名古屋大学など、実験のばらつきと病気の特徴を分けるAI「Kanade」を開発
名古屋大学などが、実験のばらつきと疾患などの特徴を分ける機械学習法「Kanade」を開発した。大学によると、糖尿病モデルマウスの実データでも、補正後に糖尿病関連の細胞状態の変化を捉えた。
AI- ●名古屋大学などが機械学習法「Kanade」を開発
- ●大学によると、実験のばらつきだけを除く
- ●マウスの実データでも糖尿病関連の変化を捉えたと報告
病気の研究に関心がある人にとって、データのばらつきと病気の特徴をどう見分けるかに関わる成果だ。
異なる実験や研究施設のデータを比較・統合するための基盤に発展する可能性がある。
名古屋大学などの研究グループが、実験のばらつきと病気の特徴を分ける機械学習法「Kanade」を開発した。研究成果は2026年10月10日、国際学術雑誌『Patterns』に掲載された。
病気の特徴まで消さずに補正する
Kanadeは、データから特徴を学ぶAI(人工知能)を使う手法だ。対象は、細胞ごとに遺伝子の働きを調べたデータである。研究には名古屋大学の坂口峻太特任助教、本田直樹教授らが参加した。筑波大学と広島大学の研究者も加わった。
細胞の解析には、1細胞RNAシーケンシングという技術がある。各細胞の遺伝子の働きを網羅的に測るものだ。ただし、測定装置や試薬、実験者などの違いでもデータはばらつく。この実験条件に由来するばらつきを「バッチ効果」と呼ぶ。
名古屋大学によると、補正の際に疾患や治療による違いまで消してしまうことが課題だ。健常群と疾患群を別々に測る場合、違いの原因を分けにくいという。
かんたんに言うと、雑音だけを取り除く
たとえるなら、聞きたい声と周囲の雑音が混ざった録音から、雑音だけを取り除く作業に近い。音を一律に小さくすると、残したい声まで聞こえにくくなる。データの補正でも、不要なばらつきと残すべき特徴を区別することが重要だ。
名古屋大学によると、Kanadeは実験、疾患や処置、細胞型の違いを分けて学習する。細胞型とは、細胞の種類のことだ。そのうえで、実験由来の情報だけを選んで取り除くとしている。違いをすべて消すのではなく、何に由来する違いかを分ける考え方である。
検証で何が分かったのか
名古屋大学によると、模擬データを使うシミュレーションでは、実験のばらつきを除き、疾患などの特徴を保てた。糖尿病モデルマウスの膵臓の実データでも性能を検証した。大学は、補正後にも糖尿病関連の細胞状態の変化を捉えたとしている。
また、Kanadeは補正後の遺伝子発現量そのものを出力できるという。遺伝子発現量は、遺伝子がどれだけ働いているかを示す量だ。大学によると、細胞を分類したり、特徴を図で見えるようにしたりする解析にも使える。疾患に関連する遺伝子の探索にも利用できるとしている。
まとめ
Kanadeの狙いは、実験条件による違いを取り除き、病気や処置に関わる特徴を残すことだ。今回の報告では、模擬データとマウスの実データで検証している。
名古屋大学は、異なる実験や研究施設のデータを比較・統合する解析基盤への発展を期待している。測定条件が異なるデータを扱う研究を支える可能性がある。