3人に1人が感染とされる寄生虫トキソプラズマ、たんぱく質1つを止めると増えず 米大学が報告
米バージニア工科大学などの研究チームは、寄生虫トキソプラズマが子をつくるのに欠かせないたんぱく質「TgDDP」を見つけたと報告した。働かなくすると寄生虫は増えなくなった。薬の的になりうるが、薬の開発には何年もかかるという。
サイエンス- ●寄生虫トキソプラズマが子をつくるのに要るたんぱく質を、米大学などが見つけた
- ●このたんぱく質を働かなくすると、寄生虫は増えられなくなった
- ●人の細胞には無い組み合わせで、薬の的になりうる。ただ実験室での結果だ
日本でも1割ほどの人が感染していると推定される身近な寄生虫だ。大学は、このたんぱく質が新しい薬の的になりうるとしている。
研究チームは次に、このたんぱく質と組んで働くたんぱく質や形を調べ、働きを止める物質を探す。大学は、薬の開発には何年もかかるとしている。
米バージニア工科大学(Virginia Tech)などの研究チームは、寄生虫「トキソプラズマ」が子をつくるのに欠かせないたんぱく質を見つけたと報告した。このたんぱく質を働かなくすると、寄生虫は増えなくなったという。論文は2026年9月28日に米国微生物学会の学術誌「mBio」に載り、大学は10月21日に発表した。
何が分かったのか
見つかったたんぱく質は「TgDDP」。「DIX」と「DnaJ」という2つの部品(ドメイン)を併せ持つことから名付けた。働きが何も分かっていなかったたんぱく質だ。寄生虫学のRaj Gaji助教は「このたんぱく質が特定されたのは初めてだ」と話した。
研究チームは、ある薬品を加えるとこのたんぱく質が分解されるようにした寄生虫を作った。たんぱく質がなくなると、寄生虫の増殖は完全に止まった。核の分裂はおおむね進んだが、子の体の骨組みが作れなかった。正常なたんぱく質を戻すと、増殖も元に戻った。
大学によると、このたんぱく質は、細胞の中の「ゴルジ体」(物を包んで送り出す場所)から、できかけの子へ材料を運ぶ役を担うとみられる。近い仲間の寄生虫「ネオスポラ」の同じたんぱく質を入れても、同じ働きをした。
かんたんに言うと
人の細胞は、2つに割れて増える。大学の発表によると、トキソプラズマは違う。母の体の中で2匹の子を組み立て、自分の材料を子に回し、最後に母は消える。TgDDPは、この組み立ての現場へ資材を届ける運搬係のようなものだ(TECHNOVAの見方)。運搬係がいないと、家の骨組みが建たない。
どんな寄生虫か
国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、世界では人口の三分の一以上が既に感染していると言われる。猫の糞や、加熱が足りない肉などから口に入ってうつる。多くは症状が無いか軽い。ただ、免疫が落ちた人では脳炎などの重い症状を起こし、死に至ることがある(関連記事: シャモンダウイルス、初めて人の感染を確認)。妊娠中に初めて感染すると、胎児にうつることもある。
大学は、ワクチンは無く、急性の感染に使う薬には毒性があると説明する。体の中で眠っている形に効く薬も無いという。
薬につながるのか
大学によると、人の細胞には「DIX」と「DnaJ」の両方を持つたんぱく質は無い。このため、人の細胞を傷つけずに寄生虫だけをねらう薬の的になりうるという。
ただし、論文の要旨と大学の発表で示されたのは、実験室で寄生虫の遺伝子を操作した結果だ。このたんぱく質を止める薬はまだ無く、動物や人で効き目を確かめた結果も示されていない。
日本ではどうなるのか
JIHSによると、日本の感染率は概ね10%程度と推定されている。国内で承認されたワクチンは無い。予防には、肉を中心まで十分に加熱する、生水を飲まない、猫の糞や土に触るときは手袋を着けるなどを挙げる。論文の著者の所属に、日本の大学や研究機関は入っていない。日本で使える薬になる見通しも、まだ示されていない。
まとめ
トキソプラズマが子をつくるのに欠かせないたんぱく質「TgDDP」が見つかった。働かなくすると寄生虫は増えなくなり、薬の的になりうる。ただ実験室での結果で、薬の開発には何年もかかるという。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。