大阪大学、脳梗塞後の脳浮腫の仕組みを発見 マウスで繊毛再生と浮腫軽減を確認
大阪大学の研究班は、脳梗塞後に脳へ水分が入り込み、脳浮腫を起こす仕組みをマウスで調べた。細胞の繊毛が失われることが関わり、薬で再生を促すと脳浮腫が軽減したという。ヒトの患者の死後脳組織でも繊毛消失を確認した。
サイエンス- ●大阪大学が脳梗塞後に脳へ水分が入り込む仕組みをマウスで確認
- ●細胞の細い毛が失われ、水分の流入を抑える働きが弱まると示唆
- ●マウスでは薬で細い毛の再生を促すと脳浮腫が軽減
脳梗塞の治療に関心がある人に関わる研究だが、薬の効果が示されたのはマウスである。
脳へ水分が入り込むのを抑える細い毛の維持・再生が、新たな治療法開発の手がかりになる可能性がある。
大阪大学の古宮健至氏、山下俊英教授らが、脳梗塞後の脳浮腫を悪化させる仕組みをマウスで調べた。研究成果は2026年10月20日午前0時(日本時間)に、米国科学誌「Cell Press Blue」のオンライン版で公開された。
脳にたまる水分はどこから来るのか
脳浮腫は、脳組織に水分がたまる状態だ。重症になると命に関わることがある。一方、脳梗塞の直後に水分がどこから入るのかは、十分に分かっていなかった。
研究班は、脳梗塞モデルマウスの脳脊髄液に蛍光物質を入れた。脳脊髄液は脳室などを流れる液体で、その広がりを追うことで流入経路を調べた。
研究班によると、脳梗塞直後には脳室から脳組織への流入が増えた。この増加が、マウスの脳浮腫を引き起こしたという。着目したのは、脳室の壁にある上衣細胞の隙間を通る経路だ。
かんたんに言うと、水の入り口の「門番」
鍵となったのは、上衣細胞にある運動性繊毛という、動く細い毛だ。脳室の壁に沿って脳脊髄液の流れを生むことは、すでに知られていた。
研究班によると、マウスでは脳梗塞発症後30分以内に、この繊毛が消失した。今回の結果は、繊毛が液体を流すだけでなく、脳組織への流入を抑える役割も持つことを示唆するという。
たとえるなら、流れをつくる役と、水の入り口を見張る門番を兼ねているようなものだ。門番が失われると、水が入り込みやすくなる。このたとえが表すのは、研究班がマウスで示した仕組みである。
薬で再生を促すと、マウスでは浮腫が軽減
研究班によると、繊毛の消失には酵素HDAC6の働きも関わっていた。そこで、発症後のマウスにHDAC6阻害剤を投与した。これは、この酵素の働きを抑える薬だ。
投薬したマウスでは、翌日以降に繊毛の再生が促されたという。脳室からの液体の流入と脳浮腫が軽減し、脳梗塞病変と運動機能も改善したとしている。
また、研究班は脳梗塞患者の死後脳組織でも、上衣細胞の繊毛消失を確認した。ただし、今回示された投薬による改善はマウスでの結果だ。患者の組織での確認と、人への治療効果は分けて捉える必要がある。
まとめ
今回の研究は、脳梗塞後に脳へ水分が入り込む経路と、それを抑える繊毛の役割を示したものだ。研究班は、繊毛の維持・再生を促す新たな治療法の開発につながると期待している。ヒトでの治療効果が示された段階ではないが、脳浮腫への対処を考える手がかりになる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月23日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。