ETH Zurich、電気で血糖値を下げる埋め込み装置をマウスで試験 人での試験はまだ
ETH Zurichの研究チームが、体に埋め込み、電気で働く触媒で血液中の糖を別の物質に変えて血糖値を下げる装置を開発した。糖尿病のマウスで6週間試し、血糖値を調節できたとしている。人での試験はまだ行っていない。
サイエンス- ●体に埋め込み、電気で血液中の糖を尿に出る物質に変える装置を開発
- ●糖尿病のマウスで6週間試し、血糖値を調節でき、体重も減ったとしている
- ●人での試験はまだで、治療に使えるかはこれからの開発と試験しだい
糖尿病の人や家族にとって、薬に頼らない治療の新しい考え方を知る話題だ。ただ、まだマウスの段階で、今の治療が変わる話ではない。
研究チームは医療機器として開発する計画だ。人での試験の時期や、実際に使えるようになる時期は示されていない。
スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)は2026年10月22日、血糖値を下げる埋め込み型の装置を開発したと発表した。電気で働く触媒が血液中の糖を別の物質に変える仕組みで、糖尿病のマウスで試した段階だ。成果は学術誌「Science」に載った。
何が発表されたのか
研究したのは、バーゼルにあるETH Zurichの生体システム科学・工学科のMartin Fussenegger教授らのチームだ。対象は、肥満や運動不足、長年のエネルギーのとりすぎと結びつくことが多い2型糖尿病である。
ETHによると、インスリン注射は血糖値を下げられるが、体のエネルギーの余りは解消しない。使われない糖は脂肪に変わる。治療中も体重が増え続ける患者が多い理由の一つだと説明している。
装置の中心は触媒だ。触媒は、自分は変わらずに化学反応を進める材料を指す。黒鉛のフェルトに金のごく小さな粒を付け、さらに小さな白金の粒をまぶした。細胞や酵素など、生き物由来の部品は使っていない。制御部は3Dプリントのケースに収め、電力は13.56MHzの周波数を使い、無線で送る。
かんたんに言うと
食後に血糖値が上がりすぎたとき、余った糖の一部を「グルコン酸」という物質に変える。グルコン酸は尿といっしょに体の外に出る。糖が体に蓄えられにくくなり、脂肪がたまるのを抑える助けにもなるという。
動かすのは自動だ。糖尿病の人が上腕に付ける市販のセンサーが糖の値を測り続ける。値が上がりすぎると、Bluetoothでスマートフォンやスマートウォッチに知らせ、そこから触媒を動かす。目標の値まで下がると自動で止まり、血糖値の下がりすぎを防ぐ。
マウスと実験での結果
まず、人の血液の量に近い5リットルの糖を含む液で試し、この量の液の糖を変えられることを確かめた。次に、2型糖尿病のマウスに埋め込んだ。論文の要旨によると、0.75ボルト・10ミリアンペアの弱い電気で、1時間以内に血糖のバランスが戻った。6週間の試験で体重と中性脂肪が減り、低血糖や炎症などの悪い影響は検出されなかったという。
Fussenegger教授は「電圧はとても低く、実験では電気や熱による組織の損傷は見られなかった」と話す。
人で使えるまで
チームは、人での試験をまだ行っていない。今回の結果は、マウスと体の外の液での実験によるものだ。マウスで試した期間は6週間である。
チームは医療機器として開発する計画だ。細胞や酵素を使わないぶん、技術の開発は進めやすい可能性があるという。外から動かす機器や、無線で電力を送る機器は、すでに市販されているとしている。人での試験や実用の時期は示していない。
日本ではどうなるのか
発表に日本についての記述はない。日本での提供や試験の予定は発表されていない。
まとめ
電気で糖を直接減らすという、薬とは違う発想の研究だ。ただし、確かめられたのはマウスまでで、治療法ができたわけではない。糖尿病の治療中の人は、この研究を理由に今の薬やインスリンをやめたり変えたりせず、治療のことは主治医に相談してほしい。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。