MIT、海の微生物が粒子に付着する姿を発見、深海へ運ぶ炭素量も試算
単独で海を漂うと考えられてきたプロクロロコッカスに、粒子へ付着して暮らす姿が見つかった。MITは培養と海水試料などの解析で確認。深海への炭素輸送を担う可能性も試算したが、その量は条件に左右される概算だ。
サイエンス- ●MITが海の微生物プロクロロコッカスの付着生活を確認
- ●培養では付着する細胞の割合が約6%から約85%に
- ●深海へ運ぶ炭素を年間約5億トンと試算、条件次第の概算
大気から取り込まれた炭素の行き先に関心がある人に、海の微生物の見方を変える研究だ。
付着して暮らす個体の割合や海域差の研究が進めば、深海へ運ばれる炭素量の理解が深まる可能性がある。
MIT(マサチューセッツ工科大学)は2026年10月20日(米国時間)、海の微生物プロクロロコッカスが、表面に付着して集団で暮らすことを発表した。単独で漂うと考えられてきた微生物の、別の生活の姿を捉えた研究だ。
何が見つかったのか
プロクロロコッカスは、光合成を行う海の微生物だ。MITによると、海で最小かつ最も数の多い光合成生物である。陸と海が毎年大気から取り込む炭素の約10%を担うという。
従来は日光の届く海を単独で漂い、深海への炭素輸送にはほぼ寄与しないと考えられていた。今回、MITは粘着性の集団「バイオフィルム」も作ると報告した。
MITによると、通常の培養では細胞の約6%が試験管の壁に付着した。付着した細胞だけを何世代も培養すると、その割合は約85%になった。付着の原因となる遺伝子変異は見つからず、同じ遺伝情報で付着と浮遊の両状態を取れたという。
研究論文はNature Communications(学術誌)に掲載され、無料で公開されている。
かんたんに言うと
水中を一人で漂う暮らしだけでなく、足場に集まって暮らす姿もあった、ということだ。バイオフィルムは、その「足場にできる粘着性の集まり」に当たる。
この違いは、炭素の行き先を考えるうえでも重要だ。炭素を深海へ運び、そこに蓄える自然の仕組みを「生物ポンプ」と呼ぶ。沈む粒子を下りのエレベーターにたとえると、今回の研究は、その乗客を調べ直すものだ。
研究チームは海水試料と、Tara Oceans ProjectのDNA(遺伝情報を担う物質)のデータを解析した。MITによると、解析した全試料で粒子に付着したプロクロロコッカスが見つかった。海面付近から水深1,000メートルまで、付着して暮らす証拠が得られたという。
日本では
日本との関わりは発表には書かれていない。今回の発表は、海の微生物の暮らし方と炭素の移動に関する研究である。
まとめ
研究チームは、沈む粒子への付着によって、年間約5億トンの炭素を深い海へ運ぶ可能性を試算した。ただし、個体数や付着率、沈む途中で食べられる量に左右される概算だと強調している。
研究チームは既に、全個体に占める付着個体の割合と、海域による違いを推定する研究を進めている。こうした調査が進めば、この微生物が深海への炭素輸送で果たす役割を、より詳しく捉えられる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月21日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。