授業中のスマホを箱に預けると成績が少し上向く インド1万6千人超の試験、Science掲載
インドの大学など10校で、授業の初めにスマホを箱に預けるクラスと、ふだんどおりのクラスに学生を無作為に分けて比べた。預けたクラスは平均の成績が0.073標準偏差高く、成績が低かった学生ほど伸びが大きかった。学術誌Scienceの論文だ。
サイエンス- ●授業の初めにスマホを箱に預けると、平均の成績が少し上がった
- ●インドの大学など10校の16,683人を、無作為に2組に分けて比べた
- ●成績が低かった学生ほど伸びが大きい。小中高で同じかは未確認
授業中につい画面を見てしまう学生や、子どもの学校のスマホのルールが気になる保護者・先生にとって、ルールを考える材料になる。
研究チームは、小学校から高校での効果を知るにはさらに研究が要るとしている。学校がスマホのルールを決めるときの材料の一つになりそうだ。
米国・インド・デンマークの大学の研究チームが、学術誌「Science」に2026年10月8日、論文を発表した。授業中にスマートフォンを手元から離すと、学生の成績が上がったという内容だ。インドの大学など10校で、16,683人が参加した試験の結果だ。
どんな試験なのか
舞台は、インドのオディシャ州にある大学など高等教育の学校10校だ。学生をグループごとに無作為に2つに分けた。片方は授業の初めにスマホを箱に入れ、もう片方はこれまでどおりスマホを使えるようにした。
このように偶然で組を分ける方法を「ランダム化試験」という。もともとの学生の違いに左右されにくく、スマホを預けたことの効果を比べやすい。研究チームは1学期のあいだ、成績と出席を記録し、アンケートや教室の見回りも行った。著者の投稿によると、教室の数は400を超える。
何が分かったのか
コペンハーゲン大学の発表によると、スマホを預けたクラスは、ふだんどおりのクラスより平均の成績が高かった。差は「0.073標準偏差」だった。もともと成績が低かった学生ほど伸びが大きく、成績の差が縮まる兆しも見られたという。
出席が増えたためだという証拠はなかった。教室では、授業と関係のないおしゃべりや、授業を乱す行動が減った。決まりの対象ではない先生も、授業中に自分のスマホを使う時間が減った。
預けた学生は、スマホの制限に前向きになった。「まったく制限しない」ことへの支持は下がった。Scienceの編集部も、成績の低い学生がいちばん恩恵を受け、成績の高い学生もこのやり方を支持したと要約している。
かんたんに言うと
「標準偏差」は、成績のばらつきの大きさを表す物差しだ。0.073標準偏差は、平均の差としては小さい。ただ大学の発表は、学習を高めるほかの多くの教育の取り組みと同じくらいの大きさだと説明している。研究を率いたウォートン・スクールのアルプ・スング氏は、紹介記事で、手間や費用がほとんどかからない点を挙げている。
スマホが注意を奪い合わなくなると、授業に向ける頭の余裕が増えるのだろう、と研究チームはみている。
気をつけたい点
- 対象: 大学など高等教育の学生で、小学校から高校での効果を知るには、さらに研究が要るとしている
- 範囲: 1つの州で、1学期に行った試験だ。試したのは授業中だけの預かりで、年下の子どもや学校全体の禁止では、社会面での影響が違うかもしれないという
- 不安: 公開前の版の分析では、取り残される不安がやや強まった。一方、幸福感ややる気が下がった証拠は見られなかった
日本の学校ではどうなっているか
日本の学生を対象にした研究ではない。文部科学省は2020年7月31日付の通知で、小学校と中学校では、携帯電話の学校への持ち込みを「原則禁止とすべき」とした。中学校は、学校と生徒・保護者が4つの事項で合意し、必要な環境を整えた場合に限り、持ち込みを認める道も示した。その場合も、校内での使用を禁止したり、登校後に預かって下校時に返したりするよう求めている。高校は、授業中の使用を禁止するなど、校内での使用を制限すべきだとしている。
まとめ
授業の初めにスマホを預けると、平均の成績が少し上がり、成績が低かった学生ほど伸びた。ただし大学での1学期の結果で、子どもの学校に当てはまるかは、まだ分からない。
- Science「Phones impede learning: Evidence from a massive phone-free classroom experiment」(2026年10月8日・394巻6820号)
- コペンハーゲン大学「Phone-free lessons boost marks, major experiment shows」(2026年10月20日)
- Andreas Bjerre-Nielsen「Phone ban study published in Science」(2026年10月8日・著者の投稿)
- Knowledge at Wharton「Can Classroom Cell Phone Bans Boost Grades?」(論文の公開前の版の紹介)
- 文部科学省「学校における携帯電話の取扱い等について(通知)」(令和2年7月31日・国立国会図書館の保存版)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。