ETH Zurich、細菌で砂を固める建材研究を発表 室温での製造と課題
ETH Zurichが、細菌の働きで砂を固める建材研究を発表した。3Dプリントとロボット噴霧を使い、室温で材料を固めるという。外壁用の部材を作製した一方、副産物の処分や耐久性には課題が残る。
サイエンス- ●ETH Zurichが細菌で砂を固める建材研究を発表
- ●3Dプリントとロボット噴霧で材料を製造
- ●副産物の処分と耐久性が課題で、構造への利用はまだ遠い
住まいや建物の材料に関心がある人に、細菌の働きを建材づくりに使う研究の現状を伝える話題だ。
環境への影響や耐久性の研究が進めば、建築部材として使える範囲が見えてくる可能性がある。
ETH Zurichは2026年10月14日、細菌を使う建材製造の研究を発表した。砂などの粒を細菌の働きで固め、3Dプリントやロボット噴霧で形を作る研究だ。
細菌の働きで建材を作る
研究者Karen Antorveza Paezは、細菌による固化とデジタル製造を組み合わせた。ここでのデジタル製造は、3Dプリントとロボット噴霧を使う方法だ。3Dプリントは、材料を重ねて立体の形を作る技術を指す。
3Dプリント用には、水と天然成分のゲル、砂、生きた細菌を混ぜたインクを開発した。ゲルはゼリー状の材料、インクは印刷に使う材料のことだ。印刷した構造物を、尿素と塩化カルシウムを含む液に浸す。これらは細菌による固化に使う成分である。
ETHによると、必要な強度に応じて固化処理に2〜5日かかる。成分を補うため、液は毎日交換する。熱源を使わず室温で固められ、乾燥後は細菌が活動しなくなるという。
この方法では、建物の外壁に使う部材を作製した。研究者は、日よけや間仕切りへの利用が可能としている。
かんたんに言うと、細菌が粒の「つなぎ役」を作る
砂粒をばらばらの積み木にたとえると、細菌は積み木同士をつなぐ材料を作る役だ。その材料が炭酸カルシウムである。石灰岩を構成し、貝殻やチョークにも含まれる物質だ。
液の中で細菌が尿素を分解すると、砂粒の間に炭酸カルシウムの結晶ができる。ETHによると、この結晶がかみ合い、砂粒をつなぎ留める。
この固化は「微生物誘導方解石沈殿(MICP)」と呼ばれる。微生物の働きで結晶を生じさせ、粒を固める仕組みだ。従来は地盤の安定化や、型で成形するタイルなどに使われてきた。
もう一つのロボット噴霧は、材料を吹き付ける方法である。細菌、固化用の成分、砂を順番に重ね、液に浸す工程を省いた。研究者は、3Dプリントは建築部材向け、噴霧は表面形成向けとしている。ただし、噴霧した材料の力を受けた際の性質には、さらに研究が必要だという。
日本では
日本との関わりは発表には書かれていない。今回の発表は建材製造の研究であり、日本での利用や提供を知らせるものではない。
まとめ
室温で固める方法だが、それだけで環境への負担が小さいとは判断できない。反応では、環境への悪影響が大きいアンモニウムが副産物として生じる。これは固化の過程で目的の材料とは別に生じる物質だ。研究者は、副産物の処分を考慮する必要があると指摘している。
研究者によると、現状の材料はコンクリートよりモルタルに近い。モルタルは建築で使う砂を含む材料だ。荷重を支える構造への利用はまだ遠く、耐久性などの研究も必要としている。環境影響への対策と材料の検証が進めば、利用できる範囲が見えてくる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月14日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。