フグの「うま味センサー」は人より幅広い、大阪大学などが構造を初めて解明
大阪大学などの研究グループは9月30日、うま味を感じるセンサー(受容体)の構造を、トラフグの受容体を使って初めて明らかにしたと発表した。フグの受容体は人のうま味受容体と違い、「右手型」のアミノ酸も感知できるという。
サイエンス- ●うま味を感じるセンサーの構造を、フグを使って初めて解明
- ●フグの受容体は、左手型と右手型の両方のアミノ酸を感知
- ●閉じた形を保つ「掛けがね」のような構造が理由だった
だしやうま味調味料に親しむ人に。何を「おいしい」と感じるかが動物ごとに違う理由の一端が見えてきた。
研究グループは、新しいうま味物質や、水産・畜産のえさの開発につながる基礎の情報になると期待している。
大阪大学蛋白質研究所の山下敦子教授らの研究グループは2026年9月30日、うま味を感じるセンサーの構造を初めて明らかにしたと発表した。手がかりになったのはトラフグだ。明治大学、東京科学大学、理化学研究所などとの共同研究である。
何が分かったのか
私たちは、味覚受容体(食べ物の中の物質を感知するセンサー役のタンパク質)で味を感じている。このうち、うま味を受け持つ受容体は、調べるための試料を作るのが難しく、構造が分かっていなかった。
研究グループは、トラフグが持つ同じ種類の受容体のうち、味の物質をつかまえる部分なら試料を作れることを見つけた。使ったのは大型放射光施設SPring-8だ。放射光という強い光で、物質の細かな形を調べる施設である。ここで、この部分の構造を解き明かした。
フグは「右手型」も感知する
アミノ酸には、左手と右手のように鏡写しの関係にある「左手型」と「右手型」がある。地球の生物のタンパク質は左手型でできている。人のうま味受容体が感知するのは左手型のグルタミン酸だけで、右手型は感知しない。
ところがフグの受容体は、左手型と右手型の両方を感知できた。フグがえさにする甲殻類や貝類には、右手型のアミノ酸も多い。研究グループは、フグにとっては右手型も「うまい味」なのかもしれないとしている。
かんたんに言うと
受容体の味をつかまえる部分は、2枚の葉がすき間をはさんで向き合う形をしている。葉を閉じて虫を捕まえる植物の名前から「ハエトリグサ・モジュール」と呼ばれる。すき間に味の物質が入ると葉が閉じ、それをきっかけに情報が体の中へ伝わると考えられている。
右手型のアミノ酸は、左手型ほどぴったりとはすき間にはまらない。それでもフグの受容体には、2枚の葉をつなぎ止める「掛けがね」のような構造があり、閉じた状態を保てることが分かった。
研究グループは、この掛けがねの強さを変える実験もした。
- 人の受容体の部品と入れ替えて弱めると、人と同じように左手型を選ぶ性質が強まった
- 逆に強めると、左手型と右手型の両方に反応する性質が強まった
どこまで分かったのか
構造が分かったのは、フグの受容体のうち、味の物質をつかまえる部分である。新しいうま味物質や、水産・畜産のえさの開発への応用は、今後の期待として挙げられている段階だ。論文は米国の科学誌PNASに、9月15日にオンラインで掲載された。
まとめ
うま味は、約120年前に日本で見つかった味だ。何を「うまい」と感じるかは動物によって違う。今回の研究は、その違いを生む仕組みの一例を、受容体の形から示した。山下教授は「生命の不思議の一端を垣間見ることができてうれしいです」とコメントしている。