アルツハイマー病のリスク遺伝子APOE4、神経を包む「さや」づくりを邪魔する仕組み
アルツハイマー病の最大の遺伝的なリスクとされるAPOE4は、神経を包む脂肪のさやづくりを邪魔する。MITの研究チームがその仕組みを突き止め、マウスではさやを増やせた。人で効くかはまだ分からない。
サイエンス- ●APOE4は、神経を包む脂肪の「さや」づくりを邪魔する
- ●細胞の中の合図「Wnt」が弱まり、脂肪が粒になってたまる
- ●合図を戻すとマウスでさやが増えた。人では未確認
家族にアルツハイマー病の人がいると、遺伝の話は気になる。今回は細胞とマウスまでの研究で、すぐに使える治療や検査が出てくる話ではない。
研究チームは、GSK3bとタウというたんぱく質の変化との関わりも調べるという。APOE4を持つ人に向けた薬を探す手がかりになりそうだ。
もの忘れが増えた親を見て、自分もいずれ、と考える人は多いだろう。アルツハイマー病のなりやすさには、遺伝子も関わる。なかでも影響が大きいのが、APOE4という型だ。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、APOE4が脳の中でどう悪さをするのか、その仕組みを突き止めた。成果は10月15日、学術誌「Cell Stem Cell」に載った。人の細胞とマウスの実験で、邪魔された働きを取り戻せることも示した。
神経を包む「さや」がうまく作れない
舞台は、脳の細胞のオリゴデンドロサイトだ。神経細胞から伸びる長い突起に、脂肪でできたさや「ミエリン」を巻きつける。電線をおおうビニールのように、電気の信号を速く伝える役目がある。
研究チームは2022年、APOE4を持つこの細胞では脂肪が粒になってたまり、さやづくりが乱れると報告していた。ただ、粒がたまる理由はいくつも考えられた。
そこで今回、APOE4を持つ人の細胞で、たんぱく質を作る遺伝子を一つずつ働かなくし、粒の増え減りを調べた。遺伝子を書き換える技術「CRISPR(クリスパー)」を使った方法だ。APOE4とAPOE3の人の、亡くなった後の脳の試料も比べた。どちらの結果も、細胞の中で働く合図「Wnt(ウィント)」の通り道を指していた。
APOE4を持つ細胞では、この合図を強めるたんぱく質が少なく、弱めるたんぱく質「GSK3b」が多すぎた。合図が弱いと、細胞は脂肪をさやに使えず、粒としてため込んでしまう。
マウスでは、さやが増えた
研究チームは、GSK3bの働きを抑える化学物質を試した。APOE4の細胞では、脂肪の粒が減った。神経細胞と一緒に育てた小さな脳のような組織では、さやが増え、神経の突起もよく伸びた。
最後に、APOE4を持ち、アルツハイマー病で起きるタウというたんぱく質の異常を再現したマウスに、この物質を与えた。記憶に関わる脳の「海馬」で脂肪の粒が減り、さやも増えた。
とはいえ、これは細胞とマウスで、考え方が正しいかを確かめた段階だ。もの忘れが良くなったかは、発表には書かれていない。人で効くか、安全かも、まだ確かめられていない。
研究チームは今後、GSK3bとタウの異常との関わりも調べる。脳の「配線」を守る薬の手がかりになるかは、これからの研究しだいだろう。
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代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。