東京大学と横浜国立大学、台風経路のわずかな違いによる全国の洪水被害額を推計
東京大学と横浜国立大学が、台風経路の違いによる全国の洪水被害額を推計した。81通りの仮想シナリオを比較し、経度方向に0.2度異なると被害評価額に平均約833億円の差が生じたとしている。
サイエンス- ●東京大学と横浜国立大学が全国の洪水被害評価の枠組みを開発
- ●台風経路が0.2度異なると被害評価額に平均約833億円の差
- ●堤防の高さを変えた場合の浸水や被害額への影響も評価
台風時の洪水が心配な人にとって、雨の量だけでなく建物や資産への被害から危険を捉える研究だ。
今後は予報・観測などと結び付け、災害前の被害予測を支える仕組みを目指すとしている。
東京大学と横浜国立大学の研究グループが、日本全国の洪水被害評価の枠組みを開発した。東京大学が研究成果を発表したが、資料に発表日の記載はない。
台風の経路で被害額はどう変わるか
対象は2019年台風第19号(ハギビス)だ。実際の台風経路を東西に移した81通りの仮想シナリオを比較した。大気や河川・浸水の計算に、建物・資産などの情報を組み合わせている。
東京大学によると、経路が経度方向に0.2度異なると、被害評価額に平均約833億円の差が生じた。経度方向とは、ここでは東西の方向を指す。
全国の推計被害額が最大だったのは、経路を東に1度ずらした場合の約1兆9,663億円だ。次に大きかったのは、西に1.4度ずらした場合の約1兆5,226億円だったとしている。これらは仮想的に経路を変えた場合の推計であり、実際に発生した被害額ではない。
かんたんに言うと、雨と被害をつなぐ計算
この研究は、雨や浸水の情報を、被害を受ける建物や資産の情報と重ねるものだ。同じ深さの水でも、何もない場所と建物のある場所では、被害の捉え方が変わる。その違いを計算に取り込むと考えると分かりやすい。
こうした手法を、インパクトベース洪水被害評価と呼ぶ。気象や水の動きに加え、災害への弱さや、人・資産の情報から被害を見積もる方法だ。
東京大学によると、基準の経路では台風が山地に上陸し、大雨が複数の河川流域に分散する推計となった。一方、東に1度ずらすと関東平野に上陸し、首都圏で強い雨と広範囲の浸水が生じる推計だった。
堤防の高さも仮想的に変えて評価
研究では、堤防の高さも変えて影響を調べた。基準より20%低くした場合から20%高くした場合までを比較している。
東京大学によると、20%低くした場合の推計被害額は約1兆1,891億円だった。20%高くした場合は約1兆1,529億円となった。堤防を10%高くするごとに、推計被害額は平均約91億円減少したとしている。
東京大学は、この結果を堤防の建設・維持費や環境影響と併せて検討する判断材料と位置付けている。被害額の計算だけで、堤防の高さを決めるという話ではない。
まとめ
今回の研究は、台風の経路と、浸水先にある建物や資産を結び付けて被害を評価したものだ。経路の違いによって、推計被害額が大きく変わることを示している。
芳村圭教授は、今後、予報・観測などと結び付け、災害前の被害予測を支える仕組みを目指すとしている。雨の予測を被害の見積もりにつなげる研究が進む可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月14日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。