恒星間彗星3I/ATLAS、太陽の熱で表面が数m削られたと推定 米大学の論文
米ミシガン州立大学の研究者は、太陽系の外から来た彗星3I/ATLASが、太陽に近づいた間に表面を少なくとも約1.7〜5.2m失ったと見積もった。ちりも含めると10mを超える可能性がある。論文は、観測をつないだ概算で下限の値だとしている。
サイエンス- ●太陽系の外から来た彗星が、太陽の熱でどれだけ削れたかを見積もった
- ●ガスだけで表面が約1.7〜5.2m、ちりも含めると10m超削れた可能性
- ●観測をつないだ概算で、論文自身が「下限の値」と断っている
ほかの星のまわりで生まれた材料を、近くで調べられる数少ない機会だ。太陽系の外の惑星がどうできるのかを知る手がかりになる。
論文は英国の天文学の学術誌に載る予定だ。太陽に近づく前と後の観測を比べ、削れた下の層の中身に迫る研究が続きそうだ。
米ミシガン州立大学の研究者2人が、太陽系の外から来た彗星「3I/ATLAS」の表面がどれだけ削れたかを見積もった。ガスの放出だけで約1.71〜5.24m、ちりも含めると10mを超える可能性があるという。論文の最新版は2026年10月12日に公開サイト「arXiv」に載り、英国王立天文学会の学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」への掲載が決まっている。
3I/ATLASとは
NASAによると、3I/ATLASは2025年7月1日、観測網「ATLAS」のチリの望遠鏡が見つけた。太陽系の外から来た天体としては、2017年のオウムアムア、2019年のボリソフ彗星に続く3つ目だ。2025年10月30日ごろ、火星の軌道の少し内側で太陽に最も近づいた。
何を調べたのか
彗星は氷とちりのかたまりで、太陽に温められると氷がガスになって飛び出す。研究者は、世界の観測チームが報告したガスの出る量を、太陽に近づく前後にわたってすべて集め、表にした。水や一酸化炭素など成分ごとに、失った重さを足し合わせた。
そのうえで、彗星の本体(核)を球とみなし、重さの減り方を半径の縮みに直した。核の半径は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測から別のチームが見積もった約1.3km、密度は一般的な彗星の値とした。
見積もりの結果
ガスだけで失った重さは100億kgほど、もとの重さの約0.40〜1.25%にあたる。表面は約1.71〜5.24m削れた計算だ。
ガスと一緒に出るちりも足すと、深さは増える。ちりの重さをガスの1〜4倍とすると、10mを超える深さまで削れうる。4倍では約8.59〜26.65mになった。
かんたんに言うと
3I/ATLASは、数十億年かけて星の間を旅してきたとみられる。その間に宇宙線(宇宙を飛び交う高エネルギーの粒子)を浴び、表面の氷の中身が変わった可能性がある。ベルギー王立宇宙高層大気研究所は2025年11月、変わった層は深さ約15〜20mに及ぶとの見積もりを発表している。
日焼けした皮の下に、元の肌が残っているようなものだ。皮がどこまでむけたかが分かれば、観測したガスが「旅で変わった表面」と「生まれたままの中身」のどちらから来たかを考える手がかりになる。ガスだけの見積もりは、深い層までは削れにくいとした先の研究の見積もりと合う。論文は、ちりも含めれば手つかずの層まで削れた可能性があるとしている。
論文が示す限界
- 観測は飛び飛びで、望遠鏡や計算の方法もばらばらだ。見つかっていない成分は数えておらず、値は概算で「下限」だとしている
- 結果は核の大きさや密度、ちりの割合の仮定で大きく変わる。ちりも含めて6〜70m削れたとする別の研究もある
日本ではどうなるのか
この研究に日本の機関は加わっていない。日本では京都産業大学の新中善晴氏らが、すばる望遠鏡で3I/ATLASを観測した。太陽に最も近づいた後の2026年1月7日(世界時)の観測で、水に対する二酸化炭素の比は約0.3〜2.1と見積もった。近づく前に報告された、二酸化炭素がとても多い状態とは違う値だ。今回の論文も、この結果を引いている。
まとめ
3I/ATLASは、太陽の熱で少なくとも数mの表面を失ったとみられる。論文は、太陽の近くに長くとどまる恒星間天体や、もっと小さな天体なら、深い層を観測できるかもしれないとしている。
- Frincke, Seligman(米ミシガン州立大学)「Assessment of the Mass Loss and Radius Change of 3I/ATLAS Based on Observed Production Rates」(arXiv・第3版 2026年10月12日・MNRAS 掲載決定)
- NASA「Comet 3I/ATLAS」
- Hui ほか「Nucleus and Postperihelion Activity of Interstellar Object 3I/ATLAS Observed by Hubble Space Telescope」(arXiv・ApJL 掲載決定)
- ベルギー王立宇宙高層大気研究所(BIRA-IASB)「3I/ATLAS: An interstellar comet hiding its secrets beneath an irradiated crust」(2025年11月13日)
- 京都産業大学「恒星間空間からきた彗星の太陽接近前後の変化を捉えた!~すばる望遠鏡がとらえた3I/ATLASのCO2/H2O比~」(2026年4月15日)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。