名古屋大学など、尿中の粒子を1粒子ずつ調べ炎症の由来と状態を探る技術を開発
名古屋大学などが、細胞の放出する粒子の表面と内部を同時に調べる新技術を開発した。腎移植患者の尿で、腎臓と炎症に関わる分子を併せ持つ粒子を検出。体への負担が小さい診断や病態評価への応用を目指す研究だ。
サイエンス- ●名古屋大学などが細胞の放出する粒子を1粒子ずつ調べる技術を開発
- ●同じ粒子の表面と内部を調べ、由来組織と細胞の状態を探る
- ●腎移植患者の尿から腎臓と炎症に関わる分子を持つ粒子を検出
腎移植後の状態を調べる検査など、体への負担が小さい診断につながる研究に関心がある人に関わる話だ。
調べる分子の種類を増やすことで、多様な疾患の診断や治療効果の経過観察に応用できる可能性がある。
名古屋大学などの研究グループが、細胞の放出する微小な粒子を1粒子ずつ調べる技術を開発した。大阪大学 産業科学研究所が2026年10月21日に発表し、尿から炎症の由来や状態を探る研究成果を紹介した。
何が発表されたのか
調べる対象は、細胞外小胞(EV)と呼ばれる粒子だ。細胞が放出する脂質膜に包まれたもので、血液や尿に存在する。由来する細胞の特徴や状態を反映する分子を含んでいる。
従来は多数のEVをまとめて調べていた。そのため、疾患に関わる少数のEVの情報が埋もれる課題があった。
研究グループによると、新技術は同じEVの表面タンパク質と、内部のmicroRNAを同時に検出する。microRNAは遺伝子の働きを調節する短い分子で、細胞の状態などによって種類や量が変わる。
共同研究には東京科学大学、大阪大学、北海道大学、神戸薬科大学も参加した。
かんたんに言うと
粒子を荷物にたとえると、表面の情報は差出人の手がかり、内部の情報は送り元の様子を伝える中身に当たる。別々に集めるのではなく、同じ荷物の外側と中身を組み合わせて読む仕組みだ。
研究グループは、表面から由来組織、内部から細胞の状態を探る情報を組み合わせられるとしている。
鍵となるのは、セルロースナノファイバの繊維シートだ。これは木材由来のセルロースパルプを、ナノメートルサイズに細かくした繊維である。
シート上で、脂質膜同士が一体になる「膜融合」を利用する。研究グループによると、EVを壊さずに内部へ検出用の物質を入れられる。
腎移植患者の尿で何を確かめたか
研究グループは、炎症刺激を与えた細胞のEVで、表面や内部の分子構成の変化を確認したという。
さらに、慢性活動性抗体関連型拒絶反応を示す腎移植患者の尿検体に新技術を用いた。これは抗体を介して、移植臓器への障害が続く拒絶反応だ。
その結果、腎臓関連タンパク質と炎症関連microRNAを併せ持つEV集団を検出したとしている。腎臓以外を主な病変とする自己免疫疾患の検体とも比較した。
まとめ
今回の成果は、粒子の由来と細胞の状態を一緒に調べる研究だ。微量の尿で炎症の場所や状態を調べられる可能性を示したと、研究グループは説明している。
今後は調べるタンパク質やmicroRNAを増やし、多様な疾患への応用を期待する。血液や尿を使う、体への負担が小さい診断や治療効果の経過観察につながる可能性がある。
研究成果は2026年10月17日にオンライン公開された。論文はCell Reports Physical Scienceの2026年11月18日号に掲載予定だ。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月21日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。