木の根にすむ1万種超の微生物から「隠れた司令塔」を探す 目立たない内生菌が候補に 京大
京都大学などのグループは、長野県・菅平の森で木の根1,270点の微生物を調べ、群集全体を組み替える「キーストーン種」をデータから絞り込む手法を開発した。候補に浮かんだのは、あまり注目されてこなかった内生菌だ。
サイエンス- ●長野県・菅平の森で、6種の木の根にすむ微生物をDNAで調べた
- ●全体を組み替える「キーストーン種」を、統計で絞り込む手法を開発
- ●地味な「内生菌」が、木と微生物の共生を動かす候補になった
多い菌より、全体を動かす菌を探す。この考え方は、畑の土や私たちのおなかの腸内細菌にも応用できる可能性がある。
次は内生菌の働きを詳しく調べる段階だ。森の成長や再生で、新たな「制御点」が見つかるかもしれない。
ある森の木々の根から、1万種を超える微生物が見つかったと聞いても、正直ぴんとこないだろう。
京都大学の東樹宏和教授らの研究グループは、その中から、群集全体を組み替える「隠れた司令塔」らしき菌をデータで絞り込んだ。候補に浮かんだのは、森の主役としてはあまり注目されてこなかった「内生菌」だ。成果は2026年10月28日、学術誌「Nature Communications」に載った。
森の地下では、木の根と菌が共生している。よく知られるのが菌根菌だ。菌が土からリンや窒素を吸って木に渡し、木は光合成でつくった炭素の化合物を菌に分ける。
グループが探したのは、こうした共生のネットワークを左右するキーストーン種だ。数や見た目の割に、群集全体のつくりや働きに大きな影響を与える種を指す。これまでは食物連鎖の頂点に立つ捕食者や、花粉を運ぶ生き物がよく研究されてきた。
ところが、相手が微生物だと探すのが難しい。広い森で菌を1種ずつ取り除き、全体の変化を試すわけにはいかない。根にすむ微生物の多くは、培養もしにくい。
微生物の顔ぶれを「地形」に描く
舞台は、長野県・菅平の冷温帯林。マツタケと同じ外生菌根菌と共生するアカマツなどと、アーバスキュラー菌根菌とも共生できるイタヤカエデなどが生えている。6種の木の根から採ったサンプル1,270点のDNAを読むと、かびやきのこの仲間の真菌が2,249種類、細菌などが12,479種類見つかった。
グループはまず、根の中の微生物がどんな顔ぶれになりやすいかを、「エネルギー地形解析」という手法で地形のように描いた。よく観測される顔ぶれほど、深い谷になる。次に、菌や細菌ごとに量が変わったとき、谷の数や深さがどれだけ変わるかをスーパーコンピューターで計算した。数の多さや一緒に現れやすさではなく、群集の「組み立てのルール」を変える力で選ぶ点が新しい。
候補は、形の目立たない菌
内生菌は植物の組織の中にすむ真菌をまとめた呼び名だ。菌根菌のように目立つ共生の組織をつくらないため、森全体を左右する存在としては、あまり評価されてこなかった。
意外にも、その内生菌が真菌の地形と強く結びついていた。たとえばOidiodendronという内生菌が増えるにつれ、カエデ類の根では、アーバスキュラー菌根型の状態が外生菌根型の状態へ置き換わる傾向が見られた。中には、細菌の地形にまで大きく影響する内生菌もいる。
日本の1つの森だけの話なのか。グループは中央イタリアから北部ノルウェーまで、ヨーロッパの森のデータでも確かめている。解析した真菌14属のうち6属、細菌13属のうち8属が、アーバスキュラー菌根菌の根への定着率と統計的に有意な関連を示した。遠く離れた森でも、日本の候補は菌根菌との共生と結びついていた。
もっとも、見つかったのは観測データから統計で絞り込んだ「候補」だ。発表の言い方も「可能性が示唆されました」にとどまる。それでもグループは将来、森林の再生や農業生産、環境浄化などで、生態系全体を見据えた管理技術につながると期待する。
筆頭著者の野口幹仁さんは「直径1mmにも満たない植物の根一本の中には、多様な微生物が共存しています」とコメントを寄せた。その細い根の中で、全体を動かす菌はどれか。森や畑で目を向ける微生物の選び方が、これから少しずつ変わっていくのかもしれない。
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代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。