グリーンランドのホッキョクグマに鳥インフルエンザの抗体、渡り鳥の時期に感染か
東グリーンランドで狩られたホッキョクグマの血液から、鳥インフルエンザにかかった跡とみられる抗体が見つかった。研究チームは渡り鳥が来る夏から秋にうつったとみるが、うつった道すじはまだ分かっていない。
サイエンス- ●抗体があったクマは2024年が14頭中3頭、2025年が14頭中6頭
- ●2025年の4頭は、いま世界で広がる鳥インフルエンザの型への抗体を持っていた
- ●渡り鳥が来る夏から秋にうつったとみられるが、道すじはまだ分からない
日本も渡り鳥が来る時期だ。死んだり弱ったりした野鳥は自分で触らず自治体に連絡し、ふんに触れたら手洗いとうがいを、と環境省は呼びかける。
研究チームは、ホッキョクグマが北極での鳥インフルエンザの広がりを知らせる目印になりうるとみる。うつる道すじを確かめる研究が今後の課題だ。
東グリーンランドのホッキョクグマの血液から、鳥インフルエンザにかかった跡とみられる抗体が見つかった。ノルウェーや米国、カナダ、デンマークのチームの成果だ。論文は、学術誌「Emerging Infectious Diseases」に2026年10月13日付で載った。
何が分かったのか
調べたのは、東グリーンランドのイトコルトルミット周辺のクマだ。地元の人の狩りで、1〜5月の猟期にとられた。どれも見た目は健康だった。
2016〜2025年に集めた109頭分の血しょう(血液の液体の部分)を調べた。2023年までは抗体は見つからなかった。抗体があったのは、2024年が14頭中3頭(21%)、2025年が14頭中6頭(43%)だ。
抗体は、体がウイルスと戦ったときにできて血液に残る、いわば「かかった記録」だ。ウイルスそのものが見つかったわけではない。
詳しい検査では、2025年の4頭が「H5 クレード2.3.4.4b」という型への抗体を持っていた。いま世界で広がる高病原性(鶏にうつると高い割合で死なせる性質)の鳥インフルエンザだ。
渡り鳥とどうつながるのか
研究チームは、抗体があったクマは狩られる前年の夏から秋、渡り鳥の季節にさらされたとみる。猟期には渡り鳥がいないからだ。
グリーンランドは、大西洋のヨーロッパ側と北米側の渡り鳥の道をつなぐ位置にある。西の海岸では2022〜2024年に、ウミガラスやカモメなど海鳥からウイルスが見つかっていた。付録では、同じ型が見つかっているスバールバル諸島と東グリーンランドを、シロカモメが行き来することにもふれている。
ただ、クマへのうつり方は分かっていない。論文は、死んだ鳥や感染した動物を食べた可能性が最も高いとしつつ、さらに調べる必要があるとする。狩った人から病気の様子は報告されておらず、研究チームはクマが回復できることを示すとみている。
結果を読むときの注意点もある。
- 論文によると、毒性の弱いH5型への抗体と区別しにくい場合がある。ただし4頭は古い型(クレード1)には同じ反応を示さず、2.3.4.4bへの感染を強く支持するという
- 調べたのは各年14頭ずつで、論文は2025年の43%に21〜67%の幅(統計上の誤差)を示している
人への危険は
論文は、人への感染は調べていない。北極では鳥インフルエンザが生態系と人の健康の新たな脅威になりつつあるとして、見張りの強化を求めている。
WHO(世界保健機関)は、動物のインフルエンザウイルスは人には簡単にうつらないとしている。いま広がる動物由来のウイルスで、人から人へ続けて広がる感染は確認されていないという。厚生労働省によると、日本で発症した人は確認されていない。
日本での注意
環境省は10月21日、国内の野鳥の監視を「対応レベル2」に引き上げた。韓国で野鳥のふんから高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)が見つかったためだ。国内の野鳥での発生は、5月22日以降確認されていない。
死んだり弱ったりした野鳥を見つけたら、自分では触らず自治体などに連絡してほしいという。鳥のふんなどに触れたあとに手洗いとうがいをすれば、過度に心配する必要はないとしている。
まとめ
東グリーンランドのクマは、ここ数年で鳥インフルエンザにさらされていたとみられる。渡り鳥とのつながりが考えられるが、うつった道すじはこれからの研究だ。
- Buhler K. J. ほか「Evidence of Exposure to Highly Pathogenic Avian Influenza H5 Viruses in East Greenland Polar Bears」(Emerging Infectious Diseases・2026年10月13日・DOI 10.3201/eid3211.261050)
- 同論文の付録(Appendix)
- WHO「Influenza (avian and other zoonotic)」(2026年1月21日)
- 厚生労働省「鳥インフルエンザについて」
- 厚生労働省「鳥インフルエンザに関するQ&A」
- 環境省「韓国での高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)の確認に伴う野鳥サーベイランスの対応レベルの引き上げについて」(2026年10月21日)
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。