名古屋大学ら、材料を替えず層ごとのひずみで磁石の性質を設計する手法を提案
名古屋大学らは、磁性材料の層ごとにひずみを変え、新たな磁気相互作用を実証したと発表した。材料を替えず、機械的な変形で磁石の性質を設計する手法だ。研究グループは、超低消費電力磁気メモリなどへの応用を期待する。
サイエンス- ●名古屋大学らが材料の変形で磁石の性質を設計する手法を提案
- ●層ごとにひずみを変え、新たな磁気相互作用を実証したと発表
- ●研究グループは超低消費電力磁気メモリへの応用を期待
情報を記録する機器の省電力化に関心がある人にとって、その材料設計に関わる基礎研究だ。
材料のひずみを調整する手法が、超低消費電力磁気メモリの研究に生かされる可能性がある。
名古屋大学は、磁性材料のひずみを層ごとに変え、新たな磁気相互作用を実証したと発表した。研究成果は2026年10月15日付で学術誌『Physical Review Applied (Letter版)』に掲載された。
材料を替えず、変形で磁石の性質を設計
研究したのは、名古屋大学の森山貴広教授らと、千葉大学の佐藤正寛教授らだ。名古屋大学によると、材料を替えるのではなく、機械的な変形で磁石の性質を設計する手法を提案した。
ひずみとは、物体に力を加えた際に生じる変形の度合いを指す。今回の研究では、磁性層を重ねた構造に、層ごとに交互に異なる応力を加えた。応力は、力を受けた材料の内部に生じる力のことだ。
用いたのは「人工反強磁性体」である。磁性を持たない層を挟んで磁性層を重ね、隣り合う磁性層の磁化が逆向きになる構造だ。
かんたんに言うと、重ねた層の変形が鍵
身近なたとえなら、同じ素材の薄い板を重ね、各段の変形のさせ方を変えるイメージだ。別の素材に交換するのではなく、変形の与え方を設計に使う点が今回の研究の特徴である。
磁気の振る舞いを理解する鍵が「スピン」だ。電子が持つ、量子的な磁石としての性質を指す。隣り合うスピンを平行ではなく、ねじれた方向に並べる働きを「DM相互作用」と呼ぶ。
名古屋大学によると、今回現れたのは「交互DM相互作用」だ。各層でDM相互作用の符号が交互に反転する状態を意味する。スピンをねじれた方向に並べる働きが、隣の層では反対向きになるイメージである。
ひずみが新たな磁気相互作用を生む
名古屋大学によると、従来、DM相互作用を生むには特殊な結晶構造や界面設計が必要とされていた。今回は、磁性層のひずみが局所的な電場を生み、新たな磁気相互作用を引き起こしたとしている。
重要なのは、材料そのものの選択だけでなく、層ごとの変形にも着目した点だ。研究グループは、特殊な磁気構造「スキルミオン」の生成・制御への応用も期待する。これは電子スピンが渦状に並ぶ、ナノメートルサイズの構造を指す。
まとめ
今回の成果は、材料を替えず、ひずみによって磁石の性質を設計する手法の提案だ。研究グループは、超低消費電力磁気メモリや次世代スピントロニクス機器への応用を期待している。スピントロニクスは、電子の電荷とスピンを情報処理や記録に使う技術分野である。
層ごとのひずみを調整する考え方が、省電力で情報を記録する機器の研究に生かされる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月19日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。