。たんぱく質の表面には、熱に強い細菌などと同じく、プラスの電気を帯びた部分が多いと予測された。遠い生き物どうしが、似た方法で熱に耐えている可能性があるという。
論文が挙げる限界
このアメーバは、まだ遺伝子を操作できない。そのため、候補の遺伝子の働きを直接は確かめられない。働きの分からない遺伝子も多い。たんぱく質の熱への強さや形は計算による予測で、実験での確認が要る。遺伝子の働きの比較も、2つの温度だけだ。論文は、ほかの熱に強い真核生物も同じ条件で測り直すきっかけになることを期待している。
日本との関わり
論文の著者の所属に、日本の大学や研究機関は入っていない。研究に使った株は、ドイツの微生物の保存機関DSMZに預けられた。同じ仲間とみられる遺伝子は、ニュージーランドや米国のイエローストーン国立公園の地熱地帯のデータでも見つかったという。
まとめ
大学の発表で、生物学者のアンジェラ・オリベリオ氏は「正しいと思っていたことが、そうではなかった」と話した。地球の極端な環境や、ほかの惑星も含め、真核生物がいるかもしれない場所の可能性を広げるという。ただし、論文そのものは地球の外の生命には触れていない。論文と大学は、熱に強いたんぱく質を応用する研究にもつながりうるとしている。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。