東京大学、ハバチと植物の共生の可能性を発表 花粉を運び種子を食べる関係
東京大学は、成虫が花粉を運び、幼虫が同じ植物の種子を食べる共生の可能性を発表した。全国29集団での観察や袋がけ実験で調査。研究陣によると、ハバチ類では初となる関係の可能性を見いだした。
サイエンス- ●東京大学がハバチと植物の共生の可能性を発表
- ●成虫は花粉を運び、幼虫は同じ植物の種子を食べる
- ●昆虫を排除すると結実率は93.2%から67.7%に低下
湿った林床や渓流沿いの植物に関心がある人には、花と昆虫の関係を知る研究だ。
花の形とハバチの口の長さの地域的な対応を調べることで、両者の関係への理解が深まる可能性がある。
東京大学は2026年10月19日、ハバチと植物の共生に関する研究を発表した。成虫が花粉を運び、幼虫が同じ植物の種子を食べる関係の可能性を見いだしたという。
花粉を運ぶ成虫と、種子を食べる幼虫
研究したのは、東京大学の山口万里花氏、国立科学博物館の奥山雄大氏らだ。対象は、日本固有のネコノメソウ属イワボタン列とクチナガハバチ属である。
イワボタン列は湿った林床や渓流沿いに育つ植物だ。花の形や色は、種や地域によって異なる。
研究陣は全国29集団で、花を訪れる昆虫を調べた。多くの集団では、クチナガハバチかヒダクチナガハバチが主に花を訪れていたという。調べた両種のほぼ全個体に、大量の花粉が付着していたとしている。
一方、イワボタン列9集団の264本の花茎から、クチナガハバチ属の幼虫72個体を確認した。研究陣によると、幼虫は果実内で種子を食べて育つ。イワボタン列以外のネコノメソウ属2種50本の花茎では、幼虫は確認されなかった。
かんたんに言うと、助けと負担が同居する関係
研究陣が可能性を示したのは「種子消費型送粉共生」だ。送粉とは花粉を運ぶこと。この共生では、成虫が花粉を運び、幼虫が同じ植物の種子を食べる。
たとえるなら、植物にとってハバチは花粉の配達役であり、その子どもは種子の食べ手でもある。植物は花粉を運んでもらう利益と、種子を食べられる負担の両方を負う。単に植物を助けるだけでも、食べるだけでもない関係だ。
研究陣によると、ハバチ類では初となる種子消費型送粉共生の可能性を見いだしたという。現段階では、こうした関係が確定したのではなく、可能性を示した研究である。
昆虫を遠ざけると、実のでき方はどう変わるか
研究陣は6集団で花に袋をかけ、花粉を運ぶ昆虫を排除した。その結果、花が実になる割合を示す結実率は、自然条件の93.2%から袋がけで67.7%に下がったという。
ただし、袋がけをしても実はできた。研究陣は、昆虫に頼らず自分の花粉で受粉する、自律的な自家受粉も可能と分かったとしている。昆虫を排除すると実のでき方は変わるが、実がまったくできなくなるわけではない。
まとめ
今回の研究は、ハバチが植物に利益と負担の両方をもたらす可能性を示した。今後の検証課題は、花の形と口の長さの地域的な対応や、違いが生じた要因だ。
研究陣によると、植物とハバチの生活の時期は春の短期間に重なる。気候変動や森林環境の変化で関係が損なわれる可能性も指摘しており、両者の結びつきと環境の関係も注目点となる。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月19日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。