MITなど、南極の氷崖の連鎖崩壊説を検証 海面上昇予測に関わる観測結果
MITとウッズホール海洋研究所が、南極の氷崖の崩壊を衛星データで検証した。研究チームによると、高い崖の後退は短期間で止まり、連鎖的な崩壊は見られなかった。安定性には高さだけでなく、氷の下の地形なども関わるという。
サイエンス- ●MITなどが南極の氷崖の崩壊を衛星データで検証
- ●高い氷崖の後退は短期間で止まり、連鎖的な崩壊は見られず
- ●研究チームは予測に氷の下の地形などの把握が必要と指摘
海面上昇の予測が気になる人にとって、南極の氷の崩れ方をどう見積もるかに関わる研究だ。
氷の下の地形や氷が薄くなる速さの把握が、海面上昇の予測を見直す手がかりになる可能性がある。
マサチューセッツ工科大学(MIT)とウッズホール海洋研究所が、南極の氷崖の崩壊を検証した。研究成果は2026年10月15日、科学誌Scienceに掲載された。
観測では連鎖的な崩壊は見られず
氷崖とは、氷床の縁を支える棚氷が失われた後に残る氷の断崖だ。MITによると、その安定性は世界の海面上昇の予測に関わる。
研究には、NASAの氷の高さなどを測る衛星ICESat-2のデータを使った。解析対象は2019~2023年の南極の氷崖1万5000カ所超。データには3カ月ごとの測定値が含まれる。
研究チームによると、平均の高さは約30メートルだった。100メートルを超える氷崖も少数あったが、安定性は高さだけでは決まらなかったという。
さらに、高さ約100メートルの氷崖4カ所を詳しく分析した。うち1カ所は127メートルだった。研究チームによると、崩壊に伴う後退は予測より速かった。一方、後退は短期間で止まり、連鎖的な崩壊は見られなかった。後退後には、氷が再び海に向かって広がったという。
かんたんに言うと、崖の高さだけでは決まらない
従来の氷崖説では、高さ約100メートルを超すと自重で崩れると想定する。崩壊でさらに高い崖が現れ、連鎖的に崩れるという仮説だ。これを海洋氷崖不安定性(MICI)と呼ぶ。
たとえるなら、積み木の山の端が崩れ、奥の高い部分も次々と崩れるという考え方だ。今回の観測では、そうした連鎖は確認されなかった。
周囲の氷も関係していた。氷崖の前に集まる、砕けた氷山と海氷の混合物をメランジュという。研究チームによると、位置がほぼ変わらない氷崖では、これが厚かった。
また、水深が深いほど浮力などで氷崖が安定しやすかったという。氷の下の地形が高くなる場所でも安定した。高い氷崖ほど速く薄くなり、低く安定した崖になったとしている。
日本では
日本との関わりは発表には書かれていない。今回の研究は製品やサービスではなく、南極の氷崖の挙動を観測データで調べたものだ。
まとめ
今回の結果は、高い氷崖が崩れ続けるという仮説と、観測された挙動の違いを示した。ただし、海面上昇そのものを否定する結果ではなく、氷崖の安定性を検証した研究だ。
研究チームは、予測には氷の下の地形と、氷が薄くなる速さの把握が必要だと指摘する。高さに加えてこうした条件を捉えることが、海面上昇の予測を見直す手がかりになる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月16日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。