AIエージェントに侵入を任せる攻撃、日本の通販サイトも標的に セキュリティ企業が公開状態の操作画面から全容を報告
セキュリティ企業のNorForgeは10月19日、攻撃者がAIエージェントを使って、米国、カナダ、日本、オーストラリアの通販サイトなどに次々と侵入を試みていたと報告した。攻撃者がネット上に鍵をかけずに置いていたAIの操作画面から、狙った先や手口が丸見えになっていた。1,100件を超える攻撃の作業のうち、目的まで達したのは平均で1割ほどだという。
AI- ●攻撃者が、AIエージェントをまとめて動かす道具「Cairn」で、日本を含む4か国の通販サイトなどへの侵入を自動で試みていた
- ●鍵のかかっていない操作画面が20以上見つかった。最も活発な中国語のグループは、1,100件を超える攻撃の作業を動かし、成功は平均で1割ほど
- ●日本の小売りの会社への侵入の例もあった。NorForgeはロイター通信と協力して、被害を受けた企業に知らせている
通販サイトを運営している会社は、使っている通販の仕組みや部品を最新にし、見覚えのないファイルが置かれていないかを確かめたい。買い物をする人は、カードの明細をときどき見て、心当たりのない請求がないかを確かめると安心だ(TECHNOVAの見方)。
NorForgeは、攻撃者の操作画面を止めてもらうよう、サーバーの貸し手に働きかけている。AIエージェントのしくみは急速に変わっており、今回の数字はある時点の姿にすぎないとしている。
セキュリティ企業のNorForgeは2026年10月19日、攻撃者がAIエージェントを使って、米国、カナダ、日本、オーストラリアの通販サイトなどに次々と侵入を試みていたとする調査の報告を公表した。攻撃者がネット上に鍵をかけずに置いていたAIの操作画面から、狙った先や手口、成果が丸見えになっていたという。
AIエージェントとは、目的を与えると、調べる、考える、試すといった作業を自分で続けるAIのことだ。
何が見つかったのか
NorForgeによると、攻撃に使われていたのは「Cairn(ケアン)」という道具だ。目的と相手を与えると、複数のAIエージェントを動かして、相手を調べ、弱点を探し、侵入を試みる。もともとは、決めたゴールに向けて一歩ずつ進む汎用の問題解決の仕組みだが、今回は侵入のために使われていた。
NorForgeは、ネット上の機器を調べる検索サービスを使い、鍵のかかっていないCairnの操作画面を探した。悪用されているとみられる画面は20を超えた。どれもお金が目的とみられ、国家が関わる攻撃の形跡は見当たらなかったという。
| 項目 | 内容(最も活発なグループ「AIA0001」) |
|---|---|
| 使う言葉 | 中国語 |
| 操作画面の数 | 14 |
| 攻撃の作業の数 | 1,100件を超える |
| 主な標的 | 米国、日本、オーストラリアなどの通販や決済の仕組み |
| ねらい | 後でお金にするため、サイトに入り込んだままにする |
| 目的まで達するのにかかった時間 | 平均で23時間足らず |
このグループがAIに与えていた典型的な指示は、「米国、カナダ、日本、オーストラリアの、実在する通販サイト(アクセスは20万〜150万)。認証なしで命令を実行できる弱点を探せ」というものだった。標的の選び方から指示の流し込みまで、多くが自動になっていたとみられる。
NorForgeによると、作業はすべて、AIの開発の道具「Claude Code」の仕組みに、中国のDeepSeekのAIのモデルを組み合わせたとみられるものが担っていた。安いモデルで、失敗した作業も含めると、1件あたりの費用は平均で5ドルほどと見積もっている。ロイター通信は、1人のハッカーが、AIエージェントと数千ドルで多くのサイトに侵入したと伝えている。
成功は1割、それでも数は多い
NorForgeは、こうした道具を使った攻撃の成功は、平均で1割ほどとみている。残りの多くも、途中まで進んだり、次の攻撃に使える情報を集めたりしていた。テクノエッジによると、侵入に成功したのは100社を超える。
NorForgeは、攻撃が成功したとされる大手の部品の販売会社のサイトを確かめ、実際にファイルを送り込める仕組み(ウェブシェル)が置かれていたことを確認した。報告の事例には、日本の小売りの会社への侵入も含まれている。
10回に9回は失敗する泥棒でも、休まず1,000軒を回れば、100軒には入れてしまう。AIに任せれば、その「回る手間」がほとんどかからない(TECHNOVAの見方)。
攻撃者の画面から、被害が広がるおそれも
鍵のかかっていない操作画面には、標的の弱点や、侵入で手に入れたパスワードなどの秘密の情報も表示されていた。NorForgeが調べると、数百の秘密の情報が見つかり、そのうち11%は実際に使えるものだった。誰でも作業を止めたり、別の標的に向けたりできる管理の機能まで、さらされていたとみられる。
本物のセキュリティの診断(レッドチーム)の業者が、顧客のサイトの診断を同じように鍵のない画面で動かしていた例もあった。NorForgeは、顧客の秘密をネットに公開してしまう最悪の事態だと指摘している。
テクノエッジによると、Cairnの開発者は「ハッキングの攻撃のために作ったものではない」とコメントしている。
日本ではどうなるのか
日本は、最も活発なグループの主な標的の一つだ。NorForgeは、ロイター通信と協力して、被害を受けたとみられる企業に知らせている。攻撃者の操作画面を止めるよう、サーバーの貸し手にも求めているが、うまくいくかは貸し手の対応しだいだという。
10月は、日本の身近なサービスで不正アクセスの発表が相次いでいる(関連記事: 相次ぐ情報漏えい、原因の一つは「アプリを解析してサーバーを攻撃」)。
かんたんに言うと
攻撃者が、AIに「この通販サイトに入り込め」と指示を出し、あとは任せきりにして、日本を含む多くのサイトへの侵入を試みていた。攻撃者が自分の操作画面に鍵をかけ忘れていたため、セキュリティ企業がその中身を見て、手口が明らかになった。
まとめ
NorForgeによると、攻撃者はAIエージェントの道具「Cairn」を使い、日本を含む4か国の通販サイトなどへの侵入を自動で試みていた。成功は平均で1割ほどでも、数をこなすことで多くの侵入につながっていた。通販サイトの運営者は、仕組みを最新に保ち、見覚えのないファイルがないかを確かめたい。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月20日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。