耳あかは虫に「滑るのにくっつく」壁 アリで実験、環境にやさしい虫よけのヒントに
耳あかは、虫にとって「滑るのにくっつく」やっかいな面だった。米ジョージア工科大学のチームがアリの実験で示した。環境にやさしい虫よけにつながる可能性があるが、まだ研究の段階だ。
サイエンス- ●米ジョージア工科大学のチームが、耳あかが虫を防ぐ仕組みを実験で調べた
- ●アリは耳あかの面を登りにくく、体についた耳あかも落としにくかった
- ●環境にやさしい虫よけに役立つ可能性はあるが、製品の話はまだない
風呂上がりの耳かきが習慣の人は、その耳あかが虫や細菌から耳を守っていると知っておきたい。日本人に多い乾いた耳あかでも同じかは、まだ分からない。
耳あかをまねた人工の素材で、虫が登りにくい面を作る研究が進むかもしれない。害虫対策の製品になるかどうかは、まだ見通せない。
日本人の70〜80%は、耳あかがカサカサと乾いたタイプだ。風呂上がりに耳かきでぽろぽろと取れると、なんだかすっきりする。
ところが耳あかには、耳の中を守る役割がある。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会によると、耳あかは細菌やカビの繁殖を抑えるほか、苦味があり、虫などが入るのも防いでくれる。
米ジョージア工科大学の研究チームは、この虫を防ぐ働きを、苦味とは別の角度から調べた。耳あかは虫にとって、滑るのにくっつく面だという。論文は英国王立化学会の学術誌「Soft Matter」の10月28日付の号に載った。この性質をうまくまねれば、環境にやさしい虫よけにつながるかもしれない。
鼻水も涙も出ない耳の入り口
出発点は、素朴な疑問だった。陸にすむ哺乳類は、いつも虫にまとわりつかれている。鼻や目は鼻水や涙を出すのに、耳はそうした液を出さず、無防備に見える。では、耳はどうやって虫を防いでいるのか。
チームは、耳あかが滑りやすい壁になり、虫が耳にはい込むのを防いでいると考えた。耳あかを塗った面にアリを登らせると、アリはうまく登れなかった。体についた耳あかを取り除くのにも手こずった。足場としては滑り、触れれば体にまとわりつく。虫から見れば、二重にやっかいな壁だ。
アリが手こずる理由として、チームは耳あかの3つの性質を挙げる。水になじみやすいこと、細かな穴が多いこと、そして粘りと弾力をあわせ持つことだ。顕微鏡での観察や粘りぐあいを測る実験に加え、人工の耳あかも作って調べた。
もう一つ、面白い結果がある。耳あかは古くなるともろくなり、10週間ほどで自然に外へ出ていきやすくなるという。学会も、人には耳あかを自然に外へ出す「自浄作用」が備わっていると説明しており、話がよく合う。
乾いた耳あかでも同じなのか
もっとも、日本の読者には気になる点がある。学会によると、耳あかにはカサカサした乾性耳垢とベタベタした湿性耳垢があり、どちらになるかは遺伝子で決まる。日本人に多いのは前者だ。論文の要旨は耳あかの型に触れておらず、「滑るのにくっつく」という結果が乾いた耳あかにも当てはまるのかは分からない。
虫よけへの応用も、まだ研究の段階にある。チームは要旨で、虫を防ぐ環境にやさしいバリアを設計する人の役に立つかもしれない、と書くにとどめている。製品にする予定は示されておらず、日本での提供も発表されていない。
次に耳かきを手に取ったら、少しだけ思い出したい。取ろうとしているその耳あかが、虫から耳を守っているのかもしれない。
編集部が確認:。確認した監修者は、この下に載せています。
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。