九州大学など、グラフェンの筒状構造を高密度に作製 配線やメモリー動作も確認
九州大学などの研究グループは、グラフェンを筒状に巻いた構造を、高密度に向きをそろえて作製した。引っ張る方向による巻き方の制御に加え、電気配線やメモリーとしての動作、層の間への分子の貯蔵も確認したとしている。
サイエンス- ●九州大学などがグラフェンの筒状構造を高密度にそろえて作製
- ●引っ張る方向によって筒の巻き方も制御したと報告
- ●電気配線やメモリーとしての動作、分子の貯蔵も確認
電気を運ぶ配線や情報を記録するメモリーの材料に関わる研究だ。
巻き方を制御して作る手法が、バッテリーや配線、メモリーへの応用研究につながる可能性がある。
科学技術振興機構(JST)は、グラフェンを筒状に巻いた構造を、高密度に向きをそろえて作製した研究成果を発表した。成果は2026年10月21日(現地時間)付の「Nature Communications」に掲載された。
筒を密に並べ、巻き方も制御
作製したのは、グラフェンナノスクロール(GNS)と呼ばれる筒状の構造だ。研究には九州大学、東京理科大学、大阪大学、産業技術総合研究所、東京工芸大学が参加した。
研究グループによると、材料を引っ張って生じる変形である「ひずみ」を使い、GNSを高密度に作製した。単に数多く作るだけでなく、それぞれの向きもそろえたという。
さらに、ひずみを与える方向によって、GNSの巻き方も制御できたとしている。この巻き方は「カイラリティー」と呼ばれ、材料の性質に影響する。今回の成果は、並べ方と巻き方の両方に関わるものだ。
かんたんに言うと、巻いた紙をそろえる研究
形を思い浮かべるなら、紙をくるりと巻いて筒にし、同じ向きに並べる様子に近い。これは形を理解するためのたとえで、実際に紙を使うわけではない。
似た筒状の構造に、カーボンナノチューブ(CNT)がある。GNSはこれと異なり、端が閉じていない構造だ。
研究グループによると、従来は土台となる基板の上に、GNSを高密度に並べて作る方法がなかった。溶液の中で作る方法には、巻き方が不十分になることや、複数のGNSが絡み合う課題があったという。
配線やメモリーとしての動作を確認
研究グループは、作製したGNSが電気配線やメモリーとして動作することを確認したとしている。メモリーとは、情報を記録するためのものだ。形を作るだけでなく、機能についても調べた成果となる。
また、GNSの層の間に分子を貯蔵できることも確認したという。JSTによると、GNSはCNTより多くの電流を流せる。
ただし、今回報告されたのは構造の作製と機能の確認であり、製品の発売に関する発表ではない。
まとめ
今回の要点は、GNSを密に並べることと、巻き方の制御を両立した点にある。配線やメモリーとしての動作に加え、分子を貯蔵する働きも確認したとしている。
研究グループは、エネルギー変換やバッテリー、配線、メモリー、強化材料への応用を期待している。構造をそろえて作る手法が、こうした用途に向けた材料研究につながる可能性がある。
チェック済み。この記事は監修者によってチェックされました。(2026年10月22日)
代表取締役。工学部出身で、21歳で起業してからシステム会社の経営一筋で8期目。アプリの受託開発から始め、いまはAIを使ったシステムソリューションを手がけています。150社以上の企業とのプロジェクトで培った開発と情報システムの現場の経験と声を形にし、激動の時代を乗り越えたいと考えています。