温暖化なのにチベット高原の凍土で氷が増えた 降水6割増で、ただし一時的
チベット高原の永久凍土の約35%で、温暖化のなか地下の氷が増えていた。北京大学などのチームによると、偏西風が運ぶ雨と雪が増え、地下の深い層で凍り直したためだ。チームは、この氷は一時的なものとみている。
サイエンス- ●チベット高原の永久凍土の約35%で、地下の氷が増えていた
- ●偏西風が運ぶ雨と雪が約6割増え、しみこんだ水が深い層で凍り直した
- ●地温は上がり続けており、チームは増えた氷を一時的なものとみる
チベット高原は、下流の約20億人に水を送るアジアの給水塔だ。そこで氷が増えても、温暖化の影響が消えたわけではない。
温暖化が続けば、増えた氷もいずれ減る側に転じるとチームはみる。氷の変化を追う観測網を広げるよう提言した。
地球が暖まれば、凍った地面の氷は溶けて減っていく。そう考えるのが自然だろう。ところが、温暖化が進むチベット高原では、永久凍土の約35%で、地下の氷がかえって増えていた。
北京大学やドイツのアルフレッド・ウェゲナー研究所などの研究チームが、学術誌「Science Advances」に2026年7月23日付で発表した。北京大学は10月19日にこの成果を紹介し、現象を「凍土異常」と呼んでいる。もっとも、温暖化の心配が減ったという話ではない。チーム自身が、この氷は長続きしないとみている。
氷が増えたのは活動層の底
永久凍土は、2年以上続けて0℃以下のままの地面をいう。その上には、夏に溶けて冬にまた凍る「活動層」が載っている。氷が増えていたのは、この活動層のいちばん下だった。
手がかりは、高原で掘った369本のボーリング調査の記録だ。2000年より後に掘った175本では、土の体積に占める氷が平均25%で、それより前の194本の16%を上回った。土1リットルあたりに直すと、氷が160ミリリットルから250ミリリットルに増えた計算になる。場所の違いが混じらないよう、2kmほどの範囲で隣り合う4組を比べても、氷は増えていた。とくに目立ったのは、浅いところより活動層の底だ。
では、なぜ増えたのか。2000年以降、偏西風が強まり、地中海やイラン高原の方から湿った空気を運ぶようになった。氷が増えた地域の年間の降水量は、2000年より前の227.5mmから後の364.8mmへと約60%増えた。夏に溶けた活動層に雨や雪どけ水がしみこみ、冬にまた凍る。底のほうは凍っている期間が長く、氷が溶けきらずに年を越して積み重なっていく。チームが降水量だけを2000年より前の水準に据え置いて計算し直すと、多くの地域で氷は減る向きに変わった。
地面は温まり続けている
高原全体で見れば、温暖化ははっきり進んでいる。気温の上昇は10年あたり0.35℃。世界平均の2倍の速さだ。地中の温度も高原全体で上がり、モンスーンの影響が強い南東部では、予想どおり氷が減っている。それでも1979〜2018年の計算では、地下3.2mまでの氷は偏西風の地域で144立方キロメートル増え、高原の永久凍土全体でも差し引きで増えた。
チームはこの現象を「持続的な地下氷の形成ではなく、一時的な氷の蓄積」と書く。比較的暖かい高原の中央部では、ため込んだ氷がすでに溶け始めた。温暖化が続けば地温が0℃を超え、氷は増えなくなるという。論文が引く予測では、高原の永久凍土の多くは2050年まで残るものの、2100年までに44〜71%が劣化するおそれがある。
しかも、増えた氷には別の心配もある。水は凍ると体積が増えるため、氷の多い地面は冬に持ち上がり、夏に沈む動きが大きくなる。人工衛星で測ると、季節ごとに地面が上下する幅は、氷が増えた地域で18mmと、ほかの永久凍土の14mmより大きかった。チームは、建物や道路、橋の補修が増えるおそれがあるとみる。記録を取った穴の多くは、青蔵鉄道の沿線にある。
研究は中国とドイツの機関によるもので、日本の研究機関は加わっていない。チームは、雨や雪が増えているアラスカやシベリアでも、同じことが起きうると考えている。氷が増えたという見出しの裏で、地面は温まり続けている。増えた氷が減り始めたとき、地面がどう動くのか。次に見るべきはそこだろう。
編集部が確認:。確認した監修者は、この下に載せています。
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。