フグの「ウインク」は、体を膨らませる筋肉から生まれた 下関の水族館「海響館」のスタッフが解明
フグは、片方ずつ目を閉じるとみられている。ウインクのようなこの動きに使う筋肉は、体を膨らませたあと元に戻す筋肉から生まれた可能性が高いと、山口県下関市の水族館「海響館」などの研究チームが明らかにした。51種の魚を調べて分かった。
サイエンス- ●フグが目を閉じる筋肉は、体を膨らませる行動に関わる筋肉から進化したとみられる
- ●フグの仲間51種を調べ、この筋肉はフグ科にしかないと分かった
- ●目を守るという同じ働きを、人とはまったく別の道筋で手に入れた
水族館でフグを見るとき、目の周りの皮膚をぎゅっと寄せて目を閉じる様子を探してみたくなる話だ。水族館の飼育スタッフが、毎日の観察から世界の学術誌に成果を出した例でもある。
海響館は、飼っている生き物をよく観察し、分かったことを伝えていきたいとしている。ほかの魚が目を守る仕組みとの比べ方も、これからの研究の題材になりそうだ。
フグは、人のまばたきのように両目を同時には閉じず、片方ずつ目を閉じるとみられている。ウインクのようなこの動きに使う筋肉は、体を膨らませる行動に関わる筋肉から生まれた可能性が高い。山口県下関市の水族館「しものせき水族館 海響館」、新江ノ島水族館、沖縄美ら島財団の研究チームが明らかにした。論文は2026年8月12日、米国の学術誌「Journal of Morphology」に載った。
筆頭の著者は、海響館の展示スタッフの荻本啓介さんだ。
そもそも、魚は目を閉じるのか
陸の動物は、乾きやごみから目を守るために目を閉じる。ところが水の中で暮らす動物では、目を閉じるものは少ない。海に戻ったクジラやウミガメを除くと、これまで知られていたのは一部のサメやエイの仲間くらいだった。
海響館は2021年、フグの一種のコモンフグが、目の周りの皮膚を中心に向けて絞るように寄せて、目を閉じることを報告した。この動きは、目の周りを輪のように取り巻く筋肉(輪状筋)が縮むことで起きる。こうした閉じ方は、ほかの背骨のある動物では見られないという。ただ、この筋肉がどこから来たのかは分かっていなかった。
51種を調べて分かったこと
研究チームは、フグの仲間(フグ目)のすべての科を含む51種について、頭の筋肉を調べた。ハリセンボンやマンボウの仲間も含む。調べた標本には、水族館で飼っていて死んだ魚も使った。
その結果、体を薄く覆う筋肉(皮筋)は、フグ科とハリセンボン科にだけあった。目を閉じる輪状筋は、フグ科にだけあった。
これを、フグの仲間の親戚関係をまとめた6つの系統樹に当てはめると、どれでも同じ答えになった。
- フグ科とハリセンボン科の共通の祖先で、体を覆う皮筋ができた
- その後、フグ科の祖先で、皮筋の一部が目の周りで輪の形に発達し、目を閉じる筋肉になった
皮筋は、フグが水を吸い込んで体を膨らませたあと、皮膚を縮めて元の形に戻す働きがあることが知られている。つまり、「膨らむ」ための筋肉が、目を守る役目に転用されたと考えられる。
かんたんに言うと
もともと別の仕事をしていた道具を、新しい仕事に使い回したようなものだ。膨らんだ体を元に戻すための筋肉の一部が、目の周りで「まぶた」のような役を始めた。
人もフグも、目を守るために目を閉じる。働きは同じでも、そこに至る道筋はまったく違う。このように、別々の道筋から同じような仕組みにたどり着くことを「収斂(しゅうれん)進化」と呼ぶ。
野生のフグも目を閉じていた
科学技術振興機構(JST)のサイエンスポータルによると、研究チームは、野生のフグが目を閉じる様子も初めて観察した。モヨウフグが、小さなベラの仲間に目をつつかれたときに目を閉じたという。水族館でも、フグは目に刺激を受けたときに目を閉じる。陸の動物と同じように、目を守るために閉じていると考えられる。
日本では
研究の中心は日本の水族館だ。下関市は全国からフグが集まる最大の流通の拠点で、海響館は約100種のフグの仲間を飼っている。荻本さんは「フグの展示に注力している海響館だからできた研究」と話している。
まとめ
フグのウインクに使う筋肉は、体を膨らませたあと元に戻すための筋肉から生まれた可能性が高い。目を守るという働きは人と同じでも、たどった道は別だった。水族館で毎日フグを見てきたスタッフの観察が、進化の謎を解く手がかりになった。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月16日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。