大阪大学、肥満時の血糖を保つ細胞間の仕組み解明 マウスと培養細胞で確認
大阪大学の研究班は、細胞が放出する小さな袋が肥満時の血糖維持を支えると発表した。マウスと培養細胞で、インスリンを出す細胞との関係を調べた成果だ。人での治療効果を示した研究ではない。
サイエンス- ●大阪大学が肥満時の血糖維持を支える細胞間の仕組みを解明
- ●細胞が放出する小さな袋が、インスリンを出す細胞を支える
- ●研究対象はマウスと培養細胞で、人の治療効果を示すものではない
肥満と血糖値の関係が気になる人にとって、体が血糖を保つ仕組みを知る研究だ。
インスリンを出す細胞を守る治療法の探索につながる可能性がある。
大阪大学の研究班が、肥満時の血糖維持を支える細胞間の仕組みを発表した。成果は2026年10月10日午前3時(日本時間)、米科学誌「Science Advances」に掲載された。
何が明らかになったのか
研究したのは、大阪大学大学院医学系研究科の上原雄平さん、長尾博文講師らだ。マウスと培養細胞を使い、細胞が放出する小さな膜の袋「エクソソーム」の役割を調べた。
研究班によると、組織に常在する「間葉系細胞」が出すこの袋が、肥満時の血糖維持を支える。間葉系細胞は脂肪、骨髄、膵臓などにあり、組織の修復や免疫の調節に関わる細胞群だ。
血糖を下げるインスリンを分泌するのは、膵臓の膵島にある「膵β細胞」である。肥満ではインスリンの必要量が増えるため、この細胞の量や機能の維持が重要になる。
かんたんに言うと、細胞同士の小包
エクソソームは、タンパク質や核酸を運び、細胞間で情報を伝える。たとえるなら、細胞から別の細胞へ届ける小包だ。今回の研究は、その小包がインスリンを出す細胞を支える働きに注目した。
研究班は、間葉系細胞でエクソソームの産生を抑えたマウスを作製した。通常食では、体重や血糖を処理する能力に大きな差はなかったという。
一方、高脂肪食では体重や皮下脂肪の増加が抑えられたものの、糖を与えた後の血糖を処理する能力は悪化した。研究班によると、糖負荷15分後の血中インスリン濃度も対照群より低かった。膵β細胞の面積と膵島の大きさも減少したという。
血液で広がるより、近くで働く仕組み
研究班によると、間葉系細胞由来のエクソソームは血中にほぼ検出されなかった。この結果は、組織内の限られた場所で働くことを示唆するという。
膵臓の間葉系細胞は、膵島に近い血管の周囲に多く分布していた。培養実験でも、この細胞が出すエクソソームが膵β細胞の増殖を支えることを確認したとしている。
ただし、今回の研究対象はマウスと培養細胞だ。人での治療効果を示した研究ではなく、血糖維持を支える仕組みについての成果として捉える必要がある。
まとめ
今回の成果は、肥満時の血糖維持を、インスリンを出す細胞だけでなく、周囲の細胞との関係から示したものだ。研究班は、膵β細胞を守る治療標的や、組織内のエクソソームを利用する治療法の探索につながると期待している。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月16日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。