高温超伝導の謎に手がかり 電子のペアをつなぐ「のり」は磁気のゆらぎか 英ブリストル大など
英ブリストル大学などの研究チームは、銅を含む酸化物の高温超伝導で、電子のペアをつなぐ主な「のり」は電子の磁気のゆらぎだとする証拠を英科学誌に報告した。ただし対象は2種類のうち1つで、謎は半分残るという。
サイエンス- ●英ブリストル大などが、高温超伝導の仕組みの手がかりを英科学誌に報告した
- ●電子のペアをつなぐ主な「のり」は、電子の磁気のゆらぎだとする証拠を得た
- ●調べたのは電子を足した種類だけ。より高い温度の種類の謎は残る
超伝導は医療の検査に使う強い磁石や、効率のよい送電に役立つ。その根っこの仕組みに迫る基礎研究で、すぐ暮らしが変わる話ではない。
研究チームは、より高い温度で超伝導になる種類には、まだ見つかっていない2つ目の要素があるとみる。次はそれを探すという。
英国のブリストル大学などの研究チームは、高温超伝導の仕組みに迫る研究を発表した。論文は2026年10月19日に英科学誌「Nature Physics」の電子版に載り、大学は20日に発表した。
何が分かったのか
超伝導は、物を冷やしたとき、ある温度より下で電気抵抗がゼロになる現象だ。その境目の温度を「臨界温度」と呼ぶ。銅を含む酸化物の一部は、ふつうの超伝導体より高い温度で超伝導になり、高温超伝導体と呼ばれる。なぜそうなるのかは、何十年も謎だった。
チームが調べたのは「ランタン・セリウム・銅酸化物」だ。ランタンと銅の酸化物で、ランタンの一部をセリウムに置き換えて電子を足すと、超伝導になる。
論文によると、この物質で電気抵抗を生む主な原因は、電子が「スピンのゆらぎ」にぶつかることだった。そして、ぶつかり方の強さと臨界温度が、そろって変わっていた。論文はこれを、電子のペアをつなぐ主な「のり」がスピンのゆらぎであることを示す証拠としている。
かんたんに言うと
超伝導では、電子が2つずつ結び付き、エネルギーを失わずに電気を運ぶ。結び付けるには「のり」が要る。ふつうの超伝導体では、物質をつくる原子の振動がのりになる。
高温超伝導では、これより速く揺れるものが候補とされ、電子そのものが有力視されてきた。電子は、こまのように回って小さな磁石になる性質(スピン)と、電気を持つ。どちらもゆらぐ。
のりの手がかりは、電気抵抗に表れると考えられてきた。チームは基板の上に原子の層を1層ずつ重ね、端から端へ臨界温度がなめらかに変わる薄い膜を作った。臨界温度は最大で約25K(マイナス248度ほど)で、「高温」でもとても冷たい。膜に電極を並べ、論文によると19通りの組成で抵抗を測った。強い磁場をかけたときの抵抗の変わり方も、オランダの施設で調べた。
調べた範囲では、電子を足すほど臨界温度は下がり、ゆらぎへのぶつかり方も約10分の1まで弱まった。
論文が言う限界
大学の発表は、解けたのは謎の半分だとする。銅の酸化物を超伝導にするには、電子を足す方法と、電子を抜く方法がある。本当に高い臨界温度は、電子を抜いた側にしかない。
論文は、電子を抜いた側の高い臨界温度は、スピンのゆらぎとの結び付きが強いだけでは説明できないと示唆する。研究を共同で率いたナイジェル・ハッシー教授は「2つ目の、欠けている要素があるはずだ」と話す。また今回の結論は、測った値を計算のモデルに当てはめた分析にもとづく。抵抗のふるまいの一部には、まだ説明できない点も残るという。
実用への影響と日本との関係
大学の発表は、超伝導の用途として、高精細な医療の画像検査に使う強い磁石、効率のよい送電、とても感度の高い測定器を挙げる。ただし今回は仕組みを調べる基礎研究だ。論文も大学も、新しい物質や製品にいつつながるかは述べていない。
論文の著者の所属は英国・オランダ・フランス・中国・米国の大学や研究機関で、日本の機関は入っていない。日本での実用化などの予定も発表されていない。
まとめ
今回の研究は、高温超伝導のうち電子を足した種類で、電子をつなぐ「のり」の正体に迫った。より高い温度で起きる種類の仕組みは、まだ分かっていない。ハッシー教授は、2つ目の要素を探すことが次の課題だとしている。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。