超伝導をレーザーで「描く」 58秒で大学のロゴを書き込み
ミラノ工科大学などの研究チームが、レーザーを当てるだけで超伝導の性質を場所ごとに変える方法を報告した。薬品やマスクを使わず、大学のロゴを58秒で書き込んだという。
サイエンス- ●レーザーで酸素の量を変え、超伝導の強さを場所ごとに調整できる
- ●空気中で、マスクも薬品も使わず1マイクロメートル以下の模様を描く
- ●超伝導の回路やセンサーの試作が速くなる可能性がある
暮らしにすぐ届く話ではない。ただ、消費電力の少ないコンピューターや量子の部品を作る手間が減れば、将来の機器の省エネにつながるかもしれない。
今の方法は酸素を抜く一方向で、チームは酸素を戻して元に近づける方法も探るという。実際の部品にどこまで使えるかが次の関門になる。
超伝導の回路を、ペンで紙に書くように描けたら。そんな方法を、イタリアのミラノ工科大学、スペインのバルセロナ材料科学研究所、ベルギーのリエージュ大学のチームが報告した。2026年11月の発表によると、成果は学術誌Advanced Functional Materialsに載った。
見本に書き込んだのは、ミラノ工科大学のロゴだ。大きさは0.5×0.7mmほどで、かかった時間は58秒。出力を4段階に変えて、濃淡まで付けている。
酸素を少し抜いて、性質を変える
材料はYBCOと呼ばれる銅の酸化物で、高温超伝導体の代表だ。「高温」といっても、超伝導になる温度は最高で92K、セ氏マイナス181度ほどにとどまる。それでも液体窒素で冷やせるので、省電力の計算機や量子センサーへの応用が期待されてきた。
ただ、この材料はとても繊細で、細かく加工しようとすると薬品やビームで傷みやすい。一方で、中に含まれる酸素の量で性質が大きく変わる。チームはここを逆手に取った。
使ったのは波長405nmの市販の半導体レーザーだ。空気中で薄い膜に当てて一点ずつ動かすと、当たった場所から酸素が抜ける。出力を上げるほど超伝導は弱まり、厚さ15nmの膜では、超伝導になる温度が76.2Kから32Kまで下がった。さらに強く当てると、超伝導そのものが消える。
一枚の膜の中に、超伝導の強い場所、弱い場所、まったく働かない場所を描き分けられるわけだ。線と線のすき間は約200nmで、髪の毛の太さの数百分の一にあたる。
型となるマスクも、強い薬品も、荷電粒子のビームも要らない。論文の筆頭著者のイレーネ・ビアンカルディ氏は、ペンで紙に書くのに似たやり方だと話す。
消すことは、まだこれから
もっとも、今できるのは酸素を抜く方向だけだ。チームは、酸素の多い環境で熱して元に戻す方法や、酸素の少ない膜に超伝導の道を描く方法を今後の課題に挙げている。
共振器やメモリー素子、量子の部品に使えると研究者はみている。消しゴムまでそろえば、超伝導の回路の試作は、ずっと身近な作業になるかもしれない。
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。
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