火星のマリネリス峡谷、地下の断層がいまも動く可能性 NASA探査機の記録から英米チーム
英インペリアル・カレッジ・ロンドンなどの研究チームは、NASAの探査機インサイトが2021年に記録した火星の揺れが、マリネリス峡谷の地下で断層がずれて起きたとみられると発表した。古い断層がいまも動きうることを示すという。
サイエンス- ●NASAの探査機が2021年に記録した火星の揺れの起き方を調べた
- ●峡谷の地下約20〜40kmで、断層が横にずれて起きたとみられる
- ●数十億年前の断層がいまも動きうると示唆。根拠は1回の揺れだけ
火星の巨大な峡谷が、動きを止めた昔の地形ではない可能性を示す研究だ。運用を終えた探査機のデータから、新しい発見が続いている。
余震は記録されておらず、根拠は1回の揺れだけだ。峡谷の断層がどれくらいの頻度で動くかを知るには、新たな地震の観測が必要になりそうだ。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンは2026年10月15日、火星の巨大な峡谷「マリネリス峡谷」の研究を発表した。地下の断層が、いまも動きうることを示すという。論文は同日、学術誌「Nature Communications」に載った。
何が発表されたのか
研究したのは、同大と米コロンビア大学、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のチームだ。NASAの火星探査機「インサイト」が2021年8月25日に記録した揺れ「S0976a」を調べた。探査機から見て、火星の反対側で起きた揺れだ。インサイトがとらえた火震(火星の地震)で、西半球のものはこれだけだった。
チームは、揺れの波が探査機に届いたときの大きさや向きから、震源で何が起きたかを逆算した。いちばん合う答えは、断層をはさんで岩盤が横向きにずれる「横ずれ断層」の動きだった。場所は峡谷の西部、深さは地下およそ20〜40kmとみられる。
火星は、隕石の衝突や地すべりでも揺れる。チームはこうした説明も試したが、記録された波は再現できなかった。揺れの後の衛星写真にも、新しいクレーターや大きな地すべりの跡は見つからなかった。
かんたんに言うと
マリネリス峡谷は長さ3,900km近く、幅は最大600km、深さは9kmを超える。発表によると、太陽系で最大の峡谷だ。
地球の表面は何枚ものプレート(地面をおおう岩の板)に分かれて動き、断層を作り続けている。火星にはこの仕組みがなく、外側は1枚のふたのように、ゆっくり冷えている。
峡谷の断層は数十億年前にできた。断層を作った地質の動きは、とうに止まっている。論文は、その古い断層が、今の火星にかかる力で再びずれたと解釈する。力の元として挙げるのは3つだ。星が長い時間をかけて冷えること、近くの巨大な火山地帯タルシスの重さ、峡谷が削られて上の重さが減ったことである。
筆頭著者のソン・ジョンフン氏は「これまで、峡谷の断層がいまも動いているかは確かには分かっていなかった」と述べた。峡谷は単なる「死んだ化石の地形」ではないという。
論文が示す限界
- 根拠は1回の揺れで、地震計も探査機の1台だけ。断層の向きには、決めきれない部分が残る
- 揺れの後の衛星写真で調べられたのは、震源とみられる範囲の約半分(51.6%)にとどまる
- 余震は記録されていない。遠くの小さな揺れは探査機に届きにくく、とらえられる見込みは低かったと計算している
日本ではどうなるのか
この研究に日本の機関は加わっていない。論文は誰でも無料で読めるが、英語だけだ。日本では2026年10月20日、JAXAの火星衛星探査機「MMX」が打ち上げられた。今回の研究とは別の計画だ。
まとめ
インサイトは2022年12月15日に運用を終えた。それでも、残した記録から峡谷の地下の動きが見えてきた。発表によると、火震の記録からは、ほかに2つの地域でも断層の動きが分かっている。ケルベロス・フォッサエとエリシウム平原の南部で、型はそれぞれ違う。火星の地殻にかかる力は、場所によって大きく違う可能性があるという。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。