1500℃を超えても固体のままの「超イオン氷」、3つ目の形を実験で確認 天王星と海王星の奥にあるかもしれない氷
フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)などの研究チームは、ごく少しの水を約200万気圧まで押しつぶしながらレーザーで熱し、酸素の原子が「六方最密」という並び方をした超イオン氷を、初めて実験で確かめた。約1800K(およそ1500℃)を超える熱さでも固体のままの氷で、超イオン氷の形としては3つ目になる。論文は2026年9月に米国物理学会の学術誌に載った。
サイエンス- ●CEAなどのチームが、水をダイヤモンドではさんで最大229ギガパスカル(約230万気圧)まで押しつぶし、レーザーで最高2630Kまで熱して、氷の結晶の形をX線で調べた
- ●約1800K(およそ1500℃)を超える熱さで、酸素の原子が「六方最密」に並んだ超イオン氷が現れた。超イオン氷の形として3つ目になる
- ●超イオン氷は、天王星と海王星の奥にあり、ゆがんだ磁場のもとになっていると考えられている。新しい形が分かったことで、惑星の中の様子を考えるモデルに組み込める
暮らしにすぐ関わる話ではないが、水という身近な物質が、圧力と温度しだいでまったく違う顔を見せることが分かる研究だ。太陽系の外にある、天王星や海王星に似た惑星を考える手がかりにもなる。
研究チームは今後、どの圧力と温度でどの形が安定するかの境目を細かく調べ、新しい形が溶けるときのふるまいも確かめるという。音の速さを測る方法で、陽子が動き回っている証拠をより直接つかむことも目指している。
フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)などの研究チームは、ごく少しの水を約200万気圧まで押しつぶしながらレーザーで熱し、酸素の原子が「六方最密(ろっぽうさいみつ)」という並び方をした「超イオン氷」を、初めて実験で確かめた。約1800K(ケルビン、およそ1500℃)を超える熱さでも固体のままの氷で、超イオン氷の形としては3つ目になる。論文は2026年9月9日、米国物理学会の学術誌「Physical Review Letters」に載った。編集部の推薦論文に選ばれ、学会の解説誌Physics Magazineでも紹介された。
超イオン氷とは
ふだんの氷は、水を冷やして固めたものだ。ところが、水を数十万〜数百万気圧という強い力で押しつぶすと、熱くても溶けない特別な氷ができると考えられている。
Physics Worldによると、この氷の中では、酸素の原子が規則正しく並んで固体の骨組みを作り、そのすき間を、水素の原子核(陽子)が液体のように動き回る。理論では、電気を運ぶ陽子が自由に動くため、金属に近いほどよく電気を通すと見積もられている。固体と液体が1つの物質の中に同居しているような状態で、これが「超イオン氷」だ。
何をしたのか
研究チームは、2つのダイヤモンドの先で試料をはさんで押しつぶす「ダイヤモンドアンビルセル」という装置を使った。押しつぶしながらレーザーで熱し、フランスのグルノーブルにある欧州シンクロトロン放射光施設(ESRF)の強いX線を当てて、氷の結晶の形を調べた。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調べたもの | ごく純粋な水 |
| 圧力 | 80〜229ギガパスカル(約80万〜230万気圧) |
| 温度 | 300〜2630K(およそ27〜2360℃) |
| 試料の大きさ | 押しつぶされて直径12マイクロメートル(髪の毛の太さの数分の1)ほど |
| 使った施設 | 欧州シンクロトロン放射光施設(ESRF) |
| 研究したところ | CEA、ソルボンヌ大学、ESRFなど |
何が分かったのか
論文の要旨によると、200ギガパスカル(約200万気圧)、1800Kを超えると、超イオン氷の状態に入るのにあわせて、六方最密の形がおもな形になった。熱でふくらむ度合いが変わったことが、超イオン氷に入った証拠になったという。
130〜200ギガパスカルの範囲では、これまでに見つかっていた「面心立方」という形の超イオン氷と、新しい六方最密の形が混ざって現れた。圧力が上がるにつれて、面心立方から六方最密へと移っていくとみられる。Physics Worldによると、これで超イオン氷の形は、体心立方、面心立方、六方最密の3つになった。
六方最密と面心立方は、どちらも玉をいちばんすき間なく積む並べ方だ。玉を平らに並べた層を積み重ねるとき、3段目を1段目の真上に置くか、少しずらして置くかで、2つの形が分かれる。同じ玉の積み方でも、置き方の小さな違いで別の結晶になる(TECHNOVAの見方)。
天王星と海王星との関係
1986年に探査機ボイジャー2号が天王星のそばを通り、地球とは違う、ゆがんだ磁場を見つけた。磁場の中心は星の中心から大きくずれ、向きも自転の軸から大きく傾いていた。3年後には、海王星の磁場も似ていることが分かった。
地球の磁場は、中心の核で溶けた鉄が動くことで生まれる。一方、天王星と海王星の磁場は、星の奥にある、電気をよく通す超イオン氷の層から生まれているという説が有力だ。研究チームのForestier氏はPhysics Worldに、新しい形は面心立方の形と同時に存在でき、圧力の高いところでより安定になるので、氷の巨大惑星の内側の深い層にある可能性が高いと話している。
新しい形は、面心立方の形とは硬さや電気の通し方が違う可能性がある。惑星の中の様子を考えるモデルに組み込むことで、天王星や海王星、太陽系の外にある似た惑星の理解が進むとみられる。
かんたんに言うと
水を、地球の奥よりも強い力で押しつぶしながら、1500℃を超えるまで熱すると、熱いのに固体のままの不思議な氷ができる。その氷の中で、酸素の原子が新しい並び方をしているのを、フランスのチームが初めて実験で確かめた。天王星や海王星の奥にも、この氷があるかもしれない。
日本では
日本の暮らしにすぐ関わる発表ではない。日本語では、科学のニュースサイトのナゾロジーが10月22日に「第3の熱い氷」として紹介している。論文の原稿は、誰でも読める論文の公開サイトのarXivで読める。
まとめ
CEAなどの研究チームは、水を約200万気圧まで押しつぶし、1800K(およそ1500℃)を超えるまで熱して、六方最密の形をした超イオン氷を初めて実験で確かめた。超イオン氷の形としては3つ目だ。天王星と海王星のゆがんだ磁場のもとと考えられている氷の層を知る手がかりになる。
- Physical Review Letters「Observation of Hexagonal Close-Packed Water Ice at Conditions in Ice Giant Planetary Interiors」(Forestierほか・2026年9月9日)
- 米国物理学会 Physics Magazine「Making Uranian and Neptunian Ice on Earth」(2026年9月9日)
- arXiv「Observation of Hexagonal Close-Packed Water Ice at Extreme Pressures and Temperatures」(論文の原稿・2025年10月28日に初版)
- Physics World「New type of superionic water ice observed for the first time」(2026年10月16日)
- ナゾロジー「1500℃でも溶けない「第3の熱い氷」を発見」(2026年10月22日)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。