Telegramが米当局に渡した記録、裁判の書類で公開 電話番号やIPアドレス
米国の刑事裁判の書類で、メッセージアプリのTelegramが裁判所の命令を受けて米当局に渡した利用者の記録が公開された。電話番号や利用者の番号、IPアドレスなどで、メッセージの中身は含まれていない。
IT- ●米国の刑事裁判の書類で、Telegramが米当局に渡した記録が公開された
- ●電話番号や利用者の番号、IPアドレスなどで、メッセージの中身は無い
- ●警察庁は、闇バイトでテレグラムなどに誘われたら危ないと呼びかける
Telegramでも、電話番号やIPアドレスは裁判所の命令で捜査機関に渡ることがある。「匿名で安全」と思い込まず、怪しい誘いには乗らないことが大事だ。
この裁判は2027年1月25日に始まる予定だ。日本では、通信アプリの悪用を背景にした警察官職務執行法の改正案が国会に出ている。
米国の刑事裁判の書類で、メッセージアプリ「Telegram」が裁判所の命令を受けて米当局に渡した利用者の記録が公開された。米ルイジアナ州西部地区の連邦地方裁判所に、検察が2026年10月15日に出した書類だ。米メディアの404 Mediaが10月16日に伝え、日本ではINTERNET Watchが20日に紹介した。
何が明らかになったのか
検察の書面によると、被告は、イスラエルで起きた10月7日のテロ攻撃(2023年)に関わった罪と、米国に入るためのビザの不正の罪で訴追されている。罪はまだ裁判で確かめられておらず、裁判は2027年1月25日に始まる予定だ。
検察は証拠の一つとして、Telegramから受け取った被告のアカウントの「加入者情報」を挙げた。米国の法律の条文「18 U.S.C. § 2703(d)」に基づく裁判所の命令に、Telegramが応えて出したものだという。ネットの事業者が持つ記録を、捜査機関が求める手続きの条文だ。
添えられたTelegramの回答書は2026年9月4日付だ。書かれていたのは、利用者の番号(ユーザーID)、電話番号とそれに結び付いた名前、IPアドレス(ネットにつないだ場所の手がかりになる番号)と、最後にログインした日時だった。メッセージの中身は含まれていない。
Telegramは「自発的に」と書く
回答書でTelegramは、回答を「自発的に」(voluntarily)出すとし、米国の裁判権に従うと認めたわけではない、これ以上の情報を出す約束はしない、などと断っている。検察の書面も、Telegramの法的な本拠は英領バージン諸島にあり、米国の裁判権を認めていないと説明している。
回答書には、非公開の情報を探すにはふつう電話番号が要るが、正式な開示の求めのあとに追加の記録(ログ)を取れるようになった場合などは、ユーザー名やIDで探せることもある、との注記もあった。
2024年に方針を改めていた
Telegramは2024年9月23日、プライバシーポリシーの「法執行機関」の項を改めた。今の文面では、犯罪の容疑者だと確かめる正当な命令を司法当局から受けると、法的に検討したうえで、IPアドレスと電話番号を開示することがある。開示したときは、四半期ごとの透明性レポートに載せるという。
404 Mediaが2025年1月に伝えたところでは、Telegramの透明性レポートで、2024年1〜9月に米国の求めに応じたのは14件(108人分)だった。それが1年間では900件(2253人分)に増えていた。
かんたんに言うと、中身ではなく封筒の情報
Telegramのよくある質問では、「シークレットチャット」はエンドツーエンド暗号化(送る人と受け取る人の端末でだけ読める仕組み)で、渡せるデータが無いとする。利用者のメッセージは、政府を含む第三者に「0バイト」しか開示していないという。
手紙にたとえると、中身は渡さないが、封筒の差出人(電話番号)や、投函したポストの場所と時刻(IPアドレスと日時)は、命令があれば渡ることがある。それだけでも、誰が使っていたかをたどる手がかりになる。
日本ではどうなるのか
警察庁は「闇バイト」の危険を伝えるページで、「シグナルやテレグラムといった匿名性の高いアプリに誘導されたりする場合は犯罪に関わる危険性が大です」と呼びかけている。日本の警察の求めにTelegramがどう応じているかは、警察庁やTelegramの公式の発表では明らかになっていない。
2026年10月16日には、「警察官職務執行法の一部を改正する法律案」が国会に出された。警察庁の概要は、背景に「匿名性・秘匿性が高い通信アプリの悪用により、検挙や被害防止が一層困難化」を挙げる。裁判官の許可を得て、重大な犯罪の犯人が連絡に使ったと認める合理的な理由がある端末に回線を通じて接続し、被害を防ぐのに必要な記録を取れるようにする中身だ。特定のアプリの名前は挙げていない。
まとめ
Telegramが米国の裁判所の命令を受けて渡した記録は、電話番号、利用者の番号、IPアドレスとログインの日時で、メッセージの中身は無かった。「匿名で安全」と思われがちなアプリでも、つないだ記録は残り、命令があれば当局に渡り得る。
- 米ルイジアナ州西部地区連邦地方裁判所 刑事事件6:25-cr-00285「Government's Second Notice of Intent to Offer Self-Authenticating Records」(Document 155・2026年10月15日提出・CourtListener収録)
- Telegram「Privacy Policy」
- Telegram「Telegram FAQ」
- 警察庁「いわゆる「闇バイト」の危険性について」
- 警察庁「国会提出法案」
- 警察庁「警察官職務執行法の一部を改正する法律案(概要)」
- 404 Media「Here’s What Telegram Giving Data to the U.S. Government Looks Like」(2026年10月16日)
- 404 Media「Telegram Hands U.S. Authorities Data on Thousands of Users」(2025年1月6日)
- INTERNET Watch「これまでと一転、データ提供に応じ始めたTelegramが裁判所命令で開示した通信記録が明らかに【やじうまWatch】」(2026年10月20日)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。