温暖化が「始まっていた次の氷期」を止めた可能性 北米の氷床の名残を米大学などが調べた
米コロンビア大学などのチームが、カナダ北極のバーンズ氷帽を調べ、北米をおおった氷床の名残が約2000年前に再び広がり始めていたと科学誌Scienceに発表した。次の氷期の始まりとみるが、1960年ごろから温暖化で縮み始めたという。
サイエンス- ●北米をおおった氷床の名残が、約2000年前から再び広がり始めていた
- ●研究チームは、これを次の氷期の始まりとみる。1960年ごろに最大になった
- ●その後は人の活動による夏の温暖化で縮み、次の氷期は終わったとする
温暖化は遠い先の話と感じる人にも関係する。約10万年の周期で来る氷期の入り口を、人の活動がすでに変えた可能性を示す研究だ。
モデルの計算では、この氷の名残は数百年のうちにとけきる見込みだ。温室効果ガスが多い世界で、次の氷期がいつ来るかは分からないという。
米コロンビア大学などのチームは2026年10月22日(米国時間)、北米をおおった氷床の名残が約2000年前に再び広がり始めていたとする論文を、科学誌「Science」に発表した。チームは、これを次の氷期(いわゆる氷河期)の始まりとみる。その広がりは1960年ごろ、人の活動による温暖化で止まったという。
何が分かったのか
調べたのは、カナダ・ヌナブト準州のバフィン島の中央にある「バーンズ氷帽」だ。氷帽は、陸をおおう氷床より小さな氷のかたまりを指す。NASAによると、広さは約5,700平方キロメートル、厚さは最大で約730メートルある。
この氷は、ローレンタイド氷床の最後の名残とされる。ローレンタイド氷床は約9万5000年前から2万年前にかけて、カナダの大半と米国北部をおおっていた。
論文の要旨によると、バーンズ氷帽は約3600年前より後に最も小さくなり、約2000年前から再び広がり始めた。1960年ごろに最も大きくなった後は、人の活動による夏の温暖化で、夏に失う氷が冬に増える分を上回った。氷の縁は後退し、チームは「次の氷期が終わった」としている。
どうやって調べたのか
バーンズ氷帽は岩盤に凍りついていて、ほとんど滑らない。このため、氷が小さかった時代に生えていた植物が、広がった氷の下にそのまま閉じこめられる。1960年に氷が後退し始めてから、こうした植物が地表に出てきた。
チームは、植物の年代を炭素14で測った。炭素14は、生き物が生きている間に取りこみ、死ぬと決まった速さで減る炭素の仲間だ。氷の縁のあちこちで測ると、氷が植物の上をじわじわ進んだ時期が分かる。近くの、最近とけた小さな氷帽の植物も合わせて調べた。雪に埋もれた草の「日付」から、雪の広がりを逆算するようなものだ。
「氷期を止めた」とはどういうことか
氷期と間氷期(今のような暖かい時期)は、交互にやってくる。根本の要因は、地球の軌道や地軸の傾きがゆっくり変わり、夏の日差しの強さが変わることだと考えられている。論文の要旨は、夏の日差しは今も弱まり続けていると指摘する。それでも氷期が終わったのは、温室効果ガスの影響の大きさを示すという。
ただし、これは「氷期の始まり」をどう決めるかによる。これまでのモデルの研究は、次の氷期は数千年から数万年先とみてきた。チームは、大陸をおおう氷床ができるのを待たず、氷床が再び広がり始めた時点を始まりとみるべきだと主張する。筆頭著者のニコラス・ヤング氏によると、寒さがはっきり分かるまで数千年、氷床が大陸に広がるまで約3万年かかったはずだという。年代を測ったのは、バフィン島の一つの地域の氷だ。
日本ではどうなるのか
論文の著者の所属に、日本の研究機関は含まれていない。日本でも氷期の仕組みの研究は進んでいる。東京大学大気海洋研究所などのチームは2013年、気候と氷床を組み合わせた計算の結果を発表した。氷期と間氷期が約10万年の周期で入れ替わる仕組みを再現したという。北米の氷床には、小さな日射の変化で大きく変わりやすい条件がそろっていたとしている。
まとめ
NASAによると、バーンズ氷帽は2026年の夏、7月半ばまでに雪がほぼ消え、氷がむき出しになった。モデルの計算では、数百年のうちにとけきる見込みだ。氷の減少は、グリーンランドと南極でも続いている(関連記事: 極地の氷床の減り方・氷河の将来の計算)。今回の研究は、温暖化の影響が、長い周期で動く氷期のリズムにまで及んだ可能性を示した。
- Science「Late Holocene reexpansion of the Laurentide Ice Sheet」(Youngほか・2026年10月22日)
- コロンビア大学 Columbia Climate School「Climate Change Stopped the Next Ice Age」(2026年10月22日)
- NASA Earth Observatory「A Bare Summer for Barnes Ice Cap」(2026年8月3日)
- 東京大学大気海洋研究所「人類が経験した最大の気候変動、10万年周期の氷期-間氷期サイクルのメカニズムを解明」(2013年8月8日)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。