大阪大学、宇宙の生命の痕跡を探る新技術 アミノ酸の形を1分子ずつ識別
大阪大学は、アミノ酸のL型・D型を1分子ずつ電流で識別する技術を開発したと発表した。隕石や砂漠の土壌でも分析を実施。形の偏りは生命の痕跡を探る手がかりの候補だが、それだけで生命の存在は断定できない。
- ●大阪大学がアミノ酸の形を1分子ずつ識別する技術を開発
- ●隕石と砂漠の土壌から抽出したアミノ酸も分析
- ●形の偏りは生命探しの手がかり候補だが、存在の断定はできない
宇宙に生命がいるのか気になる人にとって、その痕跡をどう調べるかに関わる研究だ。
精度向上や宇宙環境での検証が進めば、宇宙探査用の分析装置の小型化につながる可能性がある。
大阪大学は、アミノ酸のL型・D型という鏡写しの形を、1分子ずつ電流で識別する技術を開発したと発表した。国際共同研究の成果は2026年10月5日18時(日本時間)、学術誌Nature Communicationsに掲載された。
生命の痕跡を「形の偏り」から探る
アミノ酸は、タンパク質を作る材料となる物質だ。地球上の生命がタンパク質を作る際に使うものは、ほぼL型に偏っている。一方、生命が関与しない化学反応では、一般にL型とD型がほぼ同量できる。
大阪大学によると、この偏りは地球外生命の痕跡を探る指標の候補となる。ただし、偏りがあったからといって、生命の存在を断定できるわけではない。今回の成果は生命を発見したという話ではなく、痕跡を調べるための分析技術だ。
かんたんに言うと、分子の左右を電流で見分ける
L型・D型は、左手と右手のような関係だ。鏡に映すと対応するが、形をそのまま重ね合わせることはできない。分子が持つこの性質を「キラリティ」と呼ぶ。
研究では、2本の金電極の間に約0.5ナノメートルの隙間を作った。ナノメートルは1メートルの10億分の1だ。このような電極間の微小な隙間を「ナノギャップ」と呼ぶ。
アミノ酸1分子が隙間を通る際、微弱な電流の変化を測る。その波形を人工知能(AI)で解析する仕組みだ。たとえるなら、狭い通路を通る分子が残した電気の足跡から、形を見分ける方法である。
大阪大学によると、19種類すべてのキラルアミノ酸、つまり鏡写しの形を持つアミノ酸で、L型・D型を高精度に識別した。極低濃度での検出や、複数のアミノ酸が混ざった試料の成分構成の推定にも成功したとしている。
隕石と砂漠の土壌でも分析
研究では、マーチソン隕石とアタカマ砂漠の土壌から抽出したアミノ酸を分析した。チリ北部のアタカマ砂漠は、乾燥や強い紫外線など、火星表面に似た環境を持つ。
大阪大学によると、実際の試料に含まれる主要なアミノ酸の構成は、従来の分析法と共通の傾向を示した。ただし、成分ごとの量やD型とL型の比率には差もあった。従来法と同じ結果がすべて得られたわけではない。
まとめ
大阪大学は、この技術による宇宙探査用分析装置の小型化・簡素化を期待している。火星や氷で覆われた衛星、小惑星の試料への応用も期待する。
一方、宇宙探査への搭載には、複雑な試料への対応や汚染管理の研究が必要としている。量を測る精度の向上や、宇宙環境での装置検証も課題だ。こうした検証が進めば、生命や生命誕生前の化学反応の痕跡を調べる手段につながる可能性がある。