台風から1,000km離れた伊豆諸島に記録的大雨、なぜ 直径2,500kmの巨大な渦「モンスーンジャイア」を航空機で3日連続観測
9月上旬、日本の南の海に直径2,500km以上の巨大な反時計回りの渦「モンスーンジャイア」ができた。気象研究所・名古屋大学・横浜国立大学は、その中を航空機で3日連続で観測した。渦が運んだ大量の水蒸気が伊豆諸島北部の記録的大雨の一因となり、台風第24号の珍しい進路にも影響した可能性があるという。
サイエンス- ●日本の南に、台風の2倍以上の大きさの渦「モンスーンジャイア」ができ、航空機で3日連続観測した
- ●渦の中心から約1,000km離れた所に強風域があり、水蒸気を運ぶ「大気の川」になっていた
- ●伊豆諸島北部の記録的大雨の一因や、台風第24号が南へ回り込んだ進路に関わった可能性
台風が遠くにあるのに大雨になる。そんな場面の裏には、こうした大きな渦が関わることもある。台風の位置だけを見て安心せず、気象庁の大雨や線状降水帯の情報も合わせて確かめたい。
今回の発表は速報で、内容が後で直されることもあるとしている。3者は観測データの詳しい解析と数値シミュレーションを続け、渦と大雨の関係を調べる。
2026年9月6日から7日、伊豆諸島北部で、24時間の降水量が観測史上1位(当時)を記録した。このころ、台風第24号は1,000km以上離れた南西諸島の近くにいた。本州の南岸には秋雨前線もあったが、台風と前線だけでは、ここまでの雨の説明がつかなかった。
気象研究所・名古屋大学・横浜国立大学が手がかりにしたのは、日本の南の海にできていた、もっと大きな渦だった。3者は10月23日、その渦の中を航空機で観測した結果を速報として発表した。
台風の2倍以上の大きさの渦
9月4日から8日にかけて、日本の南の海に、直径2,500km以上の反時計回りの風の流れができた。台風の直径は1,000km程度なので、2倍を大きく超える。研究チームはこれを「モンスーンジャイア」と呼んでいる。
モンスーンジャイアは、夏(7〜10月ごろ)の北西太平洋に現れ、数日から2週間ほど続く大きな渦だ。中で台風が生まれやすいことは知られていた。ただ、定義が研究者によって違い、中の構造や水蒸気の分布、日本の大雨との関わりは、よく分かっていなかった。
3日続けて、渦の中に観測機器を落とす
研究チームは9月5日から7日まで、航空機から「ドロップゾンデ」を落として観測した。ドロップゾンデは、パラシュートで落ちながら気圧・気温・湿度・風を測り、データを送る観測機器だ。モンスーンジャイアの中を直接観測した例はほとんどなく、3日連続の航空機観測は世界初の試みだという。
分かった渦の姿は次のとおりだ。
- 中は周りより気圧が低く、中心近くは地上近くから上空まで風が弱かった
- 中心から約1,000km離れた所に強風域があり、その内側は周りより暖かかった(暖気核)。大きさは違うが、台風などの熱帯低気圧と同じ特徴だ
- 中は広く晴れていたのに、上空の中・下層はとても湿っていて、大量の水蒸気を含んでいた
- 大きな渦の中に、台風第24号や、いくつかの小さな熱帯低気圧が入り込んでいた
謎を解く「大気の川」
伊豆諸島の大雨と結びついたのは、渦の強風域だった。強風域は、水蒸気を帯のように遠くまで運ぶ「大気の川」になっていた。特に9月6日は、前後の日に比べて、中心から約1,000km東の、東西約300kmの範囲で、運ばれる水蒸気の量が大きく増えていた。
この大量の水蒸気が、伊豆諸島の近くに止まっていた秋雨前線に流れ込み続け、雨が強まった。研究チームは、これが記録的大雨の一因と考えられるとしている。9月8日に東海地方で発生した線状降水帯にも、渦に伴う水蒸気の流れ込みが影響した可能性があるという。
台風第24号が南へ回り込んだわけ
台風第24号は、ふつうなら北へ進むところを、南向きに反時計回りする珍しい進路をとった。9月4日から8日にかけて、奄美大島付近から約300km離れた所を反時計回りに進んだ。
この動きは、モンスーンジャイアの反時計回りの流れとおおむね一致していた。研究チームは、台風が渦の流れに流されて動いていたとし、渦が台風の進路に少なからず影響していたとみている。
まだ分からないこと
今回の発表は速報で、後で内容の一部を直したり足したりすることがあるとしている。大雨や台風の進路との関わりも「可能性」や「一因」という段階だ。3者は、航空機の観測データをさらに詳しく解析し、ほかのデータや数値シミュレーションも使って、モンスーンジャイアの実態と大雨との関係を調べていく。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月25日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。