DNAの「近さ」でデータを記録、研究チームが新方式SPANの実験結果を発表
研究チームは、DNA分子の位置関係に情報を記録する「SPAN」を発表した。実験では136ビットのうち114ビットを正しく復元。専用のDNA配列を合成せず、長期保存の書き込み費用を抑える狙いだ。
サイエンス- ●研究チームがDNA分子の近接関係で記録するSPANを発表
- ●実験では136ビットを書き込み、114ビットを正しく復元
- ●書き込み費用を抑える一方、読み出し費用は高くなる
写真や文書を長く残したい人にも関わる、保存の費用と読み出しやすさを考える研究だ。
ほとんど読み出さない長期保存に向け、書き込み費用を抑える選択肢になる可能性がある。
研究チームは、DNA(遺伝情報を担う分子)の近接関係にデータを記録する方式「SPAN」を発表した。Cold Spring Harbor Laboratoryが紹介した研究で、資料に発表日の記載はない。
何が発表されたのか
SPANは、保存するデータ専用のDNA配列を合成せずに記録する方式だ。研究成果は、論文公開サイトのbioRxivに掲載されている。査読前の論文であるプレプリントとしての公開だ。
研究チームによると、DNAはデータの長期保存媒体として有望だ。ただし、従来方式ではデータに応じたDNA配列を合成する費用が普及の壁になっている。
今回の実験では、光で模様を形成するフォトリソグラフィーという技術を使った。情報量の単位であるビットで、136ビットを書き込んだ。研究チームは、このうち114ビットを正しく復元したと報告した。書き込んだ情報のすべてを正しく読み戻せたわけではない。
かんたんに言うと
名札に書かれた内容ではなく、名札同士の並び方で情報を残すような仕組みだ。SPANでは、デジタル情報を物理的な模様として書き込み、DNA分子の位置関係で表す。
まず、模様を付けた表面に、ランダムな識別配列を持つDNAを配置する。次に、反応を助ける物質である酵素を使い、隣り合う分子を記録する。
研究チームによると、隣接する分子の配列を読み、その近接関係を図にする。この図を手がかりに、元の情報を復元できるとしている。分子に何を書くかだけでなく、どの分子が近くにあるかを記録に使う点が特徴だ。
研究チームは、復元の正確さを左右する物理的条件も、計算上の実験で調べた。
日本では
日本との関わりは発表には書かれていない。今回示されたのは研究段階の方式と実験結果であり、日本で利用できる保存サービスの案内ではない。
まとめ
研究チームの試算では、実証した方式の書き込み費用は既存のDNA合成方式より低い。一方で、読み出し費用は高くなるという。記録時の安さと、取り出すときの費用は分けて考える必要がある。
研究チームは、一度記録してほとんど読み出さない長期保存用途に有望と位置付ける。既存の光学技術で、書き込み費用をさらに10万分の1にできるとも予測する。ただし、これは実験で達成した数字ではない。情報を正しく復元することと費用を抑えることが両立すれば、長期保存の選択肢になる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月14日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。