早稲田大学、緊急事態宣言後の精神科受診を分析 若者で増加傾向が加速
早稲田大学の研究班が、全国の精神科医療の利用動向を分析した。最初の緊急事態宣言後、外来受診の増加傾向の変化は20~24歳で最も大きかったという。ただし、宣言の影響だけで変化を説明することはできないとしている。
サイエンス- ●早稲田大学が全国の精神科医療の利用動向を分析
- ●研究班によると、受診の増加傾向の変化は20~24歳で最大
- ●研究班は、緊急事態宣言の影響だけでは説明できないとした
若者本人や家族にとって、精神科医療の利用が社会環境とともにどう変わったかを知る研究だ。
年齢・地域別の利用動向を追うことが、今後の危機に備えた医療体制の検討につながる可能性がある。
早稲田大学の可知悠子准教授らが、緊急事態宣言前後の精神科医療の利用動向を分析した。研究成果は2026年10月17日にJournal of Epidemiologyに掲載された。
若者で外来受診の増加傾向が加速
研究班によると、宣言後は15~39歳と60~69歳で、精神科外来受診の増加傾向が加速した。その変化が最も大きかったのは20~24歳だった。宣言の実施期間が長い地域ほど、外来受診の増加が大きい傾向もあったという。
一方、精神科入院は、多くの年齢層・地域で減少した。ただし、25~69歳の多くの地域では、外来の増加幅が入院の減少幅を上回った。
研究班は、入院から外来への移行だけでは説明しにくいとした。精神科医療全体の利用増加を示唆する結果だとしている。
かんたんに言うと、受診の「坂の傾き」を比べた
分析対象は2013年4月から2024年4月までの約11年間だ。厚生労働省のNDBに由来する公開集計データを使った。NDBは、日本全国の医療保険診療のレセプト情報などを集めたデータベースだ。レセプトとは、診療費を請求するための明細を指す。
比べたのは、2020年4~5月の最初の緊急事態宣言前後だ。「分割時系列解析」という、出来事の前後で長期的な傾向の変化を調べる方法を用いた。
たとえるなら、受診の推移を坂道に見立て、その傾きが途中からどう変わったかを見る方法だ。単に宣言前後の受診数を比べるのではなく、増減の傾向の変化に注目している。
さらに都道府県を、宣言の実施期間に基づく「実施強度」で3群に分けた。低い地域は最初の宣言のみ、中・高の地域は追加の宣言期間の長さで区分した。
宣言だけが原因とは判断できない
この結果は、宣言が受診増加の原因だと示したものではない。研究班も、観察された変化を宣言の影響だけでは説明できないとしている。
同時期には学校休業や雇用・経済状況、医療提供体制の変化もあった。研究班は、宣言期間の長い地域に多い大都市圏の医療体制なども、結果に影響した可能性を挙げた。
また、公開集計データを用いたため、性別などによる違いは検討できなかった。
まとめ
今回の研究は、宣言後の精神科医療の利用に年齢・地域差があったことを示した。なぜ差が生じたかは、社会環境や医療体制の変化も含めて検討する課題として残る。
研究班は、今後の危機に備え、年齢・地域別の利用を継続して把握する必要性を指摘した。こうした把握が、必要な医療体制を考える手がかりになる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月20日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。