住民が届け出た1つの石から、ラムセス2世の巨像の発見へ 頭部だけで1.6m、元は8.5mか
エジプト観光・考古省は10月14日、ナイル川デルタの村でラムセス2世の巨大な像の頭部などが見つかったと発表した。住民が自分の土地で文字を刻んだ石を見つけ、届け出たのがきっかけ。頭部は高さ約1.60mで、元の像は約8.5mあった可能性がある。
サイエンス- ●住民が文字の刻まれた石を届け出て、発掘で王の像2体の一部が出てきた
- ●1体目はラムセス2世の頭部で高さ約1.60m。元は台座を含め約8.5mか
- ●2体目も同じ王とみられるが未確定。発掘と調査は今も続いている
庭や畑から古いものが出てきたら、日本でも警察や文化庁へ届け出る決まりがある。エジプトの大きな発見も、1人の住民の連絡から始まった。
省は発掘を続け、見つかったものどうしの関係や、遺跡との結びつきを調べる。近くのイシス神殿は、建て直しの計画づくりが始まる。
高さ約1.60メートル。ナイル川デルタの村で見つかった、古代エジプトの王ラムセス2世の像は、頭部だけで大人の背丈ほどある。エジプト観光・考古省が2026年10月14日に発表した。村の名前はベフベイト・エル・ハガル(Behbeit El-Hagar)で、発見のきっかけは、住民が自宅前の自分の土地で見つけた、文字を刻んだ石だった。
1本の届け出から始まった発掘
省の発表によると、住民は土地で作業をしている最中に、文字を刻んだ石の塊を見つけた。すぐに地元の考古査察局へ知らせ、駆けつけた担当者が、古代の遺物だと確かめた。
その後、最高考古評議会(SCA)が委員会と専門のチームを作り、救済発掘を始めた。救済発掘は、見つかった遺物を守るために急いで行う発掘のことだ。発掘を進めると、2体の王の像の一部と、文字を刻んだ花崗岩の石が出てきた。
シェリフ・ファトヒ観光・考古相は14日に村を訪れ、届け出たハーレド・エル・シャハート・ハリールさんを表彰した。すぐに知らせた誠実さをたたえ、本人と妻に表彰状と、メッカへの小巡礼(ウムラ)の旅を贈った。
2体の像と、王の称号を刻んだ石
見つかったのは、像が2体分と、文字を刻んだ石が1つだ。
| 見つかったもの | 大きさ | 特徴 |
|---|---|---|
| 1体目の像の頭部 | 高さ約1.60m | 上下エジプトの統一を表す二重冠をかぶる。背中の柱の上部も見つかり、王のホルス名(王の正式な名前の1つ)「ホル・カー・ナクト・メリー・マアト」の文字がある |
| 2体目の像 | 約2.40m(像の大部分) | 脚と台座がない。王の頭巾「ネメス」をかぶり、上部の一部が欠けている。頭部の顔はよく残り、1体目と似ている |
| ピンク色の花崗岩の石 | 長さ約1.30m | 2体目の約1m北にあった。「上下エジプトの王」「ラーの息子」という、ラムセス2世の2つの称号の文字が残る |
2体目について、省の発表は「同じ王のものとみられる」という書き方で、まだ確定していない。像そのものの石材について、発表は触れていない。
元の高さ8.5mは、3階建てほど
最高考古評議会のヒシャム・エル・レイシー事務局長は、頭部の大きさから、元の像は台座を含めて約8.5mあった可能性があるとしている。
8.5mは、頭部の高さ1.60mの5倍を超える。建物の1階分を約3mとすると、3階建ての屋根に近い。大人の背丈ほどの頭を載せた像が、それだけの高さで立っていた計算になる。
王の時代から800年以上あとの神殿のそば
ラムセス2世は、新王国時代の第19王朝(紀元前1295年ごろ〜紀元前1186年ごろ)の王で、今から3,200年以上前の人物だ。省の遺跡案内のサイトは、エジプトの建造物にほかのどの王よりも大きな足跡を残した王と紹介している。
一方、この村で知られているのは、女神イシスをまつった神殿の跡だ。神殿はサマンヌードの町の北西約10kmにあり、広さは約2万平方メートルある。省は、神殿の年代を末期王朝時代、とくにネクタネボ1世(在位は紀元前380〜紀元前362年)のころとし、もっと古い起源を示す跡もあるとしている。ラムセス2世が生きた時代と神殿の時代は、少なくとも800年ほど離れている。
省は発掘を続け、見つかったものどうしの関係や、この場所との関係を調べるとしている。
神殿の建て直しも検討へ
大臣は同じ日、ガルビーヤ県の知事とイシス神殿も視察した。これまでの調べでは、神殿の石材はそろっていて、建て直しを検討できるという。大臣は、工程や費用の見積もりを含めた整備と再建の計画をまとめるよう指示した。
大臣は、この地域にさらに重要な遺物が眠っている可能性を示す手がかりがあるとして、発掘に一段と力を入れる考えも示した。見つかった像をいつ、どこで公開するかについて、発表は触れていない。
日本で土の中から見つけたら
日本にも、土地から古いものが出てきたときの決まりがある。遺失物法は、土の中から見つけた物を「埋蔵物」とし、見つけた人は持ち主に返すか、警察署長に提出する。文化財と認められれば、警察署長から都道府県などの教育委員会へ渡る(文化財保護法101条)。
貝塚や住居跡、古墳など、遺跡と認められるものを土地の所有者が見つけたときは、そのままの状態で、遅滞なく文化庁長官に届け出る(同96条)。ベフベイト・エル・ハガルの発見も、土地の持ち主がまず知らせたところから始まった。
- エジプト観光・考古省「ガルビーヤ県ベフベイト・エル・ハガル村、さらに考古学の秘密を明かす」(アラビア語・2026年10月14日)
- エジプト観光・考古省「大臣がガルビーヤ県へ、石の発見を届け出たハーレド・エル・シャハート・ハリールさんを表彰」(アラビア語・2026年10月14日)
- エジプト観光・考古省「観光・考古相とガルビーヤ県知事、ベフベイト・エル・ハガル神殿を視察し、整備と再建を検討」(アラビア語・2026年10月14日)
- エジプト観光・考古省 Egypt's Monuments「New Kingdom」
- エジプト観光・考古省 Egypt's Monuments「Late Period」
- e-Gov法令検索「文化財保護法」
- e-Gov法令検索「遺失物法」
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月25日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。